活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。

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数学する身体

満足度★★★★
付箋数:22

居酒屋の下駄箱で、次の番号が空いていたとします。

  2、6、7、9、10、17、18

この中で、あなたは何番の下駄箱を選びますか?

もし、あなたが、「2」、「7」、「17」を選んだのなら、
本書の著者、森田真生さんと感性が合うことでしょう。

「2」、「7」、「17」は、数学好きに愛される「素数」です。

  「数学科に入りたての頃、飲み会に参加して居酒屋の下駄箱が
  素数から埋まっていくのに驚いたことがある。
  素数というのは、1と自分以外では割り切れない数のことで、
  理論的にはかなり特別な数だ。(中略)
  なぜか数学をしていると、そんな素数に、特別な愛着が湧いてくる。
  数学好きが集まると、下駄箱も自然と、素数番から
  埋まっていくことになるのであろう。」

本書は、数学とは何か、数学にとって身体とは何かを
考え直していく本です。

森田さんは、数学と身体性の関係などを研究する独立研究者。

本書は、数式はほとんど使わずに思索するので、
数学的というよりむしろ哲学的という印象です。

数学と哲学は根っこは同じ学問とも言えますから、
真理を追求しようとすると、行き着くところは同じなのかも
しれません。

本書で数学史を紐解きながら、論考をすすめるにあたり、
主役となる方は、アラン・チューリングさんと岡潔さんの
お2人です。

チューリングさんは、コンピューターの概念を初めて理論化し、
第二次世界大戦でナチス・ドイツの暗号エニグマを解読して、
イギリス軍を勝利に貢献した数学者です。

岡さんは、多変数解析関数の分野で世界的業績をあげた数学者。

この分野での3大問題を全て独力で解決したため、
1人の数学者ではなく、数学者集団によるペンネームだと
思われていたという逸話もあります。

お2人とも同時代を生きた、「孤高」という形容がピッタリの
独創的な数学者です。

  「二人の間には重要な共通点がある。それは両者がともに、
  数学を通して “心” の解明へと向かったところである。」

哲学的な表現をすると、形而下のことを突き詰めることで、
形而上的な対象を扱おうとした2人とも言えます。

チューリングさんは、機械で心が作れないかを模索しました。

そして、人工知能の未来を予見し、「考える機械」が
生まれる日も、そう遠くないと考えていました。

一方、岡さんは、数学を使うことで、心の奥底へと
分け入って行こうとしました。

情緒を大切にし、分別智と無差別智の働きにより、
知を身につけるべきと提唱しました。

エピソードが豊富なお2人なので、あまり難しく考えず、
人物伝として読んでも十分に面白い内容です。

しかし、森田さんが目指したのは、岡さんと同じように
思考の道具として身体から生まれた数学を通して、
「人間」そのものに迫ることです。

本書が森田さんにとってデビュー作とのことですが、
個人的には、今後、数学の分野における福岡伸一さんのように
なって欲しいところですね。

本書は、福岡さんの『生物と無生物のあいだ』が
好きな方には、勧めたい一冊です。

この本から何を活かすか?

  「人間は少数の物については、その個数を瞬時に把握する
  能力を持っている。赤いものが赤ということがわかるのと
  同じように、二個のものは二個だとただちにわかる。」

3個以下と4個以上では、物の個数を把握する時に働く
メカニズムが異なるようです。

ちなみに、3個以下の物の個数をひと目でわかる能力を
スービタイゼーション(subitization)と呼ぶそうです。

八百屋さんでトマトをざるに盛って売る場合は、
3個盛るのと4個盛るのでは、差はたった1個だけですが、
それ以上に大きく違って見えるのかもしれません。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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