教育格差 ──階層・地域・学歴
2021年03月25日
教育格差 ──階層・地域・学歴 (ちくま新書)
満足度★★★★
付箋数:24
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松岡 亮二 筑摩書房 2019年07月04日頃
「人には無限の可能性がある。
私はそう信じているし、1人ひとりが
限りある時間の中で、どんな
“生まれ” であってもあらゆる
選択肢を現実的に検討できる機会が
あればよいと思う。
なぜ、そのように考えるのか。
それは、この社会に、出身家庭と
地域という本人にはどうしようも
ない初期条件(生まれ)によって
教育機会の格差があるからだ。
この機会の多寡は最終学歴に
繋がり、それは収入・職業・健康
など様々な格差の基盤となる。
つまり、20代前半でほぼ確定する
学歴で、その後の人生が大きく
制約される現実が日本にはあるのだ。」
親の収入が子どもの学歴に影響し、
それが生涯収入など生活の質にも
関わっているのは周知の事実です。
こういう話をすると例外を考える
方がいますが、あくまで統計的に
相関があるかどうかの話。
当然、貧しい家庭の出身でも、
高学歴で成功した人はいますが、
あくまで「一般的な傾向がある」
という話です。
本書は、その教育格差問題を
これでもかというぐらい掘り下げ、
日本の教育格差社会の現実を
明らかにする本です。
著者は、早稲田大学准教授の
松岡亮二さん。
教育分野の研究でいくつかの賞を
受賞している気鋭の研究者です。
「過大評価も過小評価もせずに
現時点でわかっている教育格差の
全体像を1人でも多くのみなさんと
共有することで、既視感だらけの
教育議論を次の段階に引き上げる
ことができればと本書を執筆
することにした。」
しっかりしたエビデンスに基づいた、
事実を述べているので、ほとんど
反論の余地はありません。
日本は「緩やかな身分社会」に
なっていて、戦後から現在まで、
それが解消する兆しは見られない。
本書は、3択クイズから始まります。
【質問1】親の学歴により、
習い事や教育サービスなどの
利用格差が顕著になるのは・・・
小学校就学前
小学校低学年
小学校中学年
【質問2】公立の小学校同士の間で
学力格差が確認できるのは・・・
1年生から
4年生から
6年生から
このように日本の教育の現状の
事前知識を問う3択が7問出されます。
「(3択なので7問中)2つや3つ
の正解でも、チンパンジーが
ウキッと何も考えずに選んだのと
ほとんど変わりません。」
ちょっと辛辣な言葉を添えつつ、
詳しいクイズの説明は、本文の中で
行われています。
そして歴然とした教育格差の現実
を示し、最終的に、わたしたちに
何ができるか、具体策を2つ提案
しています。
<提案1>分析可能なデータを収集する
<提案2>教職課程で「教育格差」を
必修に!
個人的に面白いと思ったのは2つ目。
教師自身も教育格差の影響を受けて
いるので、悪気なくそれを再生産して
しまうようです。
だからこそ、現実を理解し、
その影響を抑えるため、教育格差を
必修科目とすべきとの提案です。
あまりお金をかけずに改善可能な
施策として挙げられていました。

本書の調査で「生まれ」の出身階層
を定義しているのは、「父親」が
「大卒」かどうかを見ています。
また「出身地域」によって差がある
かどうかは、「15歳時で三大都市圏
に居住していたかどうか」で定義
しています。
すべて、条件を明示してデータを
開示しているので、本書の主張は
かなり信頼できると思いました。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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