残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
(2010/09/28)
橘玲 商品詳細を見る
満足度★★★
付箋数:36
「この本は、自己啓発のイデオロギーへの違和感から生まれた。」
「やればできる」という自己啓発系の教えに対し、
「やってもできない(ことも多々ある)」という事実を突きつけ、
進化と幸福をめぐる風変わりな旅にいざなう本書。
コアなファンの多い、橘玲さんの新作です。
ひとつひとつの話しは相変わらず面白い、けど・・・
というのが正直な感想です。
橘さんの違和感から生まれた本を読んで、
逆に違和感を持つ人も多いかもしれません。
「マネーロンダリング」を期待して読んだら
「亜玖夢博士」だったという感じでしょうか。
それは、「はじめに」で提示された結論に、
うまく話しが収束していっていないからかもしれません。
広げた風呂敷がうまく畳まれないというのはよくある話ですが、
シニカルな視点を好む橘さんのファンが、
それを無批判に許容できるとも思えません。
ちなみに、本書の結論とは次の2つ。
・伽藍を捨ててバザールへ向かえ
・恐竜の尻尾のなかに頭を探せ
この謎めいた2つの結論について、ここで詳しく解説してしまうと、
本書を読む楽しみがなくなってしまうのであえて書きませんが、
伽藍とバザールについては「The Cathedral and the Bazaar」が
元ネタのようですね。
最終的に橘さんは、私たちは「評判社会」の中で
生きていくしかないとし、「貧乏はお金持ち」で解説していた
フリーエージェントとマイクロ法人の話しにつなげていきます。
フリー経済が生んだ、「お金」よりも「評価」が価値を持つ時代。
それはまるで、価値あるサイトからの被リンクによって
重要度を決めるグーグルのアルゴリズム「PageRank」のようです。
こう考えると、橘さんは「評判をめぐるゲームに序列はない」と
言っていますが、評価に序列をつけることこそがフリー経済での
富の源泉となるような気がします。

本書の中で、橘さんがタイムシェア方式の
リゾート・コンドミニアムの説明会に参加した話しがありました。
チャルディーニさんの「影響力の武器」の見本のような
マーケティング手法と、橘さんは評しています。
私の周りにも、この販売手法にのって
タイムシェアの権利を買った友人がいます。
割高な買い物をした友人に対して、その投資判断は
経済合理的でないと告げても意味がありません。
人は誰でも、自分の行った投資判断が
肯定されるような情報にしか耳を貸しませんから。
次のタイムシェア物件の購入を検討しているこの友人に対し、
せいぜい私ができることは、「影響力の武器」か本書を
何も言わず、プレゼントすることでしょうか。
Miss a meal if you have to, but don't miss a book.
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