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読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち――世界初のパーソナルゲノム医療はこうして実現した

満足度★★★★
付箋数:25

  「病気の息子を助けようと、母親が
  死に物狂いで闘う。医師はその子の命を
  つなごうと、医療の限界に挑む。
  科学者は治療法を求めて、おぼつかない
  足取りながらも新たな時代へと一歩を
  踏み出す。彼らをそこまで駆りたてる
  ものは何か。」

本書は、世界初のパーソナルゲノム医療が
実現するまでを追ったドキュメンタリー。

著者は米ミルウォーキー・ジャーナル・
センティネル紙のジャーナリストとして
活躍する、マーク・ジョンソンさんと、
キャスリーン・ギャラガーさんのお2人。

パーソナルゲノム医療とは、 個々人の
DNA配列を解析し、自分の遺伝子の特徴を知り、
オーダーメイドで治療や予防を行う医療。

標準化された画一的な医療とは異なる、
遺伝子レベルで個人のち外に合わせた、
最先端のゲノム医療です。

2004年、ウィスコンシン州のある平凡な
夫婦の間に、息子が生まれました。

名前はニック・ヴォルカーくん。

彼は2歳の頃から、謎の病気かかりました。

それは、食事をするたびに腸に複数の
小さな穴が開き、その穴が腹部の皮膚を
貫通して便が漏れるという奇病です。

「10億人にひとり」と言われるほどの
特殊な病気で、このままでは命が危ないと
思われました。

医師たちは、可能な限りの検査を行い、
あらゆる可能性を検討し、全力で治療に
当たりました。

しかし、原因はまったくわからず、
この奇妙な病気を治すことは
できませんでした。

そして万策尽きて、最後に踏み切ったのが、
ニックくんの血液を採取して行う、
全ゲノム解析による治療でした。

ニックくんが奇病を患っていた当時、
パーソナルゲノム医療は、人類にとって
未知の領域でした。

臨床の場では、世界に例のない方法。

このゲノム治療がどうして難しいかと言うと、
原因不明の病気では、調べるべき遺伝子も
特定できないからです。

そのため膨大な全遺伝子情報を解析して、
病気の原因となる遺伝子変異を絞り込む
ことから始めなくてはならないのです。

ゲノム解析には、特定の遺伝子を調べる
パネルシークエンスという方法と、
全遺伝子情報を調べる全ゲノムシーケンス
という2つの方法があります。

ニックくんの治療に必要なのは後者でした。

2009年のウィスコンシン小児病院医療で
行われた採血は、パーソナルゲノム医療の
大きな一歩となりました。

しかし、この新しい治療には倫理問題の壁
も立ちはだかることになります。

科学者たちは、あらゆる障害を乗り越え、
約32億個の塩基対のうち、たった1つに
エラーが起こっていることを突き止めました。

それはブリタニカ百科事典に、1文字だけ
ある誤植を発見することよりも小さな
エラーでした。

本書は、ニックくんとその家族、医師と
科学者たちが、歴史的偉業を成し遂げる
過程を詳細に綴ります。

著者のお2人は丹念に取材を重ねて、
この「奇跡」が起こる瞬間までの過程を
圧倒的な臨場感でレポートしています。

さすがにピューリッツァー賞解説報道部門の
受賞記事を書籍化しただけのことはあります。

間違いなく読んで損のない、非常に優れた
ノンフィクションでした。

年末年始など時間に余裕のある時に、
読んで欲しい一冊としてオススメします。

この本から何を活かすか?

ニックくんの奇病は、パーソナルゲノム医療
によって治りました。

しかし、それだけでは安心できない事情も
あるようです。

  「遺伝子の文字から学べることには
  限界がある。それに、ニックについては
  何年もたたないと答えの出ない疑問もある。
  骨髄移植や臍帯血移植を受け、それに付随
  して化学療法薬を大量に投与された子供は、
  ホルモンや生殖機能に支障をきたしやすい。
  また、もっと成長してからガンになる
  リスクも普通より大きい。ニックにはその
  どれが訪れてもおかしくはないのだ。」

読後は、ニックくんとその家族にも
情が移っているので、今後の彼の健康を
祈るばかりです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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| 科学・生活 | 06:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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