サブリミナル・インパクト

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)
(2008/12)
下條 信輔 商品詳細を見る
満足度★★★
kennさんのブログ「serendipity」で紹介されていた本です。
CMや広告のメディアは、私たちの潜在意識に働きかけ、
選択や意思決定にどの程度、影響を及ぼしているのか?
本書は、現代社会特有の現象が、無意識の認知メカニズムへ
与える影響を著者・下條信輔さんの研究をもとに解明しています。
キーワードは、「情動」と「潜在認知」。
下条さんは、日米で心理学や認知科学、神経科学の研究を行い
「サブリミナル・マインド」の著者としても知られます。
本書では、いわゆる「サブリミナル効果」についても
触れられていますが、それが主眼ではありません。
もっと広く、エンタテイメントやCM・広告、政治が、
マスメディアを通じて、実際に大衆誘導や世論操作に
どの程度の影響を及ぼすかを学術的に検証しています。
もちろん一般向けの書籍ですから、「意識に反して体が裏切る例」や
「ポケモン事件」、「リメイクやリバイバルが確実にヒットする理由」など、
身近な例も多く取り上げられています。
また後半では、創造性と暗黙知の関係を考察するなど、
興味深い先鋭的な内容もテーマになっていました。
全体的には新書でありながら、なかなかハードな内容で、
同じ潜在意識をテーマにする本でも、苫米地英人さんの著書とは
全く別世界の本を読んでいる印象でした。
はっきり言って、本書を読んだからといって、
読者の行動指針を変えることにはならないでしょう。
また、刺激的な内容であるものの、私自身、本書の内容が
どの程度理解できたかも疑問が残ります。
しかし、私の意識レベルでは理解できていな部分があっても、
本書を読むことが潜在意識のレベルに影響を与え、
自分では気がついていない部分で、自分の行動に影響を与え
なんらかの効果があったと、納得できる内容でした。

DVDなどの早送り再生で感動は伝わるか?
この点について、下條さんは、ストーリー展開を表面的に追うような
認知的なことはできても、真に情動に訴えかけるような
「感動」は伝わらないのではないかという見解を示しています。
それでは、本の速読で感動は伝わるのか?
この点について本書では考察されていませんし、
私自身も速読はできないので、予測の域を出ませんが、
一定の速度を超えると、やはり認知はできても感動は少ないのでは
ないでしょうか。
そう考えるのは、速読ができない私の妬みかもしれません。
実際は本の種類によって読み方を変えたり、同じ本でも箇所によって
スピードをコントロールすることで解決しているのでしょうね。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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