物理のアタマで考えよう!
![]() | 物理のアタマで考えよう! (ブルーバックス) (2014/02/21) ジョー・ヘルマンス、ウィープケ・ドレンカン 他 商品詳細を見る |
満足度★★★
付箋数:21
エコな乗り物と考えられる「自転車」。
確かに、ガソリンを使いませんし、CO2を排出しませんから
環境にはいいように思えます。
ところで、自転車は何を燃料としているのでしょうか?
言うまでもなく、私たちが筋力を使って自転車のペダルを
踏むので、人間自体が燃料でありエンジンです。
それでは、その効率は高いのでしょうか?
自転車漕ぎは、実は登山とほぼ同じ仕事量。
両者は筋肉を時間的に同じ割合で使っているので、
自転車を漕いでいる時は、約100Wのパワーを
使っていることになります。
次に、考えなくてはならないのは、私たちの筋肉の効率。
自転車を漕ぐときは、重量挙げの筋肉効率よりもずっと良く、
約25%くらいはあるようです。
つまり、約100W÷25%=約400Wのエネルギー消費量です。
これは他の乗り物と比べて、効率は良いのでしょうか?
石油1リットルに含まれるエネルギーは約35MJ。
これは、400Wを1日ずっと使い続けた場合に相当します。
もし休むことなく自転車を24時間漕ぎ続けたとすると、
そのために必要なエネルギーは石油1リットル分ということです。
自転車の速度を時速20Kmとすると、20×24=480Km。
言い換えると、サイクリングでは1リットルの石油で
480Km走行できることになります。
この数字は車やバイクの燃費と比べてると、
ずいぶんいい数字です。
それでは、エネルギー節約のために、
みんなが自転車に乗るべきなのでしょうか?
ここまでで、実は大事なことを考慮し忘れています。
それは、私たちのエネルギー源は、石油やガソリンではなく、
食料だということです。
私たちが食べる食料は、そこに含まれるエネルギー量から
想像するよりも、ずっと多くのエネルギーを使って
食卓に届けられています。
コップ1杯の牛乳には石油約0.1リットル分、
チーズ1Kgには石油約1リットル分ものエネルギーが使われています。
「結論、自転車にのることは楽しいことです。
健康的でもあります。体形維持にも役立ちます。
それにスリムになりたいという思いが省エネルギーにも
つながります。
それ以外の点では ― 自転車好きとしては認めたくないのですが
― エネルギー効率の点でミニバイクにゆっくり乗るより
勝るものはありません。」
本書はこのような日常の疑問を物理で考えるコラム集。
オランダのライデン大学名誉教授、ジョー・ヘルマンスさんが
ヨーロッパ物理学連合の会誌『Europhysics News』に
10年にも渡って連載したコラムから、
人気の高かった37のテーマを厳選してまとめたもの。
・効率よく歩くにはどうしたらいい?
・飛行機はなぜ飛ぶ?
・サウナの石に水をかけるとなぜ暑くなる?
・電子レンジはおもしろい
・アヒルの航跡はなぜV形なのか?
「日常生活の物理」で興味を引くテーマが満載です。
また、訳者の村岡克紀さんの訳注と解説が
かなり充実しています。
紙面の1/3ぐらいが解説で、計算根拠もかなりの部分を
村岡さんが示してくれています。

日没の時、太陽はどこにあるのか?
日没直前で、太陽がまだ見えている時に、
本当はすでに地平線の下に隠れていることがあるようです。
これは光の伝播速度の問題ではなく、光の屈折によるもの。
気圧の効果で、太陽光線は地球の曲に沿って曲がるので、
日没直後でも太陽が見えるようです。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
- 関連記事
-
- 宇宙飛行士の仕事力 (2014/04/19)
- 物理のアタマで考えよう! (2014/04/04)
- 動的平衡ダイアローグ (2014/03/21)
ツイート

| 科学・生活 | 06:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑
宮本剛志(06/01)
数学音痴(05/06)
てんぐ(02/25)
ssigee(11/15)
アバン(08/24)
松山淳(07/27)
前田めぐる(05/06)