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ikadoku

ビジネス書・ベストセラー本・科学本を中心に13年以上、ひたすら本を紹介し続けるブログ。既に紹介した本は3700冊以上。

奇跡の職場

2014年01月22日
組織・社内教育・コーチング 1
奇跡の職場 新幹線清掃チームの働く誇り奇跡の職場 新幹線清掃チームの働く誇り
(2013/12/10)
矢部 輝夫

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満足度★★★★
付箋数:23

ようこそ、新幹線劇場へ

本書は、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(テッセイ)の
組織改革の記録です。

テッセイはJR東日本グループに属する会社で、
主な業務は新幹線の「清掃」です。

テッセイの仕事ぶりは遠藤功さんの『新幹線お掃除の天使たち
で紹介され注目を集めました。

駅のホームに到着した新幹線車両が、折り返して
発車するまでの時間はわずか12分。

そこから、乗っていたお客さんの降車時間2分、
次に乗るお客さんの乗車時間3分を引くと、
テッセイに与えられた車内を清掃する時間は、
最大でもわずか7分しかありません。

100席ある1車両を1人のスタッフが担当。
7分間に、車内はもちろんトイレの清掃も行います。

その掃除の速さはCNNの番組で「7 minutes miracle」と
評されたほどです。

しかし、テッセイが注目された本当の理由は、
掃除の速さではありません。

それは、清掃を含めた「おもてなし」のサービスすべてを
自社の提供する商品として再定義したことにあります。

  「 “旅の思いで” これこそが私たちにとっての商品だ!」

だからこそ、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが
見学にくるのです。

ハーバード大学ビジネススクールからも教材にできないかと
注目されているのです。

更には、その仕事ぶりがミュージカルにもなり、
伊坂幸太郎さんの短編小説のモチーフにもなるのです。

韓国の鉄道公社が見学に来た際には、人材開発部長が
テッセイで生き生きと仕事をするスタッフの姿を見て、
次のように語ったそうです。

  「私たちは今まで、清掃の仕事をしている人たちの
  モチベーションを高めることはできないと思っていました。
  だがテッセイの取り組みを見て、それが間違いだということが
  わかった。今後はそのような考え方を拭い去りたいと思います。」

しかし、今はこのように世界から注目されるようになった
テッセイも初めは普通の清掃会社でした。

本書は、JR東日本を定年退職した矢部輝夫さんが、
テッセイの取締役企画部長として再就職してからの
改革の実行者としての実録です。

最初は矢部さん自身も「あんなところへ行くのか・・・」
という思いがあったようです。

矢部さんがトータルサービスを掲げ、「おもてなし」を
提供しようとすると、スタッフからは、
「私たちはお掃除が仕事よ」という抵抗もありました。

それを現場レベルから矢部さんの考えを浸透させ、
1つ1つ変えていったのです。

遠藤さんの『新幹線お掃除の天使たち』は外部からの
レポートですから、テッセイの仕事ぶりや優位性が
客観的にわかるように書かれています。

それに対して本書は、当事者である矢部さんが
筆を執っていますから、1人称で語られ、
どういう想いで改革を行ったかが綴られています。

この本から何を活かすか?

伊坂幸太郎さんの小説になったのは、『エール! (3)
に掲載された「彗星さんたち」というタイトルの短編。

これは実業之日本社から刊行されている文庫本で、
伊坂さんの他、原田マハさん、日明恩さん、森谷明子さんら
による全六編の書き下ろし短篇集です。

新幹線以外にも多彩な職場で働くヒロインたちの奮闘を描く、
お仕事小説のアンソロジーのようですね。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

コメント1件

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ぢゃーぢぃ

はじめまして。

以前、組織改革を行う場に居合わせ、研修のために
他社に行った時のことを思い出しました。

他社では業務終了後に毎日ミーティングを行い
社員の意識を同じにするようにしていて驚きました。

その仕事が何で、何のためにしているのかを
明確にし、社員全員が共有していることが
大事だと痛感しました。

また勉強させて頂きます。
ありがとうございました。

2014年01月22日 (水) 19:58