活かす読書
ikadoku

ビジネス書・ベストセラー本・科学本を中心に13年以上、ひたすら本を紹介し続けるブログ。既に紹介した本は3700冊以上。

経済学の95%はただの常識にすぎない

2015年06月24日
経済・行動経済学 0
満足度★★★
付箋数:22

  「大半のエコノミストの喧伝とは裏腹に、経済学には唯一の
   “正しい” 理論も学派もない。この数十年間ほど新古典主義派が
  経済学の主流派だが、少なくとも9つの学派があり、
  それぞれ一長一短である。(中略)

  諺に曰く “ハンマーを持つものには何でも釘に見える” 。
  特定の理論的視点から物事を見ようとすると、
  型にはまった問いとそれへの回答に凝り固まってしまう。
  目の前の問題は釘なのだ、だから自分の持つハンマーという
  工具が最適なのだ、と。だがたいていの場合、あなたに必要な物は
  さまざまな工具を収めた道具箱である。」

当ブログでは過去に『世界経済を破綻させる23の嘘』を
紹介したことがある、ケンブリッジ大学の経済学者、
ハジュン・チャンさんが2014年8月に刊行した
Economics: The User's Guide』の邦訳本です。

タイトルを直訳すると、「経済学の取扱説明書」となりますね。

本書で紹介される経済学の学派は次の9つあります。

オーストリア派(A)、行動経済学(B)、古典学派(C)、
デベロップメンタリスト(D)、制度学派(I)、
ケインズ経済学(K)、マルクス経済学(M)、
新古典主義派(N)、シュンペーター派(S)

そして学びたい目的別に、どの学派の経済学を
参照すべきかが示されています。

  ・経済の構成要素よりも経済制度について学びたければ、MDKIを。
  ・各種の自由市場擁護論に興味があれば、CANを。
  ・政府介入が必要なこともある理由を知りたければ、NDKを。
  ・なぜ企業が存在し、どう働いているかを知りたければ、SIBを。
  ・失業と景気後退を取り巻く議論は、CKを。

この9つの経済学をカクテルになぞらえて、
健康上の注意が記されています。

  「一種類ばかり飲んでいると、視野狭窄、傲慢、
  そしておそらく脳死に至る危険性があります。」

また、本書の「はじめに」には、他の経済学入門書との違いが
2点挙げられていました。

  「一つには、読者と真っ向から向き合うことだ。
  本書はいくつかの深遠な真理を概説するものではない。
  何種類かの経済学的分析方法を紹介するが、それは読者にも
  さまざまなアプローチの違いが十分にわかると信じているからだ。
  (中略)
  本書と他の経済学入門書のもう一つの違いは、さまざまな実例を
  収録してあることだ。他書のように一、二国に絞ったり、
  富裕国と貧困国など特定の分類に限ることはしない。」

本書は400ページ超の大作ですが、意外とスイスイ読めます。

それは、豊富なデータに基づく具体例やタイムリーな話題を
ふんだんに使って説明されているからです。

本書では、経済学を正面から捉えたり、裏側から見たり、
斜め上から眺めたりするなど、様々な視点が示されます。

立体的に経済学を映し出すことができたら、
あとはそれを実際にどのように使うかを考えます。

この本から何を活かすか?

ハジュンさんは、ケンブリッジ大学の大先輩である、
モンティ・パイソンのジョン・クリーズさんに敬意を表し、
本書の「はじめに」を次の言葉で締めています。

  「And Now For Something Completely Different....」

ただ、この部分には個人的に2つ不満があります。

1点目は、「空飛ぶモンティ・パイソン」のクリーズさん演じる
アナウンサーの言葉を引用するなら、それを受けるイッツマンの
「It's!」のセリフまで使って欲しかったこと。

2点目は、「And Now For Something Completely Different....」
の日本語訳に違和感があること。

訳者の酒井泰介さんは、モンティ・パイソンの吹き替え版を
見ていないのかもしれませんね。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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