カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座
付箋数:25
非常にベタなタイトルですが、本当に人間の
「カラダはすごい」と思える一冊です。
「私は現在、健診センターに非常勤で勤務する
かたわら、医療小説を書き、三足目のワラジ
として福祉系の大学で “医学概論” の講義を
しています。本書は、その講義ノートの
一部を読み物ふうにアレンジしたものです。」
本書のようなエピソードが詰め込まれている
講義なら実際に聞いてみたいと思えるほど、
魅力ある内容でした。
とにかく、久坂部羊さんの医療にかかわる
雑学がものすごい。
本職の医師なので、医療の知識が確かである
ことはもちろんですが、映画や小説、著名人
に関わる医学的エピソードの知識が豊富で
まったく飽きさせません。
「サブタイトルを『モーツアルトとレクター
博士の医学講座』としたのは、講義中に
脱線する雑談の中に、モーツアルトや
『羊たちの沈黙
ハンニバル・レクター博士などが
よく登場するからです。」
では、本書からレクター博士のエピソードを
紹介しましょう。
レクター博士とは、1991年に公開された
アメリカの映画『羊たちの沈黙
アンソニー・ホプキンスさんが演じた
美食家の天才外科医。
原作はトマス・ハリスさんの同名小説で、
『レッド・ドラゴン
『ハンニバル・ライジング
として描かれています。
さて、レクター博士は、憎まれ役の
司法省監察次官補をつかまえ、
生きたまま頭蓋骨を切り取り、
露出した脳をスプーンのような器具で
すくい取って食べます。
ヒロインのクラリス捜査官の前で、
次官補を椅子にくくりつけて、
意識がある状態で、脳を食べてしまうのです。
果たして、このようなことが医学的に
可能なのでしょうか?
「脳の表面には知覚神経がないので、
すくい取られても痛くありません。
ですから、小説にある通り、頭蓋骨を
切断するときだけ曲部麻酔をかけておけば、
あとは問題なくできるでしょう。」
実際に久坂部さんは、脳外科医が
脳の前頭葉の半分ほどを切除して、
そこから腫瘍をより分けているのを
生で見たことがあるそうです。
その様子を、次のように描写していますから、
レクター博士の脳を食べるシーンも
よりリアルに感じたのだと思います。
「それは茶碗蒸しの中からぎんなんを
取り出しているようでした。
脳は固めの豆腐かフグの白子のようなので、
指で押さえれば簡単につぶれるのです。」
これはかなり特殊なエピソードですが、
本書には日常生活に関わるような
医学知識も豊富に紹介されています。
・アルコールを飲むとトイレに行きたくなるわけ
・しゃっくりの止め方
・慢性便秘が起こるわけ
・血圧が高いとなぜ悪いのか
・長期保証のないレーシック
本書を読むと、世間でまことしやかに
噂されている医学知識があまり根拠のない
ことがよくわかります。
また、本書の医学知識は単に雑学だけでなく、
日常生活にも生かすこともできるでしょう。
ちなみに本書は、久坂部さんが2012年に
出版した『モーツアルトとレクター博士の
医学講座』の内容を一部アップデートした
新書版です。

私は、本書で久坂部さんを初めて知りましたが、
かなり面白かったので、久坂部さん医療小説も
読んでみたくなりました。
・『廃用身
・『悪医
・『神の手 上
・『虚栄
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
- 関連記事
-
- 超能力微生物 (2017/06/15)
- カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座 (2017/06/08)
- コスパ飯 (2017/06/06)