リストラなしの「年輪経営」
リストラなしの「年輪経営」
(2009/02/24)
塚越寛 商品詳細を見る
満足度★★★★
およそ半世紀にわたり、増収増益を続ける
寒天製造メーカー「伊那食品工業株式会社」。
本書では、同社会長の塚越寛さんの経営論が語られます。
そこにあるのは、日本の伝統的経営の良い部分を頑なに守る姿勢。
父親や母親が最優先して考えることは、家族の幸せであるように、
塚越さんが最優先するのは、社員が以前より幸福と感じるようになること。
「人件費はコストではなく、人件費は目的。」
そうすると、当然、利益を上げることが目的ではなくなります。
「利益は健康な体から出るウンチ」
健康な会社なら、利益というウンチは出そうと思わなくても毎日出るもの。
「年輪経営」とは、いい時も悪い時も無理せず低成長を志し、
身の丈にあった、健康で自然体の経営手法。
あくまで、社員の幸せを通じて社会に貢献することが、
経営の本来あるべき姿であると、塚越さんは語ります。
同社は、「良い会社」ではなく、「いい会社」を目指します。
この微妙なニュアンスの違いを大切にするところが、
伊那食品工業の経営なのでしょう。
しかし、こういった経営「姿勢」だけが注目されがちですが、
実は同社は、ブルーオーシャン戦略を採り、自ら市場を創り出すなど、
技術革新に秀でていることにも同時に注目しなくてはなりません。
そうでなくては、165億円もの年間売上で
寒天製造・世界シェアNO.1になることはあり得ないでしょう。
ところで、本書の経営方針を読んだ人の反応は
以下の3つに分かれると考えられます。
1. こんな会社で働きたいと思う人
2. 自分でこんな会社を作りたいと思う人
3. 違和感を覚える人
ちなみに、同社は未上場なので「株を買おうと考える人」の
選択肢はありません。
アルファブロガーの小飼弾さんは、3番の反応だったようです。
私も、本書の中にある堀江貴文さんに対する記述には、
違う意味で多少の違和感がありました。
私が感じたのは、「別に人のことを批判しなくてもいいのに」という意味でしたが。
基本的に田舎者な私の反応は、2番ですね。
私は、坂本光司さんの「日本でいちばん大切にしたい会社」で
伊那食品工業について最初に知りました。
同書では、「いい会社」が多数紹介されているます。
今後、スピンオフ的にこの本で紹介された企業の
経営本が次々と出版されることも予想されますね。この本から何を活かすか?
「凡事継続」するためには、常に革新を心がける
塚越さんは次のように説明します。
「ここで勘違いしてはいけないのは、
継続とは同じことの繰り返しではないということです。
同じことを繰り返していてると、物事は続きません。」
継続というと、漫然と同じことを繰り返すイメージでとらえがちですが、
その陰には、常に革新を志す姿勢が必要ということです。
そこに、継続することの難しさが隠されていたようですね。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
- 関連記事
-
- どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座 (2009/04/30)
- リストラなしの「年輪経営」 (2009/04/14)
- レバレッジ・マネジメント (2009/03/02)