声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか
付箋数:23
あなたは、自分の声が好きですか?
本書の著者、音楽・音声ジャーナリストの
山﨑広子さんが独自に行った調査では、
約80%の人が「自分の声が嫌い」
と回答したそうです。
更に、自分の声を録音して聞いたことがある人
に絞って再調査したところ90%超の人が、
「自分の声が嫌い」と答えたそうです。
「私の声は、こんなにキンキンしていない」
「こんなに鼻にかかった声じゃない」
たいていの人はこう思います。
しかし、その声で人と話しているのです。
私たちが生涯もっともたくさん聞く音は、
「自分自身の声」です。
そうであれば、もっと自分の声を好きに
なった方がいいのでしょう。
声には、「その人のすべて」が出てしまうと、
山﨑さんは言います。
具体的には、身長、体格、顔の骨格、
性格、生育歴、体調から心理状態まで。
その人の、ほぼすべてが声に情報として
現れてしまうのです。
体格や骨格などの生まれつきの先天的な
声の素質が2割、残り8割は育成環境や
性格とそのときの心理状態で決まります。
「自分の声を知ることは、なかなか
わからない自分というものを真剣に
見つめるきっかけにもなります。
誰しも自分はこうしたい、これが好きだ、
あれは嫌いだ、ということはわかっていても、
それは感情の動きでしかありません。
そのような感情を宿す主体としての
自分をわかっている、と言える人は
どれだけいるでしょうか。(中略)
声と向き合うことは、自分の過去と向き合い、
現在の自分と向き合うことです。
それは間違いなく、将来の自分をも
くっきりと描き出すことになるでしょう。」
世の中には、「話し方」や「歌い方」に
関する本は多く出版されています。
しかし、「声とは何か」に焦点を絞り、
声そのものについて書かれた本は、
それほど多くありません。
山﨑さんは、音が心身に与える影響を主に、
音響心理学、認知心理学をベースに研究し、
調査を行ってきました。
本書は、その山﨑さんの経験に、
世界の最新の研究成果を加えて、
「声の影響力」を明らかにします。
声の影響力は、「他者への影響力」と
「自分自身の影響力」の2つがあります。
私たちが、語られている内容よりも、
声によって動かされてしまうのは、
他者への影響力の最たるもの。
本書では、他者への影響力を宗教家、
政治家、歌手などを例に説明します。
また自分自身への影響力としては、
「本物の自分の声」を見つけて、
定着させる方法を解説します。
自分の声を味方にして、人生をより良く
することにも言及しています。
本書はマイケル・ファラデーさんが
執筆した名著、『ロウソクの科学』への
オマージュでもあり、さまざまな分野から
「声という音」を解き明かす本になっています。

山﨑さんの言う「本物の自分の声」とは、
その人の心身の恒常性に適った声のこと。
それは心身を正常で健康的な状態に
安定させる声のことです。
「本物の自分の声」は、自分の声を
録音して聞くことで見つけられます。
自分の声の中でも「この声、嫌じゃない」
と思える部分が「自分の本物の声」です。
その声が出た部分を何度も聞いて、
自分に記憶させることが大切のようです。
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