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住友銀行秘史

満足度★★★
付箋数:20

3000億円が闇に流れたとして、戦後最大の
経済事件と言われた「イトマン事件」。

大阪市の中堅総合商社・伊藤萬株式会社を
舞台に繰り広げられた不正経理事件です。

在日韓国人実業家で、関西の裏金融界で
暗躍していた許永中氏。

許氏と深くつながり、イトマンの経営に
常務として参加していた伊藤寿永光氏。

そして元住友銀行の常務で、イトマン社長の
河村良彦氏。

住銀の天皇と呼ばれ、中興の祖とも言われた、
住友銀行頭取の磯田一郎氏。

この4人が事件の中心人物となって、
住友銀行から融資を引き出し、3000億円が
暴力団関係者など闇社会に消えていきました。

総会屋、地上げ屋、回収屋などが活躍し、
表と裏が公然とつながっていた、
バブル時代の象徴的な事件です。

このイトマン事件で防戦に回り、裏社会と
戦った住友銀行側のメモをまとめたのが
本書です。

本書の著者は、住友銀行元取締役で、
業務渉外部の部長だった國重惇史さんです。

國重さんは、住銀で10年MOF担(大蔵省担当)
を務めるなど、出世コースを歩み、
同期のトップで取締役に就任した方です。

そんな國重さんが、1990年3月から、
イトマンをめぐる問題について、密かに
情報収集を行い、詳細なメモを取り始めました。 

  「何かが起きている、このバブルを謳歌
  している日常の裏で、恐ろしい出来事が
  起きている。この手帳をつけ始めたのも、
  これは住友銀行史、いや、日本の金融史、
  経済史に残る大きな事件になると
  思ったからだった。」

本書では、当時の住銀内や大蔵省、日銀など
とのやり取りが、実名で公開されています。

もともと、國重さんはこのメモを、
あくまで自分の備忘録としてつけていて、
公開せず、「墓場まで持っていく」つもりで
いたそうです。

しかし、今から20年近く前に、
知り合いの講談社の編集者と話していた際に、
イトマン事件のことが話題になり、
何気なく手帳の存在を口にしました。

それから折りに触れ、その編集者は、
「手帳を公開する気になったらいつでも
言ってください」と声をかけ続けていました。

その度に國重さんは、「迷惑がかかる人が
いるかもしれないから」と口を濁していた
そうです。

それでも編集者は「イトマン事件の記録は
あなただけのものではなく、日本の経済史の
一場面として、絶対に残しておくべきです」と
粘り強く説得を続けました。

そして、國重さんは70歳になったのを機に、
メモの内容を公開することに踏み切りました。

イトマン事件から四半世紀が過ぎて、
事件に関わった人の多くが亡くなったことも
國重さんを決断させた理由です。

本書には、闇社会の勢力との闘いだけでなく、
住銀内の激しい人事抗争も描かれています。

あくまで銀行側の視点で書かれているので、
消えた3000億円が誰の手に渡り、どうなったか
については、それほど詳しく書かれていません。

また、リアルで生々しい記述ではあるものの、
ベースがメモであるためか、読み物としては、
読者を引き込む魅力に欠ける面があります。

個人的には、ノンフィクション作家に
國重さんのメモを渡して書いてもらった方が、
もっと面白くなったような気がします。

それでも、戦後最大の経済事件に関する
資料として十分価値がある本だと思います。

この本から何を活かすか?

同じくイトマン事件に関する本では
ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録
があります。

本書にも登場する西川善文さんが2013年に
著した本です。

西川さんは1997年に住友銀行の頭取に就任し、
三井住友銀行時代まで8年間頭取を務めました。

また全国銀行協会会長や日本郵政の社長を
務めた方です。

ページ数は、本書の方が100ページほど
多いですが、読み応えでは西川さんの
本の方があったように思えます。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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