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読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線

満足度★★★★
付箋数:26

私たちは、過去に見たり、聞いたり、経験した
ことを「記憶」として覚えています。

私たちが生きていくうえで「記憶」することは、
欠かすことのできない能力です。

ところで、あなたが、「経験した」と
記憶していることは、本当にあなたが
経験したことなのでしょうか?

人は現実に経験したことのないことでも、
あたかも経験したかのごとく記憶をつくって
しまうことがあります。

これを「過誤記憶(フォールスメモリー)」
いいます。

意識するかしないかは別にして、私たちは
常に記憶をつくり続けています。

例えば、廊下ですれ違っただけの人でも、
容姿端麗だったり、奇抜な服装だったりすると、
一瞬見ただけでも、ある程度は覚えてしまう
ものです。

このように終始つくり出される記憶ですが、
ある条件下では、経験したはずがないことを
「した」と主張して譲らない人が現れます。

「私は宇宙人にさらわれた!」という人が
いるのもその一例です。

この過誤記憶は大きな社会的問題になります。

その理由の1つは、裁判の証言に対する
信憑性が揺らぐからです。

「本当にこの人がやった」というような、
心から「それが事実なんだ」と信じる
過誤記憶が、人間には頻繁に起きています。

DNA鑑定が一般的になる前の時代には、
何人もの無実の人が過誤記憶の被害を
受けていたと考えられています。

アメリカのある調査では、証言が中心的な
役割を果たして重罪が決定し、長年懲役に
服していた人々の4分の3は、実は無実であった
ということが報告されています。

経験していないことを記憶に刷り込む操作は、
実際にマウスの実験で成功しています。

通常、マウスを新しいケージに入れると、
5~7分かけて動き回って、マウスは
そのケージの特徴を覚えます。

その時に、ケージに弱い電気を流すと、
少しピリピリするので、マウスはびっくりして
フリーズしてしまいます。

自分が今いるケージは危ないところだという
記憶の痕跡(エングラム)がつくられるのです。

過誤記憶をつくる実験では、最初にマウスを
安全なケージAに入れます。

次にマウスを別のケージBに移してから、
ケージAを記憶している海馬に光を当てながら、
電気ショックを与えます。

すると、安全だったケージAに戻しても、
恐怖記憶を想起してフリーズするようになります。

マウスの脳の中では、最初に安全だと判断した
ケージAの記憶痕が再構成され、扁桃体の恐怖の
記憶痕と結びついて、経験したことのないことが、
経験したという記憶に書き換えられたのです。

実は記憶の書き換えは、悪いことばかりではなく、
うつ病、アルツハイマー病、自閉症などの
治療に利用されることが期待されています。

本書は、理化学研究所脳科学総合研究センターに
所属する9人の脳科学の研究者へのインタビューを
まとめた本です。

最先端の脳科学の研究について、9人の研究者が
それぞれの専門分野について語った内容を
サイエンスライターの丸山篤史さんが、
一般向けにわかりやすくまとめました。

「はじめに」と第1章の「記憶をつなげる脳」では、
センター長であり、ノーベル生理学・医学賞を
受賞した利根川進さんが語っています。

  「この本では、現在の脳研究でどこまで
  脳のことが分かったのか、あるいはまだまだ
  分かっていないことについて、研究者たちが
  その最前線をお伝えしていきます。
  本書のテーマは “つながり” です。」

脳研究のそれぞれの分野がつながっていて、
更にはあらゆる学問とつながることがわかる
非常に密度の濃い本です。

この本から何を活かすか?

ある人の海馬から「トム・クルーズ細胞」という
ニューロンが見つかりました。

これは俳優のトム・クルーズさんにちなんで
命名された細胞ですが、もちろん彼が発見した
わけではありません。

てんかんの治療目的で電極を刺した
患者さんにさまざまな画像を見せたときに、
たまたまトム・クルーズさんの画像にのみ
発火する細胞が見つかったのです。

このトム・クルーズ細胞は、正面写真でも
横顔でも、文字情報でも、トム・クルーズさんを
示す情報にならすべて反応したそうです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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COMMENT

著者(取材・構成)です

ご購読に感謝いたします。

過去にも、拙著「科学の未解決問題」をご紹介いただいているようで、ありがとうございます。
他にも何冊か執筆しておりますので、機会があればお手に取っていただければ幸いです。

| 丸山篤史 | 2016/12/18 03:51 | URL |















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