亜玖夢博士の経済入門
亜玖夢博士の経済入門
(2007/11/28)
橘 玲 商品詳細を見る
満足度★★★★
最初に断ってきますが、本書は橘ファンにとっては、
かなり評価の分かれる内容の経済小説です。
「マネーロンダリング」や「永遠の旅行者」のように
入念に現地取材をした、硬派な小説とは異なるテイストです。
また、ゴミ投資家シリーズからのシニカルで
独特の切り口をもった橘ワールドを期待すると、
ちょっと薄味に感じるかもしれません。
しかし、これくらい気軽に橘さんの作品を
読めることに、私は幸せを感じずにいられません。
さて、本書は経済学上の1理論を1話完結でまとめた、
5話からなる経済小説です。
表紙には、なつかしいジャポニカ学習帳っぽい外枠に、
主人公である亜玖夢(あくむ)博士がたたずみます。
「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ」
こんなビラを見た、窮地に追い込まれた人々が、
新宿歌舞伎町裏の亜玖夢研究所へ、相談に来るところから
物語は始まります。
ちなみに、各話の相談者と展開される経済理論は
次のようになっています。
第1話 借金に悩む男:行動経済学
第2話 利権争いをするシャブの売人:囚人のジレンマ
第3話 いじめに遭う小学生:ネットワーク経済学
第4話 マルチ商法の男:社会心理学
第5話 自分探しをする女:ゲーデルの不完全性定理
この形式だと、まだまだ続編も作れそうですし、
ドラマ化もしやすいのではないでしょうか。
つい、勝手な期待をしてしまいます。 この本から何を活かすか?
ただ、橘さんに続編を期待するだけでは、
面白くないので、他にこの小説の題材となりそうな
テーマを予想してみるのはどうでしょうか?
本書は亜玖夢博士の“経済入門”というタイトルですが、
博士はいろいろな分野に精通している設定のようですから、
経済学という範囲にとらわれず、題材を探すほうが賢明です。
例えば、橘さんの大好きな「リバタリアニズム」は
理論ではなく思想ですが、私はこのテーマが続編に
(完全に続編があることを、勝手に前提にしていますが)
盛り込まれることを予想します。
その時は、本のタイトルも
亜玖夢博士の“政治入門”となっているでしょう。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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