マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた
![]() | マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた (2015/02/18) スコット・バークン 商品詳細を見る |
満足度★★★
付箋数:24
非常に面白いビジネスのドキュメンタリーですが、
著者がオフィスのない会社で働くために、
マイクロソフトを辞めたわけではありません。
著者のスコット・バークンさんは、元マイクロソフトの
マネジャーで、インターネットエクスプローラーの開発などを
主導した方です。
マイクロソフトを辞めた後は、著名コンサルタントとして
講演や本の執筆などを行っていました。
本書は、次のようなきっかけで書かれています。
「多くの人は、著名なコンサルタントがビジネスの最前線に
戻ったらどうなるだろうと思っている。
著作や講演という安全な場所から説いていたことを、
本当に実行するのだろうか、と。
この10年間で私は4冊の本を書いてある程度好評を得たこともあり、
自分自身がどのくらいその罠にはまったかと考えていた。
もしまた現場のマネジャーになったら、自らのアドバイスに
したがうだろうか。そこが知りたかった。」
バークンさんをビジネスの最前線へ復帰するように誘ったのが、
ブログ用ソフトウェアの「ワードプレス」の開発を行う
オートマティック社の創業者、マット・マレンウェッグさんです。
そのオートマティック社がリモートオフィスだったという訳です。
本書はバークンさんが、ワードプレスの開発に加わり、
リモートオフィスという自由な環境の中に
「チーム制」を導入して、更に強い組織に変革する記録。
ちなみに本書の原題は、「The Year Without Pants
: WordPress.com and the Future of Work」です。
リモート=在宅ということではなく、チームがオフィス以外の
場所に集まって働くことがあります。
実務優先でポートランドやニューヨークに集まったり、
旅情優先でアテネやリスボン、ハワイなどに集合して
働いています。
あるギリシャのホテルのロビーで、バークンさんのチーム
4人が仕事をしている様子は次のように描写されています。
「私ひとりが残りのチームメイトよりひとまわり年上だけれども、
見た目はみな20代のなかばから終わりのほうだった。
誰が見ても、旅行中のだらしない若者たちが、
アテネの輝かしい観光名所をめぐろうともせず、
あえてホラー映画さながらの不快なホテルにとどまって
パソコンや電子機器で遊んでいると思っただろう。」
バークンさんがリモートオフィスで働き始め
初期の頃に驚いたことの1つは、社員の管理法でした。
それは、ジョージ・オーウェルさんの「一九八四年」に
出てくるビッグブラザーさながらの監視体制が
あったということです。
私が個人的に意外に思ったのが、リモートオフィス体制では、
メールがほとんど使われていないということです。
オートマティック社の社内コミュニケーションの割合は、
次の通りです。
ブログ(P2)75%、IRC14%、スカイプ5%、電子メール1%
ブログでのコミュニケーションが圧倒的に多いのは、
さすがワードプレスを作っている会社というところでしょうか。
バークンさんはメールには、次のような欠点があると、
指摘しています。
・メールは送信者に主導権を与える
・メールは閉じたチャンネルである
・メールは時間とともに消滅する

同じく「メールのない生活」の章には次のように書かれています。
「かつて “もっと時間があれば、もっと短い手紙を書く”
と言ったパスカルが現代の状況に立ち向かったとしたら、
“もっと受信メールを注意深く読んだら、
私の送るメールに来る返事はもっと少なくなる” と言うだろう」
メールに依存している、現在のビジネススタイルは、
見直すべき必要があるのではと考えさせられます。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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