ビジネスモデル分析術2
2014年06月11日
![]() | ビジネスモデル分析術2 数字とストーリーでわかるあの会社のビジョンと戦略 (2014/05/29) 望月実、花房幸範 他 商品詳細を見る kindle版 ビジネスモデル分析術2 数字とストーリーでわかるあの会社のビジョンと戦略 |
満足度★★★
付箋数:23
著者の望月実さんから献本いただきました。ありがとうございます。
本書は2014年3月に刊行された『ビジネスモデル分析術』の
シリーズ第2弾。
タイトルは「分析術」となっていますが、
ビジネスモデル分析のノウハウを伝える本ではありません。
同じ業種の「グローバル企業VS日本を代表する企業」
という構図で、各企業のビジネスモデルを比較考察します。
前作では、「ビジネスモデル」という言葉のイメージの違いで、
読者の満足度に差があったことを踏まえて、
本書では、ビジネスモデルの定義から入っています。
ビジネスモデルには、ビジネスのうまくいっている部分に
スポットを当てた「狭い意味でのビジネスモデル」と、
経営者の思想や戦略、製品を含めた収益をあげる活動すべてを
含めた「広い意味でのビジネスモデル」の2種類があります。
本書が採用するのは、「広い意味でのビジネスモデル」。
なぜなら、「狭い意味」では、説明されやすいストーリー部分
だけが強調され、また、同じビジネスモデルでも企業によって
業績が異なるからです。
さて、本書で比較されるのは、次の5組・10企業です。
・AT&T VS ソフトバンク
・ナイキ VS アシックス
・ウォルマート VS イオン
・イケア VS ニトリ
・バークシャー・ハサウェイ VS ライフネット生命
各組を企業を沿革と経営理念、主要な数字、ビジネスモデル分析、
経営戦略と注目ポイント、決算書分析の5つの切り口で比較し、
最後に分析で使用した資料が掲載されています。
望月さんを含め3名の公認会計士の方が書いた本ですが、
内容は決算書などの財務分析に偏ってはいません。
決算書が苦手な方が、そのパートを読み飛ばしても、
企業の全体像が理解できるように配慮して書かれています。
本書はグローバル企業と比べて、日本企業に何が足りないかを
探ることもテーマですが、なかなかどうして、
決して日本企業も負けてはないという印象でした。
規模の面では敵わなくても、局所的な戦いにおいては、
日本企業の方が優れているところが多々あります。
ただし、それらを統合する力がグローバル企業と比べると、
足りないように感じました。
グローバル企業の持つ統合力は、世界中からの優れた人材や文化を
取り込んで得た多様性によって培われたのかもしれません。
本書の比較のなかで、最も意外な組み合わせが、
「バークシャー・ハサウェイ VS ライフネット生命」です。
これはウォーレン・バフェットさん率いるバークシャーの
中核事業が保険事業で、どちらの企業も信念の部分で、
純粋さと誠実さが共通するから比較したとのことですが、
ちょっと強引なところがあります。
規模や歴史が圧倒的に違いは勿論ですが、
なによりバークシャーは、保険事業が中心というより、
バフェットさんの株式投資により会社の純資産を増やすのが
メインの会社です。
さすがにこの2社は、比較にならないようにも感じました。
ただし、この比較も含め、本書はストーリーと数字の両方から
ビジネスモデルを解き明かす本なので、
正直、期待以上に読んでいて面白い本でした。

私が本書の比較の中で最も注目したのが、
スポーツメーカーの「ナイキ VS アシックス」です。
ナイキは超有名なプロスポーツ選手を多く起用した
CMでブランド力を強化した、マーケティングに優れた企業。
一方、アシックスはアスリートが求める機能を、
とことんまで追求した職人的気質の強い企業。
あまりにアメリカ的な企業と、あまりに日本的な企業の比較で、
アメリカ文化 VS 日本文化のようにさえ感じました。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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