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強い力と弱い力

強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)
(2013/01/30)
大栗 博司

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満足度★★★★
付箋数:28

  「人類、やるじゃないか!」

2012年7月4日、CERN(欧州共同原子核研究機構)が
ヒッグス粒子の発見を発表したとき、本書の著者、
大栗博司さんは2つの意味で、この発見に驚き感動しました。

1つは、この実験を支えたCERNの「技術力」の素晴らしさ。

CERNは、世界最大の素粒子物理学研究施設ですから、
その技術力の高さは、素人でも何となくわかります。

もう1つは、「数学の勝利」であったこと。

これは紙と鉛筆だけを使って、人間が頭の中だけで
理論構築したことが証明されたことへの感動です。

自然界にこういう素粒子があれば、論理的には辻褄が合うと
予言されていたことが、正しかったと証明されました。

この2つ目は、私は最初、あまりピンときませんでしたが、
本書を読むことで、大栗さんの興奮がわかるようになりました。

本書は素粒子の「標準模型」の全貌を解説し、
ヒッグス素粒子発見の本当の意義を伝える本です。

マスコミがわかりやすく報道するための例え話として使われる
ヒッグス素粒子「水飴論」が誤りであることを指摘し、
本質的な理解ができるように、わかりやすく解説します。

そのためには、標準模型の理解が不可欠。

この標準模型で主役を務めるのは、
「電磁気力」と「強い力」と「弱い力」の3つの力です。

本書ではこの内、タイトルにもなっている
「強い力」と「弱い力」について
発見の経緯から、
その作用まで順を追って説明します。

ちなみに、「強い力」と「弱い力」は、れっきとした
物理学の専門用語で、英語でも「ストロング・フォース」、
「ウィーク・フォース」とそのまま呼ばれているそうです。

大栗さんの説明は、『重力とは何か』のときも
非常にわかりやすかったのですが、本書ではそれに加え、
まるでミステリー小説のように読者を引き込み、
同時に知的好奇心を刺激します。

素粒子物理学の歴史に名を残した、40名以上の
天才物理学者たちのストーリーやエピソードを挿入し、
非常に魅力的な作品になっています。

標準模型の理論構築の過程で、大きな役割を果たしたのが、
2008年に「自発的対称性の破れ」の発見で、
ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さん。

以前当ブログで紹介した『現代素粒子物語』でも、
南部さんの功績ついて詳しく書かれていましたが、
本書でも1章を割いて紹介されています。

私は、南部さんがノーベル賞を受賞したときに、
何がスゴイのかさっぱり理解できませんでしたが、
それもそのはず。

著名な物理学者でも、南部さんの仕事は
10年先を見通していると感じたようです。

そして実際に南部さんの理論を理解するに10年かかったとか。

マンハッタン計画の指導者だったロバート・オッペンハイマーさん
でさえ、何年も後になってピーター・ヒッグスさんの論文を読んで、
初めて南部さんの言っていることがわかったそうです。

この本から何を活かすか?

大栗さんは、偉大な理論物理学者を3つのタイプに分けています。

1つ目は「賢者型」で、明確な問題設定から始めて、
前提をきちんと指定し、論理を踏まえて進むタイプ。

このタイプの典型はアルベルト・アインシュタインさん。

2つ目は「曲芸師型」で、これまで誰も考えたことない
斬新な視点で問題を捉え、急峻な山々を軽々と登るタイプ。

このタイプの典型はリチャード・ファインマンさん。

3つ目は、「魔術師型」で、時代を超越しているので、
すぐには理解されませんが、自然界の深い真理を究明するタイプ。

このタイプはごく少数で、そのうちの一人が、
南部陽一郎さんのようです。

ちょっと難しいと思って読むのを避けていた
南部さんの著書『クォーク 第2版』に、
そろそろ挑戦してみようと思います。

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