裏・読書
裏・読書 (ハフポストブックス)
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手塚 マキ ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019年04月
満足度★★★
付箋数:23
「40歳を目前に控えたとある日の午後、
夏目漱石の『こころ
何だ、この、男のマウンティング物語は?
いまの男性社会の悪いところが
詰まっているじゃないか・・・。
これを中高生に読ませて、何を学んで
貰おうと思うのだろうか。
ふとページを閉じてかみしめたくなる
ような美しい言葉使いの文章なのに、
登場人物の自分よがりの葛藤。
こんなものをいつまでも国語の教科書に
載せているから、日本の男はウジウジ
狭いところで小競り合いを続けている
のではないだろうか?」
本書は、歌舞伎町でカリスマホスト
として活躍し、現在はホストクラブやBAR、
飲食店、美容室など10数件の経営者として
知られる手塚マキさんの書評本です。
紹介されているのは、次の13作品。
・夏目漱石さん『こころ
・村上春樹さん『ノルウェイの森
・又吉直樹さん『火花
・吉野源三郎さん、羽賀翔一さん
『漫画 君たちはどう生きるか
・俵万智さん『サラダ記念日
・乙武洋匡さん『五体不満足
・山田詠美さん『ぼくは勉強ができない
・平野啓一郎さん『マチネの終わりに
・東野圭吾さん『容疑者Xの献身
・林真理子さん『野心のすすめ
・川端康成さん『眠れる美女
・太宰治さん『走れメロス
・西原理恵子さん『ぼくんち
よく知られた13作品ですが、
手塚さんの評価は、世間一般で認知されて
いるものと大きく異なります。
それは、ホストを育てる経営者の視点で
これらの作品を読んでいるから。
例えば、『ノルウェイの森
このように評しています。
「村上春樹さんの『ノルウェイの森
すべてのホストが読むべき、バイブル
のような本です。主人公のワタナベの
ような男性でなければ、歌舞伎町で
ホストとして生き残ることはできません。
部下のホストたちにも “読んで研究しろ”
といって手渡しています。」
手塚さんの、これまでの評判と一線を画す
書評を読むと、読書本来の面白さを改めて
発見することができます。
それは、本との自由な付き合い方。
この作品は、こう読まなければならない
といった思い込みを一切排して、
思うまま、感じたままに読めばいい。
もちろん、途中でイヤになったら、
投げ出しても構いません。
「読まなければならない本なんてない。
読むべき本なんてない。
読書って自分の心に一滴水を垂らす
ぐらいの感覚でいいと思うんだ。」
特に最近は、本を購入するときに
Amazonなどのレビューを参考にする
ことが多いと思います。
すると、意識していなくても、
既にあるレビューに影響されて、
その作品を捉えてしまうことも
あるでしょう。
本書では、そういった先入観を
なくして読むことで、自分独自の見方が
できることを思い出させてくれます。
また、読書という行為自体にも、
手塚さんは独自の見解を持っています。
「若い時に沢山本を読めといいますが、
僕は大人になってから読書すれば良い
と思っています。(中略)
読書は人生の答え合わせでいいと
思っている。」
手塚さんも、決して奇をてらった
わけではないと思いますが、
本書を読むと、これまでにない視点、
新しい価値観を知ることができます。
個人的には、途中途中で垣間見られる
ホストの世界についても、興味深く
読むことができました。

私が本書で紹介されている13作品で、
未読かつ、最も読みたくなったのは、
西原理恵子さんの『ぼくんち
「痛々しく優しい人たちが許しあう
ための、これからの “聖書” 。」
観月ありささん主演で映画化もされて
いる漫画ですが、スルーしていました。
読んでみようと思います。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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