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読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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爆発的進化論

満足度★★★★
付箋数:27

硬骨魚類に分類される、いわゆる「普通の魚」は
たいてい「うきぶくろ」という器官を持っています。

うきぶくろは、中に気体を入れたり出したりして、
浮力を調節する器官です。

気体はうきぶくろのまわりの細胞から
取り込みますが、中には水面に口を出して、
空気を吸って直接うきぶくろに入れる魚もいます。

金魚が水面で口をパクパクさせているのは、
空気中の酸素を吸って呼吸しているのですが、
うきぶくろに空気を入れるためでもあります。

魚のうきぶくろと私たちの肺は、元は両方とも
消化器官が外側に膨らんでできた、同じ袋でした。

これを生物学的には、「相同」な器官と言います。

進化の順番で見ると、魚類が水中から出て両生類へ、
次いで爬虫類、鳥類、哺乳類といった四肢動物に
進化していきました。

すると、水中の魚が持っていたうきぶくろが、
陸に上がるときに、肺に進化して、
空気呼吸をするようになったのでしょうか?

実は、昔はこのように考えられていましたが、
事実は違います。

進化の順番から考えると不自然に思えますが、
本当は逆で、肺からうきぶくろに進化したのです。

それをどうやって突き止めるのか?

進化学的には、「最節約的」に考えるようです。

これは、いくつかある仮説の中から、
一番簡単な仮説を選ぶのです。

この考え方を「オッカムのかみそり」といい、
科学における原則とされています。

もし、待ち合わせをしていた彼女が遅れてきて、
言い訳をしたとします。

  「あのね、家を出たところで、妊婦さんが
  うずくまって産気づいていたの。
  だから病院まで送り届けたら、今度は交通事故に
  あっちゃって。たいしたことはなかったんだけど、
  その相手が小学生の時の同級生だったのよ。
  20年ぶりよ、もう、びっくりしちゃって。
  というわけで、遅れちゃったの、ごめんなさい。」

このように長々と言い訳をされた場合と、
次のように言い訳された場合、あなたらな
どちらを信じますか?

  「寝坊しちゃったの、ごめんなさい」

前者の言い訳も嘘とは限りませんが、
科学的な方法では、より単純な「寝坊」を選びます。

14世紀の神学者オッカムさんが提唱し、
「ある事柄を説明するのに、必要以上に多くを
仮定するべきではない」とした原則から、
科学の方向性を示すときに用いられる指針と
されています。

うきぶくろから肺へ進化したとすると、
進化の分岐からすると、2つの系統でバラバラに
2度の進化が起きたことになります。

一方、肺からうきぶくろになったと考えると、
1度だけの進化で説明がつくので、
より単純な、こちらの考えを採用するのです。

  「私たちヒトは、過去に起きたたくさんの
  奇跡が積み重なって生まれた生物だ。
  私たちの体をつくったそんな奇跡をたどって
  みようと思って書かせていただいたのが
  本書である。
  サブタイトルには “1%の奇跡” という
  フレーズを使ったが、そんな “1%の奇跡” が
  数えられないっぐらい起きた結果、
  生まれたのが私たちだ。だから私たちが
  生まれたことは、1%よりはるかに確率の低い、
  まさに奇跡的なことなのだ。」

著者は、東京大学総合研究博物館研究事業の
協力者の更科功さん。

本書は、進化の跡を探りながら、
従来の進化論を覆す、最新の生物学講座です。

更科さんは、たとえや日常の例を引き合いに
出すのが非常に上手く、本書の説明は
わかりやすいです。

そして、何より読者を引き込む筆力が凄く、
圧倒的に面白い。

学力的なバックボーンや老若男女を問わず、
楽しむことができる、ポピュラー・サイエンスの
お手本です。

この本から何を活かすか?

  「動物と植物の違いは、前後があるかないかだ。
  植物には前後がないが、動物には前後がある。
  イヌはたいてい前に歩くし、魚もふつう前に泳ぐ。
  でも、考えてみれば “前” ってなんだろうか。
  不思議なことに私たちは、イヌを見ても
  魚を見ても、どちらが前かすぐにわかる。
  いったい私たちはイヌや魚のどこを見て、
  前と判断しているのだろうか。」

こんな書き方をされると、思わず引き込まれて
しまいますね。

実は、私たちは「口のあるほう」を見て、
「前」と判断しています。

つまり、植物には口がないので、
「前」もないのです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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