開発チームは、なぜ最強ブランド「瞬足」を生み出せたのか?
![]() | 開発チームは、なぜ最強ブランド「瞬足」を生み出せたのか?―苦境からの大逆転! 子どもの2人に1人が履く奇跡のシューズ誕生物語 (2013/07/12) アキレス株式会社「瞬足」開発チーム 商品詳細を見る |
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現在、小学校か中学校に通う子どもなら、
一度は履いた経験のある靴「瞬足」。
これは国内老舗靴メーカー、アキレス株式会社が生んだ、
近年稀に見る大ヒットの子ども靴シリーズです。
発売されたのが2003年からのシリーズなので、
このタイミングで小学生かその親でなければ、
聞いたことがない靴ブランドなのかもしれません。
しかし、今の小学生の足元を見てみると、
あの子も、その子も、この子も、みんな「瞬足」。
とにかく圧倒的なシェアを誇る、最強のブランドです。
今年、中学に上がった私の娘も、小学時代はずっと瞬足でした。
本書は、奇跡の大ヒットシリーズ、瞬足ブランドの誕生物語。
「すでに瞬足をご存知の方は、この靴に “速く走れる” という
イメージをおもちかもしれません。
ところが実際のところ、瞬足の目的はそこにはありません。
“コーナーを力いっぱい駆け抜けた結果として速く走れる”
という側面はもちろんあります。しかし私たち作り手が
真に目指したのは、 “運動会でよい思い出をつくれる靴” を
子どもたちに提供することだったのです。」
実際のところ瞬足のポジショニングは、
子ども用スポーツシューズではなく、「通学用の外履き」です。
ですから、本当は瞬足よりも、他のスポーツシューズの方が、
速く走る目的には適しているのかもしれません。
瞬足開発チームが探し当てたヒットの要因は、
特定のスポーツに特化したものではなく、
すべての子どもに共通する原体験、「運動会」でした。
「リレーで、転ぶ子って多いよね」
開発チームのメンバーが発した言葉通り、
誰もがコーナーで転ぶ子どもを目にしてきました。
この言葉をきっかけに決まった商品開発のコンセプトが、
「コーナーで転ばない靴」。
小学校のトラック競技はすべて左回りです。
そこに着目して開発されたのが、左回りのコーナーで
グリップする靴、瞬足だったのです。
それは今までの常識を覆す、ソールが「左右非対称」の靴でした。
小学校の運動会は、子どもにとっても親にとっても
ハレの日ですから、そこで「いい思い出を作りたい」というのは
心の奥にある共通の願いだったのです。
「足の速い子はより速く、そうでない子にも夢を」
この開発チームの思いが、子どもにも親にも届き、
瞬足は誰からも愛される最強ブランドに成長したのです。
少子化が進む中で、年間150万足を超えたら大ヒットと言われる
通学用の外履きというジャンルで、
瞬足は600万足を超えるメガヒットとなりました。
アキレス社内には、マーケティング部門はないそうですが、
本書は大成功したマーケティングのケーススタディです。
時代の流れに乗り遅れ、逆風に苦しんでいたメーカーでも、
アプローチ次第で、現状を打破できることを教えてくれる
「プロジェクトX」的な成功物語です。

ライバルから「靴業界を活性化してくれた」と感謝される
圧倒的なシェアを誇る瞬足ですが、そのヒットが少子化の中で
沈滞していた市場にインパクトを与え、
子供靴業界全体をも活性化したそうです。
その証拠に、アキレスのライバル社であるムーンスター社が
販売するバネの力をコンセプトにした「SUPERSTAR」シリーズも
200万足を超えるヒットになっています。
歴史を塗り替えるほどの真のヒット商品は、
ライバル社にも良い影響を与えるということなのでしょう。
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