説得は「言い換え」が9割
満足度★★★
付箋数:23
「人生は “説得” の巧拙で決まる。
交渉事から恋愛、喧嘩、闘争、組織の統率にいたるまで、
“説得” は生まれたときから人間関係のすべてについてまわる。
(中略)
では、説得のキモとは何か。
結論から言えば、 “言い換え” である。言葉遊びではない。
“言い換える能力を磨く” ということだ。
相手が腑に落ちて納得するのは、あなたの主張を、
相手が自分の価値観に転じて吟味し、その結果 “なるほど” と
なるからである。すなわち “言い換え” とは、
相手の価値観や関心事に置き換えて提示することでもあり、
人間関係における “実践心理戦術” なのである。」
本書は、相手を説得し、思い通りに動かす「言い換え術」を
紹介する本です。
第1章 説得のプロが使っている言い換え術
第2章 相手の心を手玉に取る言い換え術
第3章 人を動かす言い換え術
第4章 迫ってくる相手をいなす言い換え術
第5章 天下無敵! 「逆転」の言い換え術
著者の向谷匡史さんは、週刊誌の記者を経て作家になった方。
記者時代に大物ヤクザへの取材も数多く経験しているので、
『ヤクザ式◯◯
その関係もあって、本書でも「ヤクザ式」のトーク例が
掲載されています。
ここでは、その中から「大義名分」で言い換えて説得する
ケースを紹介します。
ヤミ金業者が亭主に内緒で借りている主婦に、
売春を迫る例です。
「返済でけへんのやったら、旦那はんに掛け合わなあかんな。
わしらが会社に乗り込んだら、旦那はん、困るやろな。
ヘタしたらクビやで」
「やめてください!」
「せやったら、奥さんがひと肌脱ぐしかないんと違うか?」
「・・・・・・」
「何も難しいことするわけやなし」
「・・・・・・」
「旦那さんと子供たちのためやないか」
ここでは、最後に「夫と子供のため」という大義名分を
持ち出した言い換えで、主婦が自分を自己正当化して
納得できる理由を与えています。
他のビジネス書と違って、新鮮ですね。
ただし、これをそのまま一般読者が使うわけにはいかないので、
ひと手間かけて、ビジネスや日常の言葉に変換してから
使う必要があります。
本書では一部このような、裏社会で使われる例を掲載していますが、
もちろん、それが全てではありません。
様々なシチュエーションの例をあげつつ、
言い換えとその効果、心理戦術について解説しています。
本書の例を見ると、ほんの少し、言葉の選択を変えるだけで、
相手を納得させて動かせることがよくわかります。
私たちが社会で生き抜いていくために、
身につけておいて損のない言い換え術だと思います。

1994年に日本テレビ放送されたドラマ「家なき子」。
当時12歳だった安達祐実さんの「同情するなら金をくれ」
というセリフはあまりにも強烈で、その年の流行語大賞にも
選ばれました。
向谷さんは、「同情するなら金をくれ」は言い換えの金字塔と
絶賛しています。
「20年たった現在でも “同情” と言えば、 “金をくれ!”
という言葉が口をついて出てくるほど、このセリフは
人間の本質を衝いているということなのだろう。
“同情” を “金をくれ” に言い換えたところが出色で、
人間の心に潜む欺瞞を見事に衝いている。」
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
- 関連記事
-
- アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術 (2015/06/22)
- 説得は「言い換え」が9割 (2015/05/27)
- 15分でチームワークを高めるゲーム39 (2015/05/26)