東大から刑務所へ
2017年11月02日
付箋数:18
本書は元ライブドア代表取締役社長CEOの
堀江貴文さんと、大王製紙の前会長の
井川意高さんの対談本です。
お二人の共通点は、タイトルにある通り、
「東大」と「刑務所」を経験したこと。
堀江さんは、2006年1月16日、証券取引法違反
の容疑で、東京地検特捜部の家宅捜査を受け、
最高裁まで争いましたが有罪判決となり、
長野刑務所に収監されました。
井川さんは、カジノでの使用目的で子会社から
106億8000万円もの借り入れをし、特別背任の
容疑で逮捕され、懲役4年の実刑判決を受け、
喜連川社会復帰促進センターに収監されました。
堀江さんは、出所後に何冊も本を執筆して
いるので、逮捕前後の話や長野刑務所での
体験談は、これまでに語られてきた内容と
大きな違いはありません。
個人的には、井川さんの話を聞いたことが
なかったので、本書の話は新鮮でした。
「井川さん、普通これだけの額のカネが
動いていたら、誰だってアヤシイと思いますよ。
もうホントに勘弁して下さいよ。
1円単位までカネの出入りを全部調べたけど、
笑っちゃいましたよ。調べてみたら、あなた
百何億ものカネの99%を全部バクチに
使ってるじゃないですか。残りの1%は飲食と
女の子のために使ったって、我々はホントに
ガッカリしましたよ!」
これは、井川さんが取り調べを受けた検事から
言われたセリフです。
100億円以上のお金を、単にカジノで溶かして
いるだけとは思わず、東京地検特捜部は当初、
大物政治家への贈収賄を疑っていたようです。
「もちろん “なんとか返さないとヤバイな”
とは思っていたけど、それが罪だとは
思わなかった。延々とバカラをやり続ければ、
いつかわ負けを取り返せると思っていた。
こっちは込んだ負けを取り返すことで頭が
いっぱいだったし、まさか東京地検特捜部に
逮捕されるなんて思いもよらなかった。
自分が逮捕されるであろうという意識は、
たかぽんと同じくゼロだったわけよ。」
一人ずつだとそうでもないかもしれませんが、
二人揃うと、「ろくでなし感」が強調される
印象を受けます。
お二人が有罪判決を受けたのは悪いことをした
からではなく、裁判官からの「妬み」である
ということで納得しているようです。
井川さんは、佐藤優さんから次のアドバイスを
受けたと言います。
「井川さん、裁判官にとっては、自分の年収
よりも大きいカネに関わった人間は全員悪人
ですから。裁判官は国家公務員の中では
けっこうたくさんもらっているほうだけど、
それでもせいぜい年収3000万円くらいが
上限でしょ。井川さんの年収には全然届かない。
だから井川さんは極悪人に見えるんですよ。
しかも巨額のカネをバクチに使ったなんて
聞いたら、返してようが返してなかろうが
関係ない。だから裁判で何を言われようが、
こう思うしかないんですよ。
『悪かった。悪かった(運が悪かった)』」
堀江さんも、裁判官が自分より年収や
ステイタスが上の人間を認めたくない
という点には同意しています。
お二人には元受刑者であるという暗さは、
微塵もありません。
良くも悪くも、その軽さがあるから、
出所後、楽しく暮らしていくことができる
のでしょうし、その軽さがあったからこそ、
一度塀の中に入ったのだと思います。
もし自分が東大に入っても、こうなりたくない。
もし自分が資産家のサラブレッドとして
生まれても、こんな人生は送りたくない。
一般の人が本書から得る教訓はその程度かも
しれませんが、自分とは全く違う人生を
送った人の話としては、興味深い本です。

井川さんの突き抜け方は、なかなかなものです。
本人も経営者として生きるよりも、ヤクザな
生き方の方が性に合っていると自覚があります。
ただし、世間の感覚とどれだけズレているかは、
きっとわかっていないのでしょう。
私は、井川さんの著書、『熔ける』をまだ
読んでいないので、これを機に読んでみたいと
思いました。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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