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イノベーションはなぜ途絶えたか

満足度:★★★★
付箋数:28

近年、日本人の自然科学部門でのノーベル賞
受賞者が毎年のように出ています。

このニュースを聞いて「日本の科学って凄いな」
と思った方も多いかもしれません。

しかし、ノーベル賞受賞が増えてることに反し、
実は、「日本の科学は危機に瀕して」います。

そもそも、ごく少数の例外を除いて、
ノーベル賞受賞は、20年以上前の研究成果に
対するものです。

日本の科学から連なるサイエンス型産業は
衰退の一途をたどり、かつて「科学立国」、
「技術立国」と呼ばれ、世界をリードしてきた
日本は、その存在感を急速に失っています。

特に、今世紀に入ってから日本のお家芸だった
半導体や携帯電話などのエレクトロニクス産業の
競争力は急落し、医薬品産業も2000年初頭に
日本は国際競争から脱落してしまいました。

これは、日本のハイテク産業からイノベーション
が生まれなくなったことを意味しています。

一方、米国では世界を変えるイノベーションを
起こす企業が、次々と生まれています。

このイノベーションを生み出す日米の違いは、
どこにあるのか?

本書の著者、京都大学大学院思修館教授で、
イノベーション理論・物性物理学を専門とする
山口栄一さんは、日米の違いは「制度的要因」
に起因すると指摘します。

その制度とは、米国が1982年に始めた
「SBIR(Small Business Innovation Research)」
と呼ばれるプログラムです。

先端技術の開発をするには、基礎研究の成果と
実用化・製品化の間に、簡単には乗り越え難い
資金面での「死の谷」が横たわっています。

その死の谷を越える資金援助を行い、
無名の科学者を起業家に転じさせる
「スター誕生」システムが米国のSBIR制度です。

この制度は、次の3つの特徴を備えています。

1点目は、米国連邦政府の外部委託研究費の
一定割合をスモール・ビジネスのために
拠出することを法律で義務づけていること。

2点目は、3段階の選抜方式になっていること。

応募に採択されると最大で15万ドルの賞金、
更にチームづくりとモデルつくりを行い、
実現可能と判断されると最大で150万ドルが
与えられ、商業化に挑戦して離陸できれば、
開発製品を政府が買い取るか投資会社を
紹介する制度になっています。

3点目は、科学行政官が「今、この世にない
ものをあらしめるべく挑戦せよ」という
ミッションを持ち、申請者に対して、
極めて具体的な課題をつくり示していること。

この科学行政官は、科学者と同等の知識を持ち、
ビジネスにも精通する「目利き」です。

米国ではSBIR制度によって、毎年2000人を
超える無名の科学者をベンチャー起業家に
仕立て上げ、1983年から2015年までの
33年間で2万6782社の技術ベンチャーが
生まれました。

これに対して、日本版SBIR制度ともいえる
「中小企業技術革新制度」が1999年2月から
施行されました。

しかし、その実態は米国版SBIRとは、
似て非なるもので、既にあった補助金制度に
後から日本版SBIRのレッテルを貼ったに
過ぎないものでした。

日本版は米国版の3つの特徴をちょうど
反転させた、イノベーション起こす理念を
持たない、単なる中小企業支援策でした。

本書では、日本の制度的失敗を指摘する
だけでなく、イノベーションが誕生する
原理を明らかにし、日本が科学復興する
ための具体的な処方箋を示します。

山口さんの指摘は、非常に的を射たもので、
具体策は、まさに国家再生の設計図です。

本書は、科学技術にもビジネスにも通じた
山口さんにしか書けない、非常に優れた
提言書だと思います。

この本から何を活かすか?

日本の企業は「山登りのワナ」に
陥っていると山口さんは指摘しています。

企業の技術者には2つのタイプがいます。

1つは、山に登り始めたら、未知の山には
見向きもせず、頂上に向かって迷いなく
まっしぐらに登る技術者。

もう1つは、いつも登山への疑念を抱き、
他にもっと高い山があるのではないかと、
未知の山ばかりを探す技術者。

この2つのタイプはどちらも企業にとって
必要ですが、「集中と選択」がなされる
時には前者のタイプのみが残ってしまう。

こうして「山登りのワナ」ができあがり、
イノベーションが生まれなくなるようです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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| 科学・生活 | 06:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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