なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか
付箋数:26
多くの企業は、市場で良いポジションを得て、
高い収益を上げるために戦略を立てます。
しかし、実際に高収益を上げられる企業は
ごくわずかしかありません。
成功している企業と、そうでない企業の
決定的な違いはどこにあるのか?
その違いは、「戦略」を「実行」する力に
あります。
つまり、戦略と実行の間に望ましくない
大きなギャップがあると、企業は高い収益を
上げられません。
では、このギャップを埋めている企業は
どのような力があるのか?
それが、企業が全体として持つ組織的な能力、
いわゆる「ケイパビリティ」です。
戦略と実行を結び付けるものが、
ケイパビリティなのです。
それでは、企業はどのようにすると
優れたケイパビリティを持てるようになるのか?
本書では、その要となるのが「コヒーレンス
(一貫性)」であると指摘します。
「コヒーレンスを有している企業であれば、
戦略と実行のギャップを埋めることに
苦労する必要がない。最初からギャップが
存在しないからだ。(中略)
一方、コヒーレンスが欠けていると、
企業の成長力が奪われる。価値創出に向かう
道がばらばらに存在する状態なのである。」
では、企業はどのようにしたら、
コヒーレンスがある状態を保てるのか?
世界最大級のプロフェッショナルファーム、
プライスウォーターハウスクーパース(Pcw)
の戦略を担うPcw Strategy&では、
その秘密を探るべく、成功した企業の
抽出と調査を行いました。
調査の対象となったのは、アマゾン、アップル、
セメックス、フリトレー、イケア、ファイザー
などの企業です。
その調査の結果、導き出されたのが、
コヒーレンスがある企業には、従来型の通念に
とらわれないリーダーシップの「5つの行動様式」
かあることでした。
その5つの行動様式が、戦略と実行のギャップを
埋める鍵となっているのです。
1. 自社の独自性を貫く
勝つ権利のない複数の市場機会を追いかかる
のではなく、自社の得意な分野を明確にし、
差別化により成長を達成します。
2. 戦略を日常業務に落とし込む
各分野で外部のベンチマークに近づける
のではなく、複数の機能にまたがって
ケイパビリティを連携させ、戦略的意図を
実現させます。
3. 自社の組織文化を活用する
組織再編を何度も繰り返し、行動を改革する
ためにリストラに頼るのではなく、
組織文化の強みを強調し、活用します。
4. 成長力を捻出するためにコストを削減する
一律のコスト削減を行ったりせずに、
重要性の低い分野は「間引き」して、
重要分野への投資資金を増やします。
5. 将来像を自ら作り出す
市場への変化を受動的に対応するのではなく、
自社のケイパビリティを再定義して、
需要を創出し、自社に有利な形で業界構造を
再編します。
本書では、「5つの行動様式」を導くために、
かなりの時間とコストをかけて調査・分析を
行っています。
「我々は、5つの行動様式が成功への唯一の
道だと主張しているわけではない。
しかし我々が知る限り、これが戦略と実行の
ギャップを縮める唯一の道であり、
これに匹敵するような長期的で持続可能な
成功をもたらす道はほかにないと思われる。」
しかし、この結果を自社で活かせるかどうかも、
結局は、その企業がケイパビリティを有するか
どうかに関わっているように思えました。

私が本書で注目した事例は「フリトレー」です。
フリトレーは、ペプシコ傘下の菓子メーカーで、
年間売上高140億ドルを誇り、35年間も市場で
トップの地位を守り続ける企業です。
迅速で成功率の高いフレーバーのイノベーション、
各国での消費者向け/小売店向けマーケティング
プログラムの開発、安定した生産と持続的な改善、
店舗直送などのケイパビリティ体系が、
フリトレーでは作られています。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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