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あんぽん 孫正義伝

あんぽん 孫正義伝
あんぽん 孫正義伝

(2012/01/10)
佐野 眞一 商品詳細を見る

満足度★★★★★
付箋数:31

今までに出版されていた、孫正義さんの評伝のレベルが
決して低かった訳ではありません。

しかし、本書はまったく次元が違います。

本書の中で、孫さんの次のような発言があります。

  「親父は僕が小さい頃から、なんでも相談相手にしていましたからね。
  そんな実地教育を受けてきた僕からすれば、
  ハーバードのビジネススクールも東大も、幼稚だし低脳です。」

この言葉を借りれば、大変失礼な言い方ですが、
本書を読んでしまうと、今までの評伝が、
幼稚だし低脳と思えるぐらい、圧倒的な筆力がありました。

さすが、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した佐野眞一さん。

本書に描かれているのは、決して表面から
眺めているいるだけではわからない、孫さんのルーツ。

  「本書で明らかにされた事実は、どんな孫正義論にも書かれていない。
  これらの真実はおそらく孫自身も半分以上は知らなかったはずである。
  人間を描く場合、その人物が絶対に見ることができない
  背中や内臓から描く。それが私の人物論の基本的流儀である。
  いささかの自負を込めて言えば、孫正義をテーマにして
  これまで書かれたどんな本より、本書は百倍は面白いと確信している。」

それでは、なぜ、佐野さんは今まで描かれたことがない
孫さんの評伝を描くことができたのか?

それには3つの理由があります。

1つ目は、圧倒的な取材数。

佐野さんは、孫さんに帝王学叩き込んだ父親への取材は勿論、
現存する孫さんの父方・母方の親族全員、
小学校の担任から留学先の教授、更にはビジネス上の恩師、
そしてルーツを追って韓国にまで取材の足を伸ばしています。

これだけ、丹念にそして広範囲に取材をして裏を取っていますから、
孫さん自身の記憶違いさえ、指摘しているほどです。

2つ目は、インタビューの巧みさ。

まず、佐野さんは取材の相手が喜ぶような手土産を持っていきます。
それは、相手が思わず自分の原点に返ってしまうようなもの。

そして相手の心がオープンになったところで、
なかなか聞けないような、質問で切り込んでいきます。

ですから、いまで明かさなかったホンネをうまく聞き出しています。

そして3つ目は、人物伝の軸が違います。

  「多くの孫正義伝は、ソフトバンクの成功を起点にして、
  いわば帰納的に青年時代の孫の物語を語っている。」

一方、佐野さんは、孫さんの原点となる血の流れを辿り、
いかにして「人間・孫正義」が作られたかを描き出しています。

本書は週刊ポストに2011年1月7日号から3月25日号まで連載した
「あんぽん」第一部と、2011年7月29日号から9月23日号まで連載した
第二部をあわせ、それに大幅に加筆したものです。

素材である孫さんが凄いのは言うまでもありませんが、
書き手である佐野さんの凄さには、それ以上に圧巻されました。

この本から何を活かすか?

私がこれだけ、佐野さんの凄さを感じたのは、
これまで佐野さんの本を数冊しか読んでいないからなのかもしれません。

特に代表作を読んでいないのがイタイ。

  「旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三
  「甘粕正彦 乱心の曠野
  「巨怪伝

まずは、これら佐野さんの主要作品から読んでみたいと思います。

また、最近の作品の「劇薬時評」も気になるところです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book. 
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