活かす読書
ikadoku

ビジネス書・ベストセラー本・科学本を中心に13年以上、ひたすら本を紹介し続けるブログ。既に紹介した本は3700冊以上。

教養としてのテクノロジー

2018年04月20日
IT・ネット 0
満足度★★★
付箋数:24

  「本書は、メディアラボ所長として世界を
  飛び回り、日々いろいろな人々と触れ合うなかで
  思った僕の “実感” をなるべく言葉にしています。
  前著『9プリンシプルズ』は本をつくのに
  数年を費やしましたが、本書は日本の方々に
  向けて書いています。僕が日頃で思っている
  ことをまとめた本になっていると信じています。」

著者の伊藤穰一さんは、マサチューセッツ工科大学
(MIT)メディアラボの所長を務める方。

MITは88人のノーベル賞受賞者を輩出している、
世界でも屈指の研究大学です。

そこに所属するメディアラボは、1985年に創設され、
以来「人間とコンピュータの協調」を大きな
テーマとして世界最先端の研究を行っている機関です。

本書は、そのメディアアボで所長を務める
伊藤さんが、テクノロジーの可能性と未来について
語った本。

話しているテーマは多岐にわたり、「実感」を
語ったと言う通り、深く探求するのではなく、
思いつくままに語った「未来エッセイ」です。

それぞれのテーマは非常に興味深いのですが、
若干、散漫な印象ありました。

本書の中で、私の関心を引いたテーマは
2つあります。

1つ目は、新たな資金調達の方法「ICO」。

ICOとは、IPOに似た言葉ですが、イニシャル・
「コイン」・オファリングの略です。

これはテクノロジー系のスタートアップ企業が、
仮想通貨を介して資金を集める新たな手法。

起業家や開発者が、自分たちの提供する
新しいサービスで使える「トークン(コイン)」
を投資家に買ってもらい、その購入代金で
資金調達する手法です。

購入したトークンが取引所に上場されて、
売買が可能になると、一気に値上がりする
可能性があるため投資家の人気を集めました。

その一方、新しい手法であるために
基本的なルールが未整備であったり、
インチキなICOがたくさんあるなど、
さまざまな問題もあるようです。

もう1つ私の関心を引いたのは「身体拡張」です。

  「科学技術の進歩により、人間が持つ足よりも
  能力が高い “義足” が登場しました。
  高い推進力を持つカーボン製の義足を付けた
  選手は、すでに人間の足で走るスピードを
  上回ることができるようになりました。
  僕は “パラリンピックがいつの日か、
  オリンピックを超える競技会になる” ことを
  いつも想像しています。」

この背景にあるのは、トランスヒューマニズム
の思想です。

これは科学技術を使って人間の身体や
認知能力を進化させ、人間を前例のない
状態まで向上させようという思想です。

伊藤さんはトランスヒューマニストではない
ようですが、拡張身体が一般的になる未来を
想像しています。

個人的には『あしたのジョー』を下敷きにした
ボクシングアニメ『メガロボクス』をちょうど
見始めたところだったので、身体拡張は
タイムリーな話題でした。

この身体拡張は、日本とアメリカで向かっている
方向が違うそうです。

日本人は『サイボーグ009』などの影響もあって、
そもそも身体を拡張するのが好きで、
テクノロジーを楽しむ傾向があります。

一方、アメリカでは身体を拡張というより、
不滅の肉体を持ちたいという方向に関心が
集まっています。

日本はファンタジー寄りで、アメリカはシリアス
寄りといった「空気と場」の違いがあるようです。

テクノロジーの未来を考えると、いろいろな
「そもそも論」を考える必要が出てきます。

そういった意味で、本書を読むと、
もう少し突っ込んで議論をしたいという
不完全燃焼の感じが残る本でした。

この本から何を活かすか?

伊藤さんは「ワールド・オブ・ウォークラフト
(WoW)」という、オンライン・ゲームに
ハマったそうです。

WoWは、登録ユーザーが1000万人を超える
オンライン・ロールプレイング・ゲームです。

メディアラボの所長がハマってしまうゲームが
どんなものか興味がありますね。

日本版がない、チャットは英語のようなので、
英語学習の一環として参加するのもいいかも
しれません。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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