ソーシャルメディアの夜明け

ソーシャルメディアの夜明け―これからの時代を楽しく生きるためのヒント
(2012/01)
平野 友康 商品詳細を見る
満足度★★★★
付箋数:26
ある朝、平野友康さんは、ベッドの中でごろごろしながら、
なんとなくツイッターを眺めていたそうです。
すると、元マイクロソフト会長の古川享さんの
ツイートに目が留まりました。
「教授のライブ、どうやって中継しようかなぁ」
教授とは、坂本龍一さんのこと。
ライブとは、坂本さんが北米で行うピアノソロ・ツアーのことでした。
このツイートを見た平野さんは勢いでツイートします。
「手伝いたい!」
すると、20分後に古川さんからのツイートが。
「いらっしゃい!」
この返事を受けた時点で、平野さんは初めて坂本さんのツアーが、
明後日、シアトルで行われることを知ります。
更に15分後の古川さんからのツイート。
「明日の夕方のデルタ航空に乗れば本番に間に合うよ~」
そして、平野さんは即座に決意してツイートします。
「行きます!」
しばらくしてから、坂本さん本人からもツイートがありました。
「ひえー!!!いらっしゃい!」
このあまりにも短く、簡単なツイートで、
坂本さんが2010年11月に行う北米ピアノソロ・ツアーを
USTREAMで無料中継することが決まりました。
ちょっとしたノリで始まったことが、大きなプロジェクトとして動き出し、
何十万人もの人に感動を与えることになります。
これこそが、ソーシャルメディアの躍動感。
本書は、平野さんが自らの実体験をもとに、
ソーシャルメディアの可能性を語る本です。
「いつも寄り添っている感じ。それがソーシャル。」
平野さんは、ツイッターのタイムライン上で触れ合うことを、
学校のクラスメイトや隣のクラスの友達のような
距離感だと表現しています。
そして、ブログのように読まれることを意識したり、
番組のような作られたメディアとも違う。
どうでもいいつぶやきの中にこそ、
コミュニケーションの本質があり、
だからこそ寄り添うことができると、平野さんは説明します。
ソーシャルメディアに必要なのは「ラブ度」。
それは、ある物事や事象における愛着の深さと信頼の密度。
パーソナルなメディアだからこそ「ラブ度」を中心に動き、
例え3000人しか集まらなくても、その「ラブ度」の深さによって、
従来のメディアがなし得なかったムーブメントを
起こすことができるようです。
本書の後半では、ソーシャルメディアの話しにとどまらず、
モノづくりや閃きのヒントなどが語られていました。
平野さんは、非常に「語る力」のある方なので、
読んでいて、そのワクワク感が伝わります。
誰もがこれから始まるソーシャルメディアの夜明けを
一緒に体験したくなる本です。

「課金ポイントを後ろにズラす」+ソーシャル
冒頭の坂本さんのピアノソロ・ツアーの無料中継は、
北米ツアーのものでしたが、その翌年、韓国でのツアーも
USTREAMで無料中継されました。
その時は、ツアーから準備・撤収までをすべて無料配信し、
よかったら思い出としてライブ盤や、イベント関連グッズを
買ってくださいという、ビジネスを展開したそうです。
今までもネット上では、最初に無料で提供し、
後からオプション分は課金するというビジネスモデルがありました。
しかし、そこにソーシャルメディアが絡むことで、
単なるお客さんとしてではなく、
プロジェクトを一緒に作り上げる一体感が生まれているんですね。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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