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ikadoku

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生物多様性を問いなおす ――世界・自然・未来との共生とSDGs

2021年02月25日
科学・生活 0

生物多様性を問いなおす ――世界・自然・未来との共生とSDGs (ちくま新書)

満足度★★★
付箋数:22

「あなたは、蚊は好きですか?」
と聞かれて、「好き」と答える人は、
まずいないでしょう。

最近のアウトドアブームでも、
とにかく蚊は嫌われ者です。

蚊に刺されるからキャンプには
行かないという人もいるでしょう。

日本で嫌われている蚊は、
発展途上国では、更に「恐れ」
られています。

なぜなら蚊は、赤痢、マラリア、
デング熱など伝染性疾患の媒介者
となっているから。

これらの伝染性疾患で亡くなる命は、
年間で100万人にも達し、地球上
最悪の衛生害虫となっています。

では、人類に危険を及ぼす蚊は、
人間の都合で完全に駆除して
しまっていいのでしょうか?

実は、蚊の唾液に含まれる
血液凝固を阻止する物質からは、
脳卒中や脳梗塞のための抗血栓薬
などが開発されています。

また、蚊の幼虫のボウフラは
ヤゴや稚魚の餌になり、成虫は
トンボ、鳥、ヤモリ、蛙などの
餌になって生態系を支えています。

絶滅危惧種の保全の必要性に
ついては、米国の生物学者の
ポール・R・エーリックさんらが
4つの理由に分類しています。

第1は、「自然なあわれみ」であり、
他の生物の生存権を認めること。

第2は、美学的なもので、野生種の
美しさや象徴的価値、固有の重要性
を認めようとするもの。

第3は、経済的な直接的利益や
生物資源としての価値。

第4は、人類の生存に不可欠なもの
を提供する間接的な価値です。

蚊に関しては、第1と第2の理由は
主観的な判断になってしまいますが、
第3、第4の理由は認められます。

 「害虫と益虫(害獣や雑草と
 そうでないもの)との線引きほど、
 曖昧でいいかげんなものはない。
 この線引きは、人間の一方的な
 価値判断であり、それも現時点
 のものだ。したがって、科学技術
 の進展、生活様式の変化、
 さらには倫理観の変化などに
 よって、いつ反転してしまうかも
 わからない。」

コロンブスが米大陸に到達した
1492年からちょうど500年後の
1992年に「生物多様性条約」が
成立しました。

それ以降、生物多様性の概念は
世界中に広がり、最近ではSDGsと
併せて考えられるようになりました。

本書は、生物多様性について、
改めて問い直した本です。

生物多様性を、「生物資源」と、
人類の「生存基盤」という2つの
価値に加え、その両方を統合した
「地球公共財」と位置づけて
考察していきます。

著者は国際環境政策論、保護地域
政策論を専門とする高橋進さん。

生物多様性条約第1回締約国会議
などにも政府代表として参加した
方です。

 「本書は、生物多様性や自然資源
 を軸として、これらをめぐる
 大航海時代以来の帝国と植民地、
 後の先進国・グローバル企業と
 途上国など国同士の関係、
 自然保護地域をめぐる先住民など
 地域社会との関係、あらゆる
 生きものなど自然との関係、
 さらに将来世代へ現代をどのように
 繋ぐかという未来との関係、
 などの課題について探求した
 ものである。」

普段の生活の1段上の視点から、
「共生」について考えさせられる
本でした。

この本から何を活かすか?

冒頭で蚊の例を紹介しましたが、
同じく嫌われている「ハエ」も
実は生態系を支え、人間の役に
立っています。

特にハエの幼虫のウジは、
化膿して壊死した傷口部分を食べて
新たな肉芽を促すため、傷の回復を
早めるようです。

かのチンギス・ハーンもその効果を
知って、戦場に大量のウジを馬車で
運んでいたそうです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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