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ikadoku

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科学者が消える: ノーベル賞が取れなくなる日本

2019年10月30日
科学・生活 0

科学者が消える: ノーベル賞が取れなくなる日本

満足度★★★
付箋数:22

日本人初のノーベル賞受賞者は、
1949年に受賞した湯川秀樹さんでした。

以来、2019年までに日本人のノーベル賞
累計受賞者は27人に上ります。

国別の受賞者数では、日本は世界で6位。

特に2000年以降、自然科学部門での
受賞が増え、日本はノーベル賞大国の
1つになっています。

最近では、ほぼ毎年受賞者が出ている
ので、日本の科学技術の将来は明るいと
感じている方も多いでしょう。

しかし、2016年に生理学・医学賞を
受賞した大隅良典は訴えました。

  「このままでは、日本からノーベル賞
  学者が出なくなると思っている。
  (日本人の連続受賞は)過去の遺産
  という面もある。」

この大隅さんの警鐘を聞いた、
本書の著者、ノンフィクションライター
の岩本宣明さんは、次のように思いました。

  「なんぼなんでも、京大や東大で
  そんなことはないやろ。
  ノーベル賞を受賞するような人は
  理想が高すぎるんとちゃうか―。」

本書は、このような疑問を感じた、
岩本さんによる調査レポートです。

  「本書の結論を先に言ってしまいます。
  本当に酷い。無茶苦茶です。
  このままでは、ノーベル賞はおろか、
  日本から科学者自体がいなくなって
  しまいそうです。嘘だと思われたら、
  是非、最後までお付き合いください。」

まず、岩本さんが指摘するのは、
ノーベル賞の受賞対象の功績の大半は
受賞者の若手時代の研究である点です。

受賞時点ではそれなりの年齢なので、
長年の苦労の末の受賞というイメージ
があります。

しかし、実際は30代での研究成果を
評価されての受賞が最も多いのです。

次に指摘するのは、日本の博士の卵が
減っていることです。

理工系博士課程入学者は、ピーク時の
3分の2にまで減少しています。

それは、博士課程を終了しても
9割以上が安定した研究職就けない
現実が影響しています。

更に、日本の科学技術の基礎的な力
については、「論文」に注目します。

まずは、論文数が減っていること。

全世界の自然科学系論文数の推移を
見ると、主要国の中では日本の論文数
だけが減っています。

日本の人口あたりの論文生産性では、
世界37位でしかありません。

また、論文の質の目安となる、
他の論文に引用される頻度でも、
近年は相対的に減ってきていることが
データでわかります。

こういった日本の研究力低下は、
研究資金に問題があります。

科学技術白書のデータを紐解くと、
日本の研究者1人当りの研究費は、
過去35年間まったく増えていない
事実が浮かび上がってきます。

特に懸念されるのは基礎研究費への
割当が低いことです。

短期で役立つ研究に予算が集中的に
割当られているので、基礎研究が
疎かになっているのです。

本書では、あまり目を向けたくない
現実が明らかにされていきます。

しかし、日本が科学技術立国を
標榜するなら、現状のままに
してはおけない問題なのです。

 第1章 憧れだったノーベル賞
 第2章 研究者がいなくなる
   -空洞化する大学院博士課程
 第3章 衰弱している日本の研究力
   -主要国で最低レベルに凋落
 第4章 忙しくて研究できない
   -「選択と集中」の弊害
 第5章 ノーベル賞が消える
   -研究者が共有する危機感
 第6章 大学解体のとき

この本から何を活かすか?

では、日本はどうすべきなのか?

岩本さんは、次の提言で本書の最後を
締めくくっています。

  「教育と研究の二兎を追う大学は、
  すでに耐用年数が切れています。
  大学進学率が60%に迫る状況の中で、
  もはや教育と研究の両立は無理です。
  それが、日本の研究力が衰退して
  きている構造的な問題だと、
  私は思います。
  分離して再出発するしかありません。」

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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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