勝ち続ける経営

勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
(2011/12/07)
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付箋数:22
かつて、アップルコンピュータジャパンの社長から、
日本マクドナルドの社長に転身して、
「マックからマックへ」と報道された原田泳幸さん。
原田さんが2004年に社長に就任した当時の
日本マクドナルドは、かなりの低迷期でした。
売上高前年比は1997年から7年連続マイナスを記録。
しかし、原田さんが就任後、すぐに改革に着手すると、
今度は売上高が、2004年から7年連続プラスに転じました。
まさに、絵に描いたようなV字回復ですね。
原田さんは、いったいどのような経営改革を行ったのでしょうか?
本書はマクドナルドの7年の経営改革の軌跡。
「本書では具体的に私がこの7年間で“どのような状況で、
何をしたかという話”を詳しく述べていきたいと思います。」
原田さんが社長に就任した当初、管理職や執行役員らは、
低迷の原因を、多店舗展開が急速に進み、
店舗がお互いの客を互いに奪い合った結果と説明していました。
しかし、原田さんが自分で調べ分析したところによると、
原因はもっと単純で違うものでした。
それは、外食産業の基本中の基本である、
クオリティ・サービス・クレンリネス・バリュー(QSC&V)が
提供できていないという事実。
そこで原田さんが行った改革の中で、最も大切にしたことが、
基本に立ち返り、「マクドナルドらしさ」を追求することでした。
「私が就任してから今日まで、売上高は7年連続マイナスから
7年連続プラスになりましたが、このときに行ったことを
ひと言で表すならば、“基本に立ち返れ。基本以外は何もするな”
だったのです。」
確かに、2010年から実施して好評を得ている
Big Americaキャンペーンもいかにもマクドナルドらしい仕掛けですし、
他のファストフード店ではできないことでしょう。
そして、このデフレの8年の中で、したたかに行った6回もの値上げ。
かつての安売り一辺倒だったマクドナルドとは明らかに違う戦略。
値段ではなく、独自性のある価値あるものを提供することへ
方向転換したことが、マクドナルドの更なる成長につながりました。
本書は2010年12月と2011年6月に行われた「AERAビジネスセミナー」が
ベースになっていて、原田さんの講演をまとめたものが約100ページ、
セミナーの質疑応答をまとめたものが約60ページの構成です。
ページ数はそれほど多くありませんが、
マクドナルドの改革において、原田さんが何を考え、どう行動したのかが
余すところなく伝えられています。

「キャッシュ・カウ」は「プレミアムローストコーヒー」
キャッシュ・カウ(Cash Cow)とは、金のなる木。
売れれば売れるほど、会社の儲けになる商品のことです。
マクドナルドでは、コーヒーが売れるほど、
ビッグマックが売れるそうです。
ですから、マクドナルドがコーヒーに力を入れるのは、
あくまでビッグマックを売るための戦略なのです。
2012年2月9日に、マクドナルドは香りとコクを強化した
プレミアムローストコーヒーのリニューアルが、
全店舗で完了したと発表しました。
この発表を受けて株価は12月末の配当落ち後の相場で高値を更新。
マーケット参加者は、コーヒーがマクドナルドの
キャッシュ・カウであることをちゃんと分かっているようです。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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