市場の変相
市場の変相
(2009/02/17)
モハメド・エラリアン 商品詳細を見る
満足度★★★★
原題は「When Markets Collide(市場が衝突する時)」。
いったい何と、何が衝突するのか?
それは、大転換によって変わった過去と未来。
つまり、今までの経験則が活かせた「昨日の市場」と、
それが活かせなくなり、新しい戦略が必要となった「明日の市場」。
本来、連続的に一直線上に並ぶべき、この2つの「市場」が
衝突し、大きな摩擦を引き起こしているというのが、
著者モハメド・エラリアンさんのキーメッセージです。
本書は、世界経済が向かう「新たな行き先」を示し、
そこに至る道中で、投資家が如何に行動すべきかを
水先案内する目的で書かれています。
350ページを超える、非常に読みごたえのある一冊でした。
本書が執筆されたのは、2007年12月。
サブプライムローンの問題は顕在化していたものの、
現在の「100年に一度の金融危機」としての認識が、
マーケット広がるかなり前の時期です。
その時点での予測としては、鋭い洞察が随所にあり、
目を見張るものがあります。
エラリアンさんの予測と、その後の経済動向を検証すると、
ズレが生じている部分もあります。
また、本書で示される行動指針は、正直に言って投資家にとって
分かりやすい具体的な方法論が示されているわけではありません。
しかし、これらの点は本書において、あまり重要ではありません。
なぜなら、私たちが参考にするべき点は、エラリアンさんが予測した
「結果」ではなく、その洞察に至る「過程」だからです。
「conundrum(コナンドラム:謎)」
これは、アラン・グリーンスパンさんが2005年のFRB議長当時、
FF金利を上げ続けているにも関わらず、長期金利が低下している
状態について使って有名となった言葉です。
私達一般の投資家からすると、現在のマーケットこそ
右を見ても左を見てもコナンドラムだらけという感じがします。
こういった一寸先が闇の時代こそ、エラリアンさんの叡智に学び、
自らの頭を使って「新たな行き先」を読み解く必要があるのでしょう。
<本書に登場する参考資料>
・ヤバい経済学(書籍)
・まぐれ(書籍)
・ウォール街(映画)
・大逆転(映画)この本から何を活かすか?
「“市場の勘”をリバースエンジニアリングする」
エラリアンさんは、ソロモン・スミス・バーニー時代の同僚だった
優秀なトレーダーの行動をリバースエンジニアリングすることで、
彼と同様の結果を生み出すための、重要な6つのステップを導き出しました。
その中の一つに、次のステップがあります。
「どんなノイズも重要なシグナルを含んでいる可能性があるという
心がけを徹底する。」
ノイズに対する対処は、取りつかれて気にし過ぎてもいけないし、
完全に無視してもいけません。
バランスが非常に難しいところですが、この心がけは徹底したいところです。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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