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読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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〈わたし〉は脳に操られているのか

満足度★★★
付箋数:23

1991年2月17日の真夜中すぎ、米ジョージア州
オークウッドのドミノ・ピザに強盗が入りました。

強盗はレジから現金を奪った後、
店長にひざまずくように命令しました。

強盗は相手の後ろに回り、汗に濡れた後頭部に
拳銃を当てます。

店長は金を持って出ていってくれと命乞い
しましたが、強盗は容赦なく引き金を引きました。

こんな無慈悲な殺人者にも弁護団がつきます。

どうすればこんな殺人事件でも有利に裁判を
すすめることができるのか、弁護団は考えました。

まず、健康診断から始めることにして、
彼の身体と精神を徹底的に検査しました。

しかし、成果は乏しく、彼には身体的、心理的、
精神的、神経学的な疾患はありませんでした。

また、躁うつ病も、統合失調症も、
アルツハイマー病もありませんでした。

検査で見つかったのは、取るに足りないこと
だけで、いくつかの主要神経伝達物質を
分解するモノアミン酸化酵素Aが、
わずかに不足しているに過ぎませんでした。

これで犯人が正気でなかったと主張するには
まったくもって不十分です。

しかし、ここで弁護団は大胆な作戦に
出ることにしました。

脳内ニューロン間のコミュニケーションが
神経伝達物質の相対的濃度に影響されたせいで、
彼は殺人を犯したと主張しました。

弁護団の陳述は以下の通りです。

 罹患男性におけるMOMA(モノアミン酸化酵素A)
 の活動停滞は、通常MOMAを用いて体内で
 分解される、神経伝達物質のセロトニン、
 ノルアドレナリン、ドーパミン、および
 アドレナリンの過剰分泌につながった。
 ・・・MOMA遺伝子の欠陥により、これらの
 神経伝達物質が過剰に蓄積すると、
 罹患者はストレスの多い状況に対応するのが
 困難になり、その結果、過剰に、
 ときに暴力的に反応する。

この主張は、彼が殺人を犯したのは、
彼の脳によって決定されたことなので、
彼自身は犯罪に対して全責任を負うことは
できないということを意味します。

果たして、人を殺したのは脳のせいと
言うことができるのでしょうか?

現在の脳科学では、脳が人間の思考や行動を
因果的に決めているため、自由な意志は
存在しないと考える「決定論」が主流派の
考えです。

この決定論でいくと、ドミノ・ピザの
強盗殺人事件の弁護団の陳述のように、
「それは脳のせいだ」という主張に
なりかねません。

ちなみに一般的決定論は、19世紀に
ピエール・ラプラスさんが主張した、
いわゆる「ラプラスの悪魔」につながります。

この決定論と対立するのが、人間には
「自由意志」があるという立場です。

こちらは脳による無意識の決定を超えて、
人間には意識的に熟考する能力があると
考えます。

著者のエリエザー・スタンバーグさんは、
イェール大学付属病院の神経科医で、
本書で脳科学の主流派の主張に異を唱えます。

「限りのない問題」があった場合、
決定論的システム(アルゴリズム)では
解けないとし、一方、人間は「限りのない問題」
に対処できることから、人間にはアルゴリズムを
超える自由意志があると主張します。

本書は、脳科学の重要なテーマを論じ、
多数派の主張に切り込んでいく話題作です。

この本から何を活かすか?

  「もしもある瞬間における全ての物質の
  力学的状態と力を知ることができ、
  かつもしもそれらのデータを解析できるだけの
  能力の知性が存在するとすれば、この知性に
  とっては、不確実なことは何もなくなり、
  その目には未来も(過去同様に)全て見えて
  いるであろう。」

これがピエール・ラプラスさんの提案です。

しかし、20世紀になって「ラプラスの悪魔」を
覆したのが、量子力学でした。

全ての粒子の位置と速度を正確に知ることが
できないから、原子の運動は確率的にしか
把握できない。

つまり、ラプラスの悪魔でさえも未来を
完全に計算することはできないのです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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