村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?
![]() | 村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか? ビッグバンからヒッグス粒子へ (朝日新書) (2013/04/12) 村山 斉、高橋真理子 他 商品詳細を見る |
満足度★★★
付箋数:20
科学書としては異例の対ベストセラーになった
2010年9月刊行の『宇宙は何でできているのか』。
本書は、その著者で素粒子物理学者の村山斉さんに、
朝日新聞の科学記者・編集委員の高橋真理子さんが
話題となったヒッグス粒子から最新の宇宙理論までの
解説をインタビュー形式で聞き出す本。
序章 地上最大の実験装置
第1章 ヒッグス粒子に迫る
第2章 光より速いニュートリノの「?」末
第3章 不確定性原理と「科学者の降参」
第4章 宇宙は4%しかわかっていない
第5章 宇宙のはじまりにたどり着く道
私は過去に4冊の村山さんの本を読んでいるので、
その説明のわかりやすさは、ある程度予測できました。
問題は高橋さん。
私は高橋さんについて、あまり詳しく知りませんでしたが、
福島原発事故で東京電力よりのコメントをしていた人という
記憶があるので、あまりよいイメージを持っていませんでした。
しかし、本書では良い意味で裏切られました。
少し心配していた、朝日新聞的なイデオロギーは出ていません。
それどころか、非常にうまく合いの手を入れ、
読者が疑問に思うポイントで質問をして、
村山さんの叡智を巧みに引き出しています。
「朝日新聞の高橋真理子編集委員との対談は楽しくて
あっという間に過ぎてしまった。実は彼女は私の大先輩、
東大物理学科の卒業で、学生時代はノーベル物理学者の
小柴先生に可愛がってもらったのだと言う。
専門的な知識を持ちながら、 “一般の人に少しでも伝わるように”
と、あえて知らないふりをして質問を沢山して下さる様子は、
まさに科学ジャーナリズムの神髄だろう。」
このように、村山さんも感心するぐらい、
高橋さんは絶妙なところで、質問してわかりやすく伝えることに
貢献しています。
また、村山さんの方でも高橋さんの科学記者としての知識を
うまく活用しながらインタビューに答えています。
ヒッグス粒子を発見したとされるセルン(欧州原子核研究機構)
の今後の活動について。
村山さん 「まずは、見つかったものをもっとたくさん
つくらなきゃいけない。そうやってもっと時間を
かけましょうというのが一つ。それから次にやるのは、
エネルギーを上げる。今8TeVあたり。
さあ、難しい言葉がやってきました。解説をどうぞ(笑)」
高橋さん 「テブ(TeV)というのはエネルギーの単位ですね。
エレクトロンボルト。テラは1兆を表す接頭語。
電圧があると電子が走っていくわけですが・・・・」
村山さんは、上手に高橋さんの見せ場も作っていますね。
本書は、高橋さんの質問攻撃により、
過去の村山さんの本とは少し別の角度からの視点も加わり、
宇宙論について理解が深まる本になっています。

「ヒッグスの陰に隠れてしまった感がありますが、
実は物理学の基礎をめぐるもう一つの大きなニュースが
2012年に日本から出てきました。
不確定性原理が書き換えられた、というものです。」
ハイゼンベルクさんの不確定性原理を示す式を
修正する「小澤の不等式」が2003年に発表されていて、
その式が正しいという実験結果が2012年1月に
発表されたんですね。
ノーベル賞学者の式を書き換えたのも日本人で、
その正しさを証明したのも日本人って、すごいことですね。
恥ずかしながら、私はこんな大ニュースがあったことを
知らなかったので、もう少し詳しく調べてみようと思います。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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