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ikadoku

ビジネス書・ベストセラー本・科学本を中心に13年以上、ひたすら本を紹介し続けるブログ。既に紹介した本は3700冊以上。

ずる

2013年02月04日
経済・行動経済学 0
ずる―嘘とごまかしの行動経済学ずる―嘘とごまかしの行動経済学
(2012/12/07)
ダン アリエリー、Dan Ariely 他

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満足度★★★
付箋数:25

本書は「予想どおりに不合理」、
不合理だからすべてがうまくいく」に続く
ダン・アリエリーさんの3作目の著作。

ニュースなどを賑わす、詐欺行為や企業の不正行為。

これらの「ずるい」行為は、少数の悪人によって行われることで、
私たち一般市民には関係のないことなのでしょうか?

  「はっきり言わせてもらおう。
  あいつらはずるをする。あなたもずるをする。
  そしてそう、わたしもときどきはずるをする。」

アリエリーさんは言います。

不正は、少数の外れ者だけに限った行為ではないので、
誰もが仕事や家庭で「ずる」をしかねない。

だからこそ、不正が起こる本当の仕組みを理解し、
コントロールする必要がある。

アリエリーさんの1作目と同じ頃に刊行された、
ティム・ハーフォードさんの「人は意外に合理的」では、
人は費用便益を考えて、合理的に不正を働くと説明されています。

例えば、違法駐車をする場合、想定される費用と、
(捕まったり、罰金を払ったり、レッカーされることなど)
得られる利益(楽できる、駐車料金を払わない、時間の節約など)
を天秤にかけて、善悪の判断を入れずに意思決定していると。

これを「シンプルな合理的犯罪モデル(SMORC)」と呼びます。

しかし、アリエリーさんは本書で、
不正はもっと複雑な要因で起こっていると仮説を立てます。

それが「つじつま合わせの仮説」。

人には相反する2つの心理が働きます。

1つは、自分を正直で立派な人物だと思いたいという心理。
もう1つは、ごまかしから利益を得て、得をしたいという心理。

私たちは、この2つの心理を認知的柔軟性により、
いいとこ取りをして、うまくバランスを取っていると、
アリエリーさんは説明します。

簡単に言うと、自分のイメージを損なわない、
正当化できる程度のずるなら、「これぐらいならいいだろう」と
倫理の境界線をちょっと動かし、やってしまうようです。

本書では、人の不正行為を説明するには「SMORC」ではなく、
「つじつま合わせの仮説」が有効であることを検証るために、
数々の実験を行っています。

そして、どういった場合に、つじつま合わせの係数が大きくなり、
不品行や不正行為を行なっても、違和感を覚えにくくなるのか。

あるいは、どんな場合に、つじつま合わせの係数が小さくなり、
自分の行為を正当化できなくなって、
不正やごまかしに違和感を持ちやすくなるのかを考察します。

あまり色々な話題を取り上げず、
一冊まるまる「ずる」について深く検証した結果、
不正を防止するために得られた結論は、
けっこう平凡なところに落ち着きます。

ですから、本書のアドバイスを参考にして、
劇的に不正行為が減ることはないでしょう。

私たちが、あまり根拠なくやっている、不正防止対策が、
意外と効果があると実証されたという感じです。

本書は、結論だけを読んで納得するタイプの本ではなく、
仮説を検証するプロセスを楽しむ本だと思います。

この本から何を活かすか?

  「誘惑に抵抗するには大変な努力とエネルギーが必要
  だというのが、自我消耗の基本的な考え方だ。」

つまり、脳が疲れているときは、誘惑に負けやすい。

朝、ダイエットを誓っても、
夜になると、つい食べてしまうのはこのためです。

アリエリーさんのアドバイスは、
誘惑に打ち勝つことにエネルギーを注ぐよりも、
誘惑自体を避けるようにすること。

それが簡単にできれば、苦労しない・・・・

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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この記事を書いた人: ikadoku
毎朝4時に起きて本を読み、13年以上ブログで紹介記事を投稿しています。北海道在住。たまに旅行で長期の休みを取ります。

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