文系のためのエネルギー入門
![]() | バークレー白熱教室講義録 文系のためのエネルギー入門 (2013/12/19) リチャード・A・ムラー 商品詳細を見る |
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ある女性が両親と共に、核融合を研究している物理学者を
招いて食事をしていました。
彼女は核融合について多少の知識はありましたが、
もちろん専門家ではありません。
食事をしながら、その研究者が核融合のすばらしさや
将来性を語るのを聞き、みんなとても感心しました。
そのあと、彼女はかつてある授業で学んだ内容を思い出し、
こう言いました。
「太陽光発電にも期待できますよね」
すると、その研究者は笑い出しました。
彼は笑いながらこう言いました。
「カリフォルニアのエネルギーを太陽光だけでまかなうには、
州全体をソーラーパネルで覆わなければならない」
それを聞いて彼女は反論しました。
「いいえ。太陽光には1平方キロメートルあたり1ギガワットの
エネルギーがあります。カリフォルニア全体で使う電力は
40ギガワットですから、それほどの面積は必要ないはずです」
彼女が返答を待っていると、研究者から笑顔が消えました。
この女性がかつて受けたのは、カリフォルニア大学
バークレー校の物理学教授リチャード・A・ムラーさんの授業です。
ムラーさんは、学生投票でベスト講義に選ばれる名物教授で、
その授業はNHKのEテレ「バークレー白熱教室」として放送されました。
本書は2012年9月に同校で行われた5回の講義、
「大統領を目指す君のためのサイエンス」を書籍化したもの。
第1回 エネルギー 君なら何を選ぶ?
第2回 クリーンエネルギーを検証する
第3回 地球温暖化の真実
第4回 原子力を知る
第5回 エネルギーの未来 大統領に提言せよ
講義は、エネルギー問題にまつわる主な論点網羅し、
従来の燃料や代替エネルギー、原子力、シェールガス、
核兵器、気候変動などを取り上げています。
もちろん、東日本大震災での福島第一原子力発電事故と、
その後の日本のエネルギー問題についても、言及しています。
「こんにちは。特別講義に参加してくれてありがとう。
これから5回の講義を行なう。その内容は、将来、
大統領になる人や世界を引っ張っていく人、あるいは彼らに
投票する人には必ず知っておいてほしいことなんだ。(中略)
もし君たちが将来、大統領を目指しとしたら、
物理学者になっている暇はない。
だが、どこに答えがあるか知っている必要がある。
話をすべて聞かなくても、理解できなければいけない。」
冒頭の核融合の専門家を黙らせてしまった女性のように、
何が重要かを理解し、その基準となる数字をある程度
覚えておくことが必要だとムラーさんは言います。
エネルギー問題については、政治的立場や利害関係で
議論されることがありますが、本書では物理学の視点から
考察します。
世の中で言われていることで、何が真実で何がデマなのか、
代替エネルギーの問題点やデメリットは何なのか、
物理学を専攻していない学生にもわかるように、
本書ではわかりやすく講義されています。

日米のカロリー表記の違い
日本で食べもののカロリーの単位は「キロカロリー」を使います。
例えば、「ごはん1膳220kcal」という表記です。
一方、アメリカでは単位に「カロリー」を使います。
しかし、「ごはん1膳220000cal」と表すのではなく、
「ごはん1膳220Cal」と表します。
実は、小文字「c」のカロリーが1000集まると
大文字「C」になると考え、1000cal=1kcal=1Cal
となるようです。
私はずっと、米国の食品は表記の間違いをしていると
思っていました。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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