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「決め方」の経済学

満足度★★★★
付箋数:28

ダイヤモンド社の上村さんに献本いただきました。
ありがとうございます。

  「多数決を使うことは、子供の頃いつの間にか
  教わる。けれどその正しい使い方は、
  大人になっても教わることはない。
  これはなかなか不思議なことだ。(中略)
  本書は『「決め方」の経済学』というくらい
  だから、決め方を経済学的に考える本だ。
  多数決は決め方のひとつ。
  これはよく使われているけれど、選択肢が
  3つ以上あると、票割れの影響を強く受けてしまう。
  改良案や代替案はいろいろある。」

本書は、数理モデルで示された定理を活用して、
経済学的に「正しい決め方」を解説する本です。

著者は、慶應義塾大学経済学部教授の坂井豊貴さん。

学問的には、経済学と政治学の両方で研究される、
「社会的選択理論」という分野になります。

坂井さんが指摘するように、私たちは、
いつの間にか、「多数決」をいろいいろな場面で
当たり前のように使うようになっています。

しかし一方で、多数決で決まった結果について、
違和感を覚えた経験がある方も多いはず。

なぜ、私たちは多数決を無批判に使っているのか?

それは、他にもっと優れた方法があることを
知らないからです。

私は、本書を読んではじめて、
他にもいろいろな選択肢があることを知りました。

多数決の代替案の1つは「ボルダルール」と
呼ばれる方法です。

この決め方は、18世紀の後半にフランス海軍の
科学者ジャン=シャルル・ド・ボルダさんが
数理的な分析を加えて考案した方法です。

「1位に3点、2位に2点、3位に1点」のように
配点して投票を行います。

ボルダルールを採用すると、票割れの影響を抑え、
広く支持されている選択肢が選ばれます。

どんな条件でも常にベストな決め方とまでは
言えませんが、満場一致に最も近い選択肢を
選ぶことができるようです。

ちなみに、「決め方」に何を採用するかで、
「結果」は大きく違ってきます。

例えば、2000年のアメリカ大統領選挙では、
共和党のジョージ・W・ブッシュさんと、
民主党のアル・ゴアさんが戦いました。

この選挙では緑の党のラルフ・ネーダーさんも
途中から参戦して、ゴアさんの支持層とかぶった
ため、結果的にブッシュさんが勝利しました。

もしこの大統領選が、ボルダルールによって
行われていたら、勝利者はブッシュさんではなく、
ゴアさんになってたようです。

すると、イラク侵攻は起こらず、
イスラム国は誕生しなかったかもしれません。

逆に、もっと歴史を遡ると、第16代米国大統領の
エイブラハム・リンカーンさんが、大統領選を
勝ち抜けたのは、多数決が採用されていたから。

この時、もしボルダルールが採用されていれば、
リンカーンさんは負けていたので、
奴隷解放はもっと遅れることになったはずです。

どの決め方を採用するかは、歴史も変えるほど、
大きな影響力を持つようです。

本書では、人々の意思を情報としてまとめあげ、
1つの集団的決定を与える関数として、
経済学的に決め方をとらえます。

マンションの自治会や選挙、裁判員裁判などの
身近な例を用いて、学問的に根拠のある考え方を
平易に解説しています。

私もこれまで当たり前のように使ってきた、
多数決という決め方が、少数派の意見が反映
されないどころか、多数派の意見さえも
汲み取れないことがあるのには驚きました。

これまでに、一度でも多数決の結果に、
引っ掛かりを感じたことがある人には、
是非、読んで欲しい本です。

この本から何を活かすか?

  「ある5階建ての分譲マンションで、
  エレベーターの改修が必要となった。
  マンションの自治会でその話を議論している。
  エレベーターを普段使わない1階の住民は
  負担を拒み、なかなか話しがまとまらない。
  そこで悪知恵を働かせた5階の住民が
   “1階の住民が全額負担” と提案。
  それはよいと2階から5階までの
  すべての住民が多数決で賛成、
  80%の得票率で可決されてしまった。」

これは東京新聞に「多数決のパラドックス」
として掲載されたコラムです。

多数決の問題点を見事に表したフィクション。

では、実際にこのエレベーターの改修費問題は、
どのような決め方をするとよいのでしょうか?

本書が示す答えは、「シャプレー値」を使って、
便益に応じて費用分担を決める方法です。

ゲーム理論の「空港問題」という、
滑走路と建設費用の分担する問題の
考え方を応用した決め方。

詳しい解説は、本書をお読みください。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 経済・行動経済学 | 09:18 | comments:0 | trackbacks:1 | TOP↑

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