集中力はいらない
2018年04月13日
付箋数:23
私たちは、子どもの頃から「集中」することが、
大事であると、ずっと言われ続けてきました。
集中とは、数ある対象の中から、1つに絞れ
という意味と、長い時間をかけてだらだら
やるなという意味で使われます。
それは、スポーツでも、勉強でも、仕事でも。
集中することが、良いパフォーマンスに
つながる鍵であると考えられています。
集中することは、非常に素晴らしいもので、
集中力があるほど有利であると。
果たして、集中とはそんなに良いもので、
それによる弊害はないのでしょうか?
「この本で僕が書こうと思っているのは、
実は、 “集中力” に否定的な考え方である。
だから、あえて言えば “アンチ集中力”
みたいなものの効能について語ろうと思う。」
本書は、『すべてがFになる』などの小説を
量産する理系ミステリ作家、森博嗣さんが、
「集中力」について考察したエッセイです。
森さんは、これまでにも小説以外の
「思考力」に関する本を書いてきましたが、
本書もそういった系統の一冊。
「そもそも、僕は “集中力” を全否定する
つもりは毛頭ない。それどころか、集中力は
大事だと思っている。ただ、説明が難しい
のだが、全面的にそれを押し通すのはいかがか、
という問題を提起したい。集中力は、みんなが
持っている印象ほど素晴らしいものではない、
少しずれているのでは、と気づいてもらい
たいのだ。」
森さんが、アンチ集中力を唱える1つ目の根拠は、
集中力の行き着く先が「機械化」であること。
私たち人間は、必ずミスをします。
そして、ミスをした原因は、集中しておらず、
注意力散漫だったからと考えられます。
つまり、集中によってもたらされるのは、
ミスのない完璧な仕事。
それを実現できるのは、機械やコンピュータ
だから、集中が目指す先には機械化があると
森さんは考えます。
もう1つのアンチ集中力の根拠となるのは、
人間らしい「発想」は、集中からは生まれない
ということです。
発想は、集中とは逆の「分散」から生まれます。
「ここで大事なことは、その “発想” には、
いわゆる一つのことしか考えない “集中” が
逆効果である、という点である。
むしろ、別のことを考えていたり、
あれもこれもと目移りしていたりするときの
方が発想しやすいことを、僕は経験的に知った。
あえて言葉にすれば、 “ヒントはいつも、
ちょっと離れたところにある” からだ。
一点を集中して見つめていては、その離れた
ものに気づくことができない。」
個人的に森さんの考えで面白かったのは、
「集中と分散」を「具体と抽象」と
関連付けて考察していた点です。
正確に集中=具体、分散=抽象ではありませんが、
なんとなくイメージは伝わります。
抽象は、焦点が絞られていないので、
すぐに行動を起こしにくいかもしれませんが、
適用範囲が広く、応用しやすい考えです。
分散することは、抽象的な視点や考えに
結びつき、偶然に現れる発想が芽生えやすい
土壌を作っていると森さんは感じています。
森さんは、本書でも「では、どうする」という
具体的な答えを書いていません。
あくまで、考えるヒントを与えることに
とどめています。
それは、お手軽で簡単な答えを与えるより、
自分の頭で考えることの方が大切であり、
それが思考力を身につける方法と
考えるからです。
本書は、集中力至上主義に陥りがちな
私たちに、別の角度からのものの見方が
あることを気づかせてくれます。
ちなみに、速筆で知られる森さんですが、
本書も、1日1時間の執筆×14日間=14時間で
書かれた本です。

発想を生む分散思考は、どうしたらできるのか?
「分散思考は、明らかにリラックスしている
方が適しているようだ。これには、創造的な
仕事をする多くの人が証言していることからも
わかる。海に行かないと書けないという作家が
いたり、酔っ払わないと曲が浮かばないという
作曲家がいたりする。創作の仕事場というのは、
だいたい室内で、限られた場所であるから、
多くのクリエイタは、旅行を好む。
頭をリラックスさせ、集中させないことが、
いかに大事な条件であるかを知っている
のだろう。」
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