グロービスMBAで教えている 交渉術の基本
付箋数:22
交渉には大きく分けて2種類あります。
1つ目は、「価値分配型交渉」。
これは、一方の要求(得)が、もう一方の
譲歩(損)になる、ゼロサムの交渉です。
ゼロサム中の一定の価値を、それぞれが
どれくらい得られるかを分配しあいます。
2つ目は、「価値創造型交渉」。
こちらは、双方が得られる価値の合計を
最大化する交渉です。
交渉前に見えていた価値に、新たに生まれた
価値を加えた上で、お互いに得られるパイの
大きさ自体を大きくすることを目指します。
本書が目指すのは、この価値創造型交渉です。
交渉というと、特別な立場にある人が行うもの
というイメージがあるかもしれません。
しかし、本書で対象とするのは、営業力や
プレゼンテーション力なども含めた
ビジネスシーンでの広い範囲での交渉です。
本書は、ビジネスパーソンなら知っておきたい
「交渉」の基礎技術を、7つのストーリーで
学ぶ「交渉の教科書」です。
まずは、交渉の3つの基本的概念を押さえます。
<BATNA>
Best Alternative to Negotiated Agreement
の略で、「交渉が合意しない場合の最善の案」
です。
交渉相手から提示されたオプション以外で、
最も望ましい代替案であり、交渉に関する
最も重要な古典的概念です。
もし、交渉が決裂したら自分はどう行動するか、
相手はどう行動するかを見極めておくことが
重要です。
<留保価値>(Reservation Value)
これを下回れば絶対に交渉で妥協しないという
最低条件です。
通常はBATNAを行使した際に得られる価値で、
交渉を撤退する基準となります。
<ZOPA>
Zone of Possible Agreementの略で、
交渉の合意可能領域です。
交渉が妥協する可能性がある範囲のこと。
もし、お互いの留保価値がわかれば、
交渉は連立不等式を解くようなものです。
仮に自社の留保価値が500万円より上で、
相手の留保価値が550万円より下なら、
500万円<ZOPA<550万円となります。
また、自社の留保価値が600万円より上で、
相手の留保価値が550万円より下なら、
ZOPAは存在しません。
しかし、通常自らの留保価値は分かっていても、
交渉相手の留保価値を知ることはできません。
そこで、最初に自社のBATNAをしっかり押さえ、
相手から出る条件と比べ、交渉のテーブルに
つくかどうかを判断します。
実際には、交渉の過程を通じ、相手の
BATNAから可能な限り相手の留保価値を
予測して、ZOPAの中での目標値を決めて
交渉に臨みます。
これが交渉の基本ですが、教科書通りに
いかないのが交渉の難しさです。
本書では、交渉の合理的な判断を妨げる
要素として、「情報の入手の難しさ/非対称性」、
「認知バイアス」、「心理的バイアス」の
3点を挙げています。
そして、互いが利害関係に抱いている
価値の違いを発見して、それを交換することで
妥協の可能性を広げ、新たに価値を創造する
ことを目指します。
こうした交渉の流れはイメージしにくいので、
各章の冒頭にミニストーリーを用意して、
リアルに伝わるように工夫されています。
本書は、非常にコンパクトにまとまった
「交渉の入門書」だと思います。

交渉には、文化的な行動規範、いわゆる
国民性が反映する場合があります。
アメリカでは映画「12人の怒れる男」で描かれて
いるように、個人の信条に基づいた自己主張が
大事にされます。
一方、日本では落語の「三方一両損」で描かれた
社会規範と考えられます。
裁定する立場の者も含め、みんなで痛みを
分かち合うことをよしとするのは日本独特です。
グローバルな交渉を行う際は、相手がどのような
社会規範を持つかを知ることも重要です。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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