活かす読書
ikadoku

ビジネス書・ベストセラー本・科学本を中心に13年以上、ひたすら本を紹介し続けるブログ。既に紹介した本は3700冊以上。

場を支配する「悪の論理」技法

2018年10月22日
問題解決・ロジカルシンキング・思考法 0
満足度★★★★
付箋数:25

フォレスト出版の三上さんから献本いただきました。
ありがとうございます。

あなたは、「大卒」だと仮定します。

しかし、ネット上であなたのことを
「中卒だ」と批判する人がいました。

その相手は、自分の主張が正しいことを
証明するために、あなたに次のような言葉を
投げかけてきました。

  「もし大卒ならば、卒業証明書をWeb上に
  アップできる。アップできないってことは、
  やはりあなたは大卒ではないな。」

さて、この主張のどこがおかしいのか?

ここで使われているのは、次の関係です。

「もしPならばQである」という命題が真で
あるとき、その対偶である「もしQでなければ
Pでない」も、真となる推論です。

これは論理学で習う「逆・裏・対偶」の中の
命題と対偶の真偽が一致する関係。

さて、先程の主張は、このように分解できます。

 命題A「もし大卒(P)ならば、卒業証明書を
  Web上にアップ(Q)できる」

 命題Aの対偶「卒業証明書をアップ(Q)
  できないってことは、やはりあなたは大卒
  (P)ではない」

しかし、どう考えてもこれは難クセを
つけている意外のナニモノでもありません。

あなたは、相手の主張のどこがおかしいか、
正しく指摘できますか?

実は、相手の主張の命題A自体に誤りがあります。

たとえば、次の命題Bなら正しい。

 命題B「もし大卒で、卒業証明書を保有
  していて、かつWeb上にアップする気力と
  能力があれば、卒業証明書をWeb上にアップ
  できる」

命題が正しければ、その対偶となる命題も
また正しくなります。

しかし、卒業証明書が手元にあったからと
いって、わざわざ相手のためにWeb上に
アップしようと思わない人にとっては
最初の命題Aは成立しないのです。

では、難クセをつけてくる相手に対して、
どのように対抗したらいいのか?

それは、相手と同じ論理を使って、
言い返せばいいのです。

  「もし君が働いているなら、職場の住所を
  Web上で言える。ところが君は職場の住所を
  Web上で言えない。つまり君は無職という
  ことになる。どこが誤りかわかるかい?」

さて、本書は哲学や論理学の知識及び読解力
を高め、社会で通用する一流の思考法を
身につけるための本です。

著者は、『科学する麻雀 』がベストセラーに
なっている、とつげき東北さんです。

  「世の中には悪の論理が数多く流通して
  いて、多くの人は無自覚に使っている。
  そしてまた、多くの人が盲目的に騙されて
  いる。世間でのやり取りの大部分は、
  新聞記事やテレビニュースと同程度に
  いい加減で、表面的で嘘くさい悪の論理
  のやり取りでスルーされていて、
  本質的な正しい論理とはかけ離れて
  しまっている。
  このことに自覚的となり、他人から
  押し付けられる悪の論理を喝破することで、
  おかしな意見から身を守ることができる。」

本書で言う、「悪の論理」とは、
理屈では間違っているのに、一見正しいと
される論理のことです。

本書は、正しい論理学を教養として知る
ための本ではなく、実際に正しく使えるように
なるための本です。

そのため、日常でよく耳にする例を使って
解説されています。

これが使えるようなると、悪の理論から
身を守るだけでなく、自分が悪の論理を
使いこなして他人を操り、圧倒的に有利な
立場に立つこともできるようです。

更に本書の最後では、根源的な問題を扱い、
思考・哲学で議論し「思考で遊ぶ」レベル
まで読者を導きます。

いつも議論で言い負かされていたり、
釈然としないけれど言い返せないことが
多い人は、是非、読んだ方がいい本です。

この本から何を活かすか?

マイケル・サンデル教授の「白熱教室」で
有名になった「トロッコ問題」。

この問題も、本書を読むと次のように
解釈できるようになります。

これは「善悪」の問題に過ぎないから、
「本当に正しい答え」があるわけがない。

よって、なるべく自らが得になるように
行動すればいい。

しかし、そのためには前提が足りな過ぎて、
問いとしての意味をなしていない。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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ikadoku
この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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