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読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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合成生物学の衝撃

満足度★★★
付箋数:24

  「コンピュータ上で “生命の設計図” である
  ゲノムを設計し、その情報に基づいて合成した
  DNAや、改変したDNAを持つ新たな生物を作る。
  作ることによって生命の仕組みを解き明かす。
  あるいは得た知識と技術を駆使して人類に
  とって有用な生物を作る。合成生物学は
  そうした試みだ。まだ新しい分野だが、
  それもそのはず。ゲノムを解読し、デジタル
  情報として扱えるようになったからこそ、
  こうした工学的発想が生まれ、実験も可能に
  なった。」

ゲノムを「読む」ことを終えたら、
「書く」こと移行するのは必然の流れでした。

それがSynthetic Biology:合成生物学という
学問です。

合成生物学は、今、もっとも勢いのある
科学分野の一つです。

産業界の投資熱も高まっていて、合成生物学に
関連する米国企業50社が2017年に調達した
資金の合計額は、17億ドル以上にもなった
といいます。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんも
「もし私がティーンエイジャーだったら、
生物学をハッキングするだろう」と語っています。

本書の著者は、『捏造の科学者 STAP細胞事件
で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した
毎日新聞科学環境部記者の須田桃子さんです。

本書は、合成生物学の歴史から最新情報までを
綴ったノンフィクションです。

須田さんは、この本の執筆のために2016年9月
から1年間、米ノースカロライナ州立大学
遺伝子工学・社会センターに客員研究員として
滞在しました。

そこで自らも合成生物学を研究すると共に、
この分野のグル達に取材を行いました。

米国での合成生物学の歴史には、
2つの大きな流れがあります。

1つは、孤高の科学者クレイグ・ベンターさん
が率いる研究チームによる人工生物
「ミニマル・セル」の20年に及ぶプロジェクト。

ベンターさんは、『ヒトゲノムを解読した男
として知られている米国の分子生物学者です。

孤高の科学者と呼ばれるのは、DNAの二重螺旋
構造を発表したジェームズ・ワトソンさんと
対立し、米国立衛生研究所を飛び出したから。

たった1人で、自らのアイディアを実現する
研究所を設立し、ミニマル・セルの研究を
続けたのです。

ベンターさんは、あらゆる既知の独立した
生物の中で最小のゲノムを持つ人工細胞を
作り出しました。

それが人工生命体ミニマル・セルです。

本書には、多くの科学者が登場しますが、
主役を1人だけ挙げるとするならば、
それは間違いなくベンターさんです。

波乱に富んだ人生を歩み、型破りで毀誉褒貶が
激しく、かつ科学者としての実績もあるので、
まさに主役に相応しい人物です。

もう1つの流れは、多くのコンピュータ学者や
工学者が集い、「生物学を工学化する」という
コンセプトで行われた試み。

2000年初頭、マサチューセッツ工科大学に
集まった科学者たちが思いついた発想です。

それは、コンピュータ上でDNAを設計し、
その生物を実際に作ってみるというものでした。

トム・ナイトさん、ドリュー・エンディさん
らの工学者がMITで合成生物学の講座を作り、
研究を始めます。

ここでは「生物学を工学化」のコンセプトを
検証し、後にそれは「iGEM」と呼ばれる、
合成生物学の世界大会へ発展しました。

この大会には、世界中から若い才能と
アイディアが集まり、技術と課題を共有
できる場となっています。

iGEMは、MITで毎年11月ごろ開催されます。

本書は、さすがに1年かけて研究・取材した
だけあって、非常に緻密に書かれています。

合成生物学の裏も表も知ることができる
優れたノンフィクションです。

この本から何を活かすか?

  「ヒトゲノムの合成は現実的なプロジェクト
  ではない。なぜなら、それについて話している
  人々は、私たちの研究所がやったような、
  小さな細胞を作る能力すら持ち合わせて
  いないからだ。もし小さな細胞を作ることが
  できないとしたら、どうやってその数百万倍も
  複雑な細胞を作ろうというのだろう?
  10年以内に成し遂げるなど、絶対に不可能だと
  確信している。」

遺伝子数はわずか473個で人工生命体、
「ミニマル・セル」を作ったベンターさんは、
ヒトゲノム合成計画を嗤います。

ちなみに、本書の表紙の写真は、
親を持たない生命体として誕生した
ミニマル・セルです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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