劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか
2018年10月19日
付箋数:26
・日大アメフト部監督による暴行指示と
事件発覚後の雲隠れ
・神戸市や横浜市の教育委員会等による
いじめ調査結果の隠蔽
・財務省による森友・加計問題に関する
情報の改竄・隠蔽
・日本ボクシング連盟会長による助成金の
不正流用や暴力団との交際
ここ1年くらいの間で起こった不祥事は、
いずれも「いい年をしたオッサン」が
起こしたものです。
「最近の若いもんはどうなっているのか」
とは、昔からよく聞くフレーズ。
しかし、本書の著者、山口周さんは、
ちょっと違うフレーズで嘆いています。
「最近の古いもんは、いったいどうなって
いるのか」
世の中では、オッサンの劣化が進んでいます。
本書は、そんな社会構造を考察して、
処方箋を施す本です。
ところで、あなたは「オッサン」ですか?
私は、年代も性別も、どストライク。
ですが、本書では年代や性別といった
人口動態的な要素で「オッサン」であるか
否かを判断しません。
ある行動様式・思考様式を持った人を
「オッサン」と定義しています。
その定義とは、以下の通りです。
1 : 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を
拒否する
2 : 過去の成功体験に執着し、既得権益を
手放さない
3 : 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、
目下の者を軽く見る
4 : よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
先に挙げた不祥事を起こした人たちが、
まさにこの行動様式・思考様式に
当てはまっていることがよくわかります。
山口さんは、組織や社会で劣化が起こるのは、
構造的に「必然」と指摘します。
それは世代交代を繰り返すごとに、
エントロピー増大の影響を受けて、
三流の平均値に収斂するから。
この考えは「悪貨は良貨を駆逐する」
として知られる、「グレシャムの法則」に
似ている印象をうけました。
そして、山口さんは「オッサンは尊重すべき」
という幻想を捨てよと言います。
以前は、長く生きている人々の
経験や知識が生かされる社会だったため、
オッサンは尊重される存在でした。
しかし、以前に比べると、変化のスピードが
はるかに早い時代になりました。
そんな現代においては、昔の経験や知識の
価値は下がり、それだけに頼っていると、
逆に判断を誤る可能性が高くなりました。
そこで本書では、若い世代はオッサンに
対抗するように、そして40代、50代の人には
オッサン化しないようにアドバイスします。
・オピニオン、エグジット、モビリティを持つ
・サーバントリーダーシップ
・経験の「質」を重視して学び続ける
・挑戦と失敗を恐れない
そして、本書では最初と最後で、
サミュエル・ウルマンさんの「青春(Youth)」
の詩を引用しています。
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく、
心のありさまを言う。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、
怯えをしりぞける勇気、安易を振り捨てる
冒険心、これを青春と言う。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失う時に初めて人は老いる。」
私は、もともと山口さんの書く本は好きですが、
本書の考察も興味深く、非常に高い納得感が
ありました。
本書は、オッサンに対抗しなければならない
若い世代にも、年齢的にオッサンになりそうな
世代にも、是非、読んで欲しい本です。

山口さんは、今後、柔軟で強かなキャリアを
歩んでいくための重要なキーワードとして
「モビリティ」を挙げています。
モビリティとは、汎用性の高いスキルや
知識などの「人的資本」と、信用や評判
といった「社会資本」を足したもの。
つまり、モビリティが高い人は、所属する
組織によって価値が変わらないので、
どこに行ってもやっていけます。
社外でも通用する能力をつけていると、
その会社に縛られる必要がなくなるのです。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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