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ウォール街の物理学者

2014年01月29日
マネー一般 0
ウォール街の物理学者ウォール街の物理学者
(2013/09/05)
ジェイムズ・オーウェン・ウェザーオール

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満足度★★★★
付箋数:23

あなたは、世界一のファンドマネージャーが誰か知っていますか?

ファンドマネージャーというより、投資家と呼ばれることの多い
ウォーレン・バフェットさんではありません。

バフェットさんの率いるバークシャー・ハサウェイの
1967年から2010年までの平均リターンは20%程度で、
これも素晴らしい結果ですが、これ以上の年平均40%近い
リターンを挙げ続けるファンドがあります。

ジョージ・ソロスさんやジム・ロジャーズさんでもありません。

この2人の立ち上げたクォンタム・ファンドは、
1988年から1998年までの10年間で見ると、
1700%以上のリターンがありましたが、その成績は世界で2番め。

クォンタム・ファンドを大きく引き離し、
2500%近い収益を挙げたファンドマネージャーいるのです。

2000年から2009年の10年間、米モーニングスター社の
最優秀債券マネージャー賞を受賞した
債券王と呼ばれるビル・グロスさんでもありません。

この世界一のファンドマネージャーは
ジェームズ・シモンズさん。

一般的にはあまり知られた名前ではありませんが、
物理学をやっている人なら、名前を聞いてピンとくる人も
いるかもしれません。

シモンズさんは、チャーン・サイモンズ理論という数式を生み出し、
弦理論の分野に貢献した著名な物理学者です。

そんなシモンズさんが数学者のジェームズ・アックスさんと
立ち上げたヘッジファンド運用会社がルネサンス・テクノロジーズ。

同社はバフェットさんやソロスさん、グロスさんらの
リターンを上回るだけでなく、2008年の金融危機で、
大手の銀行や証券会社が次々と破綻していく中でも
悠々と利益を上げていったのです。

ルネサンス・テクノロジーズは、金融業界の人間はけっして雇わず、
物理学や数学、統計学などを専門とする人だけが集まった投資会社。

世界中のどんな大学よりも優秀な物理学者や数学者が
集まっているとさえ言われます。

彼らは、高度な数学的手法や数理モデルを使って予測モデルを
構築する「クオンツ」と呼ばれる理系トレーダー。

ナシーム・ニコラス・タレブさんからは『ブラック・スワン』で、
こっぴどく批判され、金融危機の戦犯のような扱いをうけた
クオンツですが、彼らは本当に悪者なのでしょうか?

著者のジェイムズ・オーウェン・ウェザーオールさんも
物理学者で、クオンツがそこまで批判されることに
納得できないこともあって、恐らく筆を執ったのでしょう。

本書ではシモンズさんはじめ、ウォール街にやってきた
歴代の物理学者や数学者のエピソードを紹介。

  「この本は、金融の世界に飛び込んでいった
  物理学者たちの物語だ。2008年の金融危機のこともでてくるけれど、
  それは話の一部にすぎない。この本は金融危機を論じる本ではない。
  (中略)僕が書きたいのは、もっと大きなテーマだ。
  クオンツというものがどうやって生まれてきたのか、
  そして現代の金融理論に欠かせないものとなった
   “難解な数理モデル” とはいったい何なのか、
  それを理解する試みだ。」

金融と物理学の出会いが生んだ、スリル溢れるドキュメンタリーです。

同じクオンツたちを主人公にしたノンフィクションでは、
スコット・パタースンさんの『ザ・クオンツ』と比べると
軽めの文体でサラサラと読みやすく感じました。

この本から何を活かすか?

本書の訳者は高橋璃子さん。

非常にスムーズでまったく違和感のない翻訳でした。

高橋さんの翻訳では過去に
ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール
を読んだことがありましたが、その本も良かった記憶があります。

今後は、訳者にも注目して本探しをしたいですね。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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