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ikadoku

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生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む

2019年07月19日
科学・生活 0

生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む

満足度★★★★
付箋数:26

現在、地上に生存している多様な生物は、
過去の自然環境の変化に対応して、
進化を重ねながら子孫を残してきました。

変化に対応できなかった種は淘汰され、
対応できた種だけが生き残った。

生物は不変なものではなく、長い期間を
かけて次第に変化し、自然淘汰されていく。

これが、チャールズ・ダーウィンさんの
進化論です。

それでは、私たち人類が現在の姿に
なるまで、進化を重ねられたのは、
偶然の産物だったのでしょうか?

それとも、生息環境に適応する方法は
限られているので、人類への進化は
必然のものだったのでしょうか?

前者の考えは、生命のテープを巻き戻し、
リプレイすると、違う歴史が展開し、
人類が現れなかったとするものです。

後者は、ほぼ似たような歴史を展開し、
人類は必然に導かれて生まれたとする
考えです。

この2つの考えは、科学界屈指の大論争
として知られていました。

論争になかなか決着がつかなかったのは、
どちらか正しいか知りたくても、
自然淘汰は非常にゆっくり進むので、
簡単には確認できないと認識されて
いたからです。

しかし、実はこの認識は間違えだった
ことが判明します。

つまり、進化はときに急速に起こるのです。

だったら、実験してみよう。

それが、現在、進化生物学の最先端で
行われていることです。

進化実験で解決するというブレイクスルー
によって、生物学は新しいフェーズに
入りました。

進化は予測可能なかたちで起こりうる
のです。

本書は、壮大な進化実験をミステリー調で
綴ったノンフィクションです。

著者は生物学者のジョナサン・ロソスさん。

ハーバード大学の教授を経て、現在は
セントルイス・ワシントン大学の教授を
務めている方です。

カリブ海のアノールトカゲの研究で、
進化生物学の分野では知られている
研究者です。

ロソスさんは、世界各地を訪れ、
地球の生命史における最大のミステリーを、
進化実験で解決しようと奮闘する研究者
たちに出会います。

そして自身も、この分野のリーダーとして
実験を重ねます。

本書でレポートされる進化実験は、
現在も進行中で、成果を生み出し続けて
います。

今後は、生態系の保護、食料供給の安定、
有害なウイルスや細菌との闘いなどに、
広く応用されることが期待されています。

そんな実績もさることながら、本書は
上質なポピュラーサイエンスであり、
読み物としても非常に面白い本です。

進化生物学のエキサイティングな様子を
臨場感たっぷりに伝えます。

それは文章を書くテクニックというより、
ロソスさんの進化生物学に対する情熱
の表れだと言えます。

本書の挿絵は、イラストレーターの
マーリン・ピーターソンさんが担当。

多数描かれたイラストは非常に緻密で、
進化に対する創造力を掻き立てるのに、
大きく貢献しています。

進化をめぐるドラマに、思わず引き込まれて
しまうほどの、刺激的な本です。

本書は、最近の科学系の本の中では、
最もオススメしたい一冊です。

この本から何を活かすか?

収斂進化とは、全く系統の違う動物が、
似たような体形をもつようになること。

魚類のサメと哺乳類のイルカなどが、
よく知られた例です。

  「オーストラリアの有袋類と、他地域の
  胎盤のあるドッペルゲンガーとの対比
  は教科書ではおなじみだ。
  モグラ、モモンガ、ウッドチャック・・・。
  なかにはあまりに瓜二つで、
  有袋類のほうが北米に姿を現しても、
  何の違和感もなさそうなものもいる。」

果たして、これらの収斂進化は、
進化が予測可能であることを示している
ことになるのか?

こういった点も本書の読みどころです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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