サムスン栄えて不幸になる韓国経済

サムスン栄えて不幸になる韓国経済
(2011/03/01)
三橋 貴明 商品詳細を見る
満足度★★★
付箋数:30
国際労働機関(ILO)が2010年12月に発表した世界賃金報告書には、
世界各国の「実質賃金」の変動率が掲載されています。
数値が非公表である国を除いて、2009年の実質賃金が
最も下落した先進国はアイスランドで-8.0%した。
さて、アイスランドに次いで、下落幅が大きかった国はどでしょうか?
実は、サムスン電子などが世界的に躍進する「韓国」こそが、
実質賃金下落率-3.3%で、先進国の中で2番目となっているようです。
私も以前に書いた「最強企業のつくり方」記事で、
日本の電機9社(パナ、ソニー、東芝、日立など)の収益が、
サムスン電子1社の収益に遥か遠く及ばないと報道されていることや、
韓国企業の強さについて触れました。
しかし、本書で三橋貴明さんは、
その強さは韓国国民の幸福を犠牲にすることで成り立っていると
説明しています。
本書の目的は、韓国や韓国企業を批判することではありません。
日本は、今後どういう国を目指すべきか?
グローバル化と国内市場の寡占により、
企業収益が拡大している国を目指すのか?
それとも、市場の過当競争で企業収益が拡大しにくい国を目指すのか?
各メディアでは、前者を目指すべきとの論調が強いようですが、
三橋さんは後者を目指すべきと、本書で主張しています。
「日本のマスコミには“韓国に学べ”などど主張する人が少なくない。
実は、筆者もその意見に大賛成である。日本は韓国に学ぶべきだ。
お手本ではなく、反面教師として。
今後の日本の経済モデルを構築するに際し、
韓国の現在のモデルは本当に参考になる。
何しろ、日本は韓国の逆を目指せばいいわけだ。」
確かに、サムスンなのどの企業が世界的に活躍することは、
韓国国民にとって、誇りに思えることだと思います。
しかし、それが国内での雇用や投資につながらず、
単に富が偏在しているだけなら、サムスンに勤める以外の人にとっては、
不幸な事実なのかもしれませんね。
本書は、他の三橋さんの著書同様、
しっかりした数値データを元にした主張が述べられ、
イメージに流されない視点を私たちに与えてくれます。

「リカードの比較優位論」は時代遅れ?
昨日紹介した野口悠紀雄さんの本では、
デヴィッド・リカードさんの比較優位論が、
「モデル思考」の例として採り上げられていましたが、
本書ではこの理論について、次のように説明されてました。
「この比較優位論は“物が世界的に生産されればされるほど、
国民の幸福が高まる”という前提のもとで成立しているということだ。
“世界的に物の生産が増えても国民の幸福は高まらない”
という環境下では、全く無意味になってしまう。」
ある理論を考えるときに、その論理構成の正しさはもちろんですが、
三橋さんが指摘するように、成立するための「前提条件」を
見落としてはいけませんね。
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