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ikadoku

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これから誰に売れば儲かるのか

2013年11月23日
マーケティング・営業 0
これから誰に売れば儲かるのか 成長戦略の正しい考え方 (単行本)これから誰に売れば儲かるのか 成長戦略の正しい考え方 (単行本)
(2013/10/10)
吉本 佳生

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満足度★★★
付箋数:23

あなたは、ある町でスポーツクラブA(A社)を経営しています。

シニア層にも、若・中年層にも利用してもらえるサービスを
提供する老舗のスポーツクラブで、町では47%のシェアを占めます。

同じ町内にライバルのスポーツクラブが2社あります。

1社はシニア層限定のB社と、
もう1社は若・中年層限定のC社です。

この20年で、あなたのA社は、それぞれの層において、
B社とC社に徐々にシェアを奪われました。

シニア層向けでは、80%だったシェアがB社に奪われ、
73%に下がりました。

若・中年層向けでも、25%あったシェアがC社に奪われ、
20%に下がりました。

2つの層に分けたシェアでは、シニア層向けでは7%減、
若・中年層向けでは5%減ですから、
いずれの層でもシェアの増減では負けたことになります。

では、もともと47%あった全体のシェアは、
どのように変化したのでしょうか?

この問題、条件にシェアしか示されていませんから、
そこから全体のシェアを計算することはできません。

感覚的にシェアがどれぐらい変化したかを聞いている問題です。

普通に考えると、全体のシェアも5%~7%ぐらい下がっている
という感覚ではないでしょうか。

本書で吉本佳生さんが挙げる例では、驚くべき数字が示されています。

なんと、「47%」だったA社の全体のシェアは、
「57%」に上がっているのです。

全体は2つの層に分かれていて、シニア層、若・中年層いずれでも
シェアを奪われたのに、全体のシェアが10%増え、
市場の過半数を超える、勝ち組企業にになるなんてことが
本当にあるのでしょうか?

ポイントは20年間での、町の「年齢構成」の変化です。

20年前にシニア層は町の人口の4割で、若・中年層は6割でした。

ところが、この20年間で大幅に高齢化が進み、年齢構成比が、
シニア層が7割で、若・中年層が3割へと変化したのです。

シニア層のボリュームが大きく増えたので、
その層のシェアが減っても、実数で増えたので
全体のシェアも増えたということです。

感覚的には納得しづらいので、町民全員がスポーツクラブに
入ると仮定して計算してみましょう。

20年前は、シニア層4割でシェア80%、若・中年層6割で25%なので、
0.4×0.8+0.6×0.25=0.47 なので47%になります。

現在は、、シニア層7割でシェア73%、若・中年層3割で20%なので、
0.7×0.73+0.3×0.20=0.571、つまり57%ということです。

なんとも不思議なシェア動向ですね。

  「ここで証明したかったのは、個別の市場での競争に
  勝つよりも大切なことがあり、それは、自然に成長する市場を
  みきわめて、成長市場の顧客を最重要顧客とみて
  経営することです。」

本書のタイトル「これから誰に売れば儲かるのか」については、
本書の冒頭で結論が出ています。

それは、日本全体が人口減少に向かう中で、
逆行するように人口が増加する層である
「高齢の女性」に売ることです。

特に、高齢の女性は急速に高学歴化が進みます。

そして、高学歴なほど趣味とする分野のデータも
わかっていますから、「誰に何を売ればいいか」までが
本書で示されていることになります。

この本から何を活かすか?

  「いまの日本で、ビッグデータの統計分析ブームに
  安易に乗ってしまっている企業の多くは、
   “偏ったデータに基づく判断ミス” を犯す危険性が高いと
  心配されます。日本の人口変化などの状況を考えれば、
  インターネットなどを通じて集められるビッグデータは、
  いちばん重要な成長市場の顧客データを集めにくいという
  致命的な欠点をもちます。」

まずは、分析する元のデータ自体に偏りがないか
確認すべきという、もっともな指摘ですね。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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