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サルバルサン戦記



満足度★★★★
付箋数:20

  「本作は史実をもとに作られた物語であり、実在しない人物、
  場面、会話が含まれています。」

本書は歴史上で初めて抗生物質を作った細菌学者・秦佐八郎さんの
人生を描いた科学小説です。

伝記、あるいはノンフィクションとは少し趣が違い、
話の骨格となる部分は史実を基にしていますが、
設定や登場人物、エピソードや会話などは創作された物語です。

著者は、現役の医師、神戸大学大学院医学研究科教授の
岩田健太郎さん。

本書の主人公の秦佐八郎さんは、ノーベル生理学・医学賞の
候補に挙がったものの受賞はしていません。

科学的に大きな功績を残しましたが、北里柴三郎さんや
野口英世さん、志賀潔さん、鈴木梅太郎さんらと比べると、
世間ではそれほど知名度は高くないと思われます。

本書のタイトルになっている「サルバルサン」とは、
秦さんが開発した、「梅毒」の特効薬の名前です。

秦さんが師事し、共同で開発を行ったのは、
ドイツ細菌学者パウル・エールリッヒさんです。

エールリッヒさんは、免疫の研究でノーベル生理学・医学賞を
1908年に受賞した、世界的に高名な科学者でした。

そんな有名な科学者であるエールリッヒさんが、
秦さんをドイツの自分の研究所に呼び寄せたのは、
秦さんが8年間のペストの研究に従事する中で、
一度も自分が感染しなかった実績があったからです。

二人が共同開発したのは、感染症に効く「魔弾」。

  「 “結合なくして、作用なし”。魔弾は、病原体に結合せねば
  ならんのだ! それは人体には干渉しない。
  魔弾が故に、狙った獲物だけを、ピンポイントで叩くのだ。
  コルポラーラ・ノン・アグント・ニシ・フィクサータ!」

これは、秦さんの歓迎会のときに、エールリッヒさんが
熱く語った言葉です。

当時、ペスト、コレラ、結核、梅毒などの感染症は、
人類にとって脅威であり、効果的な治療薬が存在しませんした。

また「化学療法」や「特効薬」という概念もエールリッヒさんが
提唱するまで、なかった考えでした。

  「感染症の原因微生物を殺すことは可能である。
  石鹸、水銀、石炭酸。しかしながら、そうした物質を飲ませたり、
  注射したりするのは人体にとって危険である。
  微生物が死んでも、患者が死んでしまっては意味がない。
  感染微生物を殺しつつ、感染した人間を攻撃しない化学的療法薬。
  未だ人類が一度も手に入れたことのない、微生物だけを
  狙い撃ちする魔法の弾丸。この日からエールリッヒと佐八郎の
  静かなる戦いが始まるのだ。死に至る病に魔弾を撃ち込むのだ。
  本書は、その戦いの記録である。
  我々はこれを、 “サルバルサン戦記” と呼ぶ。」

静かなる戦いですが、物語はけっこう熱い。

それは感染症治療に立ち向かう科学者としての
岩田さん自身の想いが込められているからに他なりません。

ストーリーの展開も巧みで、グイグイと引き込まれます。

実際にはありえない人物同士の気の利いた会話もあり、
フィクションならではの楽しみもあります。

この本から何を活かすか?

なぜ、人類で初めて抗生物質を作った秦佐八郎さんは、
一般にはそれほど有名ではないのか?

それは、1928年に「ペニシリン」が発見され、
サルバルサンの治癒率を上回り、
世界初の抗生物質と認識されるようになったから。

イギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミングさんは、
ブドウ球菌の培養実験中、実験汚染(コンタミ)が原因で、
アオカビが持つ細菌の発育阻止効果を、偶然発見しました。

秦さんとエールリッヒさんが理論に基づき、苦心の末、
魔弾を探し当てたのとは、対照的な発見です。

そんな偶然の発見があるのもまた科学なんですね。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 科学・生活 | 10:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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