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動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ

満足度★★★
付箋数:22

  「発見者と、発見を見逃してしまった
  人との差は、準備された心の有無である。
  準備された心、とは、 “the prepared mind” 
  の訳語で、もともとはフランスの微生物学者
  ルイ・パスツールの言葉とされる、
   “Chance favors the prepared mind” 
  という格言に基づく。
  備えあれば憂いなし、などと訳されることも
  あるが、私は、チャンスは準備された心に
  のみ降り立つ、とあえて直訳し、
  言葉の本来の意味を味わいたい。」

本書のサブタイトルになっているのが、
「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」。

この部分は、スコットランドの医学者、
アレクサンダー・フレミングさんが
抗生物質を発見したエピソードを紹介する
パートに登場します。

本書は生物学者、福岡伸一さんの
「動的平衡」シリーズ第3弾です。

生命を中心のテーマとした科学エッセイで、
動的平衡に的を絞って話をしている訳では
ありません。

同シリーズ、第1弾、第2弾との関連は
それほどありませんので、本書単体で
楽しめるエッセイです。

福岡さんが月刊ソトコトに連載していた
「生命浮遊」の原稿に、加筆・修正を加え、
再構成されています。

福岡さんは、「動的平衡とは・・・」と
いった無粋な説明はしないと言っていますが、
ここではあえて説明をしておきます。

これは生命の持つしなやかなダイナミズム
を捉えるために、福岡さんが到達した概念。

世の中のすべてのものごとは、時間の経過と
共に、乱雑さが増す方向に進みます。

あえて手を加えなければ、あらゆる秩序は
あまねく崩れ、乱雑になっていく方向にしか
進みません。

これをエントロピー増大の法則と呼びます。

大きな力として自然界に働く、この法則に、
抗うための生命の営みが「動的平衡」です。

少し長くなりますが、本書の説明を引用します。

  「生命にとって、エントロピーの増大は、
  老廃物の蓄積、加齢による酸化、
  タンパク質の変性、遺伝子の変異・・・
  といった形で絶え間なく降り注いでくる。
  油断するとすぐにエントロピー増大の法則
  に凌駕され、秩序は崩壊する。
  それは生命の死を意味する。これと闘うため、
  生命は端から頑丈に作ること、すなわち
  丈夫な壁や鎧で自らを守るという選択を
  あきらめた。そうではなく、むしろ自分を
  やわらかく、ゆるゆる・やわやわに作った。
  その上で、自らを常に、壊し分解しつつ、
  作りなおし、更新し、次々とバトンタッチ
  するという方法をとった。この絶え間ない
  分解と更新と交換の流れこそが生きている
  ということの本質であり、これこそが系の
  内部にたまるエントロピーを絶えず外部に
  捨て続ける唯一の方法だった。
  動きつつ、釣り合いをとる。
  これが動的平衡の意味である。」

福岡さんは、この動的平衡は生命だけでなく、
組織論にも応用できると考えています。

福岡さんのエピソード描写力は相変わらず高く、
よく知られた話でも、読者を引き込みながら、
生命の持つ力の偉大さを感じさせてくれます。

  第1章 動的平衡組織論
  第2章 水について考える
  第3章 老化とは何か
  第4章 科学者は、なぜ捏造するのか
  第5章 記憶の設計図
  第6章 遺伝子をつかまえて
  第7章 「がんと生きる」を考える
  第8章 動的平衡芸術論
  第9章 チャンスは準備された心にのみ降り立つ
  第10章 微生物の狩人

この本から何を活かすか?

私が本書で最も気に入ったエピソードは、
1906年にノーベル生理学・医学賞を
受賞した、カミッロ・ゴルジさんと
サンティアゴ・ラモン・イ・カハールさんの
話しです。

この2人に、こちらもノーベル賞を受賞した
小説家カズオ・イシグロさんの「記憶」の
名言を絡めてくるのはさすがだと思いました。

以下、ソトコトの記事へのリンクです。

vol.115 ゴルジとカハール

vol.116 カハール・記憶・イシグロ

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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