活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


2017年05月 | ARCHIVE-SELECT | 2017年07月

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数学的コミュニケーション入門

満足度★★★★
付箋数:25

ビジネスパーソンにとって、最も大切な能力の
1つは「コミュニケーション能力」です。

では、コミュニケーション能力はどのように
鍛えることができるのでしょうか?

その1つの方法が「数学的」になることです。

例えば、あなたが営業マンだったとしましょう。

訪問先でお客様が、突然、次のような質問を
してきました。

  「このオプションAとオプションBをつけて、
  さらに弊社向けに若干のカスタマイズをして、
  3ヶ月後に納品いただくとしたら、
  どれくらいの見積もりになりますか?」

あなたのリアクションは次のどちらでしょうか。

  1.「ちょっとわかりかねます。
   社に持ち帰らせていただけますか」

  2.「正確な金額は後日提示するとして、
   ざっくり1000万円くらいでしょうか」

この2つのリアクションのうち、
「数学的」な回答は2番目です。

それは、ざっくりした概算を示すことで
「定量化」しているからです。

「数学的」と聞くと、正確に計算しなくては
ならないとと考えがちですが、ビジネス上の
コミュニケーションでは、目安となる
ざっくり概算が必要なシーンも多いのです。

この見積もりを依頼したお客様の場合も、
そもそも予算から大きく外れているなら、
商談にさえならないと考えているはずです。

概算でも構わないので、まずどれくらいの
規模感なのかを知りたいことが多いのです。

数学的コミュニケーションができない人は、
この定量化が苦手。

  「駅前に新しくできたレストラン。
  大行列ができていたよ!」

日常会話のなかでも、このように聞くと、
「大行列って、一体どれくらい?」と
具体的にイメージできる基準を
知りたくなるものです。

これがビジネスでの会話なら、
なるべく相手には「どのくらい?」と
思わせないようにしたいものです。

定量化がうまい人は、最初に「定義」から
始めます。

この定義をきちんとやっておかないと
コミュニケーションに齟齬が生じます。

そして、定量化して「比べる」ことで、
判断をしていくのです。

本書の著者、深沢真太郎さんは、
数学がコミュニケーションを劇的に変える
切り札になると考えています。

  「まず伝えるための数字をつくり、
  伝わりやすくなるようにグラフを用意し、
  納得してもらえるよう伝え方を考え、
  簡潔にわかりやすく伝える。
  このプロセスを数学的に進めることで、
  コミュニケーションの質を飛躍的に
  高めるのです。」

これからは文系のビジネスパーソンに
とっても数学的スキルが必要なのです。

 第1章 数字の作り方
 ―「なるほど」と言わせる「定量化」の技術

 第2章 グラフの使い方
 ―資料を「一目瞭然」にする技術

 第3章 論理的なシナリオのつくり方
 ―成功するプレゼンの準備術

 第4章 数学的な話し方
 ―わかりやすく説明する技術

ちなみに、本書の電子書籍版(Kindle版)
には限定特典として「伝わる文章の書き方」
が収録されていつのでお得です。

当ブログでは先日、深沢さんの
数学的に考える力をつける本』を
紹介したばかりです。

この本は、本書の第4章の部分を深掘りした
本と言えます。

私は先に『数学的に考える力をつける本
を読みましたが、コミュニケーションの
質を上げる全体像を掴むためには、
本書を先に読んだ方がいいと思います。

コミュニケーションが感覚的になりがちな
方には、いずれの本もオススメできます。

この本から何を活かすか?

大人数にプレゼンテーションする場合は、
全員に同じ程度、「なるほど」と思わせる
ことはできません。

プレゼンの原則は、「特定の1人」を
「なるほど」と納得させること。

つまり相手を明確に「定義」することが
伝える秘訣です。

ですから人気のあるセミナー講師は、
その日のターゲットを1人決めてから、
話を始めるそうです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| コミュニケーション | 08:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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バッタを倒しにアフリカへ

満足度★★★★
付箋数:24

最近は、滅多に使われることが
なくなりましたが、「末は博士か大臣か」
という言葉がありました。

将来有望な子供や若者に対して、
かつては、こう言ったものでした。

しかし、「大臣」は昔とそれほど
変わりませんが、「博士」を取り巻く環境は
大きく変わりました。

  「苦労の末に手にした博士号は、
  修羅への道の片道切符だった。」

学位としての博士号は、大学を4年で卒業し、
修士過程を2年、博士課程を3年と、
浪人・留年せずにストレートに進むと、
最短27歳で取得できます。

しかし、大変なのはそこから先です。
いわゆる「ポスドク」問題があります。

これは、博士号の取得後、期間の限られた
研究に従事する博士研究員が増えて、
大学の教員にもなれず、企業へも就職
できないという問題です。

最近言われる「高学歴ワーキングプア」が
まさにこの状態です。

しかも、専門が「バッタの研究」だったら、
日本で職を得るのが難しいことは、
誰でも容易に想像がつくことでしょう。

  「博士になったからといって、自動的に
  給料はもらえない。新米博士たちを
  待ち受けるのは命懸けのイス取りゲーム
  だった。イス、すなわち正規のポジション
  を獲得できると定年退職まで安定して
  給料をもらいながら研究を続けられる。
  だが、イスを獲得できるのはほんの
  一握りどころか、わずか一摘みの博士だけ。
  夢の裏側に潜んでいるのは熾烈な競争だった。」

本書は、そんな熾烈な競争に晒されながら、
バッタの研究を続ける様子を綴る
科学冒険「就職」ノンフィクションです。

著者の前野 ウルド 浩太郎さんは、
バッタ博士で、本書を出版した時点での
研究上の立場は、任期付研究員。

5年間で成果が上がらなければ無収入に陥る
まだまだ予断が許されない状況です。

本書は、そんな前野さんがバッタの研究で、
西アフリカの国、モーリタニアで奮闘しながら、
ポスドクの悲哀と就活の様子を綴ります。

これが、抜群に面白い。

前野さんが子供の頃からの夢は
「バッタに食べられたい」でした。

果たして、モーリタニアでその夢は叶うのか。

  「バッタが大発生することで定評のある
  モーリタニアだったが、建国以来最悪の
  大干ばつに見舞われ、バッタが忽然と姿を
  消してしまった。人生を賭けてわざわざ
  アフリカまで来たのに、肝心のバッタが
  いないという地味な不幸が待っていた。
  不幸は続き、さしたる成果をあげることなく
  無収入に陥った。なけなしの貯金を切り崩して
  アフリカに居座り、バッタの大群に相まみえる
  日がくるまで耐え忍ぶ日々。バッタのせいで
  蝕まれていく時間と財産、そして精神。
  貯金はもってあと1年。全てがバッタに
  喰われる前に、望みを次に繋げることが
  できるだろうか。」

ちなみに、前野さんの名前に入っている
「ウルド」は、モーリタニアでの研究活動が
認められて授かったミドルネーム。

「誰それの子孫」という意味で、現地では
最高に尊敬されるミドルネームのようです。

本書は冒険要素をふんだんに含み、
読む者をワクワクさせます。

前野さんの文才と、特殊なフィールドワーク
があれば、本を出すにはネタが尽きない
ように思えました。

仮に前野さんが研究者としての終身雇用が
得られなくても、十分やっていけそうな
バイタリティーとキャラクターの濃さが
あります。

むしろ、安定な立場を得ると今の面白さが
なくなってしまうような気がしますね。

この本から何を活かすか?

モーリタニアでは、モハメッドという名前が
圧倒的に多いようです。

  「日本の苗字トップ3に君臨する佐藤、鈴木、
  高橋の比ではなく、驚愕のモハメッド率の
  高さだった。研究所内だけではない。
  出会う人がことごとくモハメッドだった。」

そんな誰もがモハメッドの状態を、
一体、どのように区別しているのか?

これを現地では、「コックのモハメッド」、
「門番のモハメッド」、「大きなモハメッド」、
「小さなモハメッド」と職業や体格と結びつけ
区別しているようです。

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| 科学・生活 | 06:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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記事投稿回数変更のお知らせ(6/19~7/31)

いつも当グログを訪問いただき、
誠にありがとうございます。

6/19~7/31までの約1ヶ月半の期間、
記事を更新する回数および曜日を
変更させていただきます。

現状、1週間に6冊、月~土まで毎日
1冊の本を紹介しておりますが、
諸事情があって、この期間は、
週に2冊、土日のみの紹介とさせて
いただきます。

また、7/29、7/30は記事の更新を
休ませていただきます。

8月になりましたら、今でのペースで
記事を更新いたしますので、
何卒よろしくお願いいたします。

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| お知らせ | 04:34 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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「伝わらない」がなくなる 数学的に考える力をつける本

満足度★★★★
付箋数:25

「数学」とは、何をする学問でしょうか?

学生の頃に、数学でイヤな思いをした方は、
「数学=計算」というイメージが思い浮かぶ
かもしれません。

しかし、数学の本質は「計算」ではありません。

なぜなら、計算することを学ぶだけなら、
電卓やエクセルの使い方だけ知っていれば、
事足りてしまうからです。

計算は、あくまで数学をするための
「道具」の1つに過ぎません。

  「数学とは、コトバの使い方を学ぶ学問」

これが、本書の著者、深沢真太郎さんの
数学についての定義です。

「コトバを学ぶのは国語じゃないの?」
と思った方も多いでしょう。

それも、正しい見方の1つです。

しかし、数学の本質もコトバにあるのです。

もう少し詳しい言い方をすると、
「数学=論理的なコトバを使う学問」
ということになります。

ですから、大人になってから数学を学び直す
には、数字も計算もいりません。

そのかわり、日常生活で使うコトバを
変えればいいのです。

深沢さんは、本書で論理的な表現をする
コトバのことを「数学コトバ」と
名付けました。

数学コトバとは、次のようなコトバです。

 ・「定義する」(定義)
 ・「言い換えると」「裏を返せば」(変換)
 ・「しかし」「一方で」(対立)
 ・「かつ」「または」「少なくとも」(条件)
 ・「だから」「ゆえに」等(因果)
 ・「仮に」(仮定)
 ・「たとえば」(比喩)
 ・「以上より」「つまり」(結論)
 ※(  )内はそのコトバが持つ「機能」

数学コトバを使うと人生が変わると
深沢さんは言い、それを数学的に証明します。

 「数学コトバを使いましょう」
   ↓ なぜなら
 「ものごとの構造を把握する能力が高まる」
 「1%の矛盾もなく論証する技術が身につく」
 「わかりやすく簡潔な説明ができるようになる」
   ↓ すなわち
 「人生の勝負どころで “うまくいく” 」
   ↓ 言い換えると
 「あなたの人生が “うまくいく” 」
   ↓ つまり
 「数学コトバはあなたの人生を変える」

ただし、数学コトバを使って考えを
整理しますが、実際に人に伝える場合には、
「できるだけ口から発しない」ようにします。

数学コトバは、わかりやすく伝えるために、
きわめて重要な役割を果たしますが、
数学コトバ自体を口に出すかどうかは
別問題です。

あまり、数学コトバが頻繁に口から発せられると
「くどい」とか「理屈っぽい」という印象を
与えてしまいます。

ですから、実際に人に伝える場合には、
「短文」にして、数学コトバの部分を「間」に
置き替えて伝えた方が、聞きやすく、
伝わりやすくなるのです。

できるだけ不必要なコトバは削除して、
「短く話す」ことも数学の重要なルール。

本書は、数学的理論や複雑な計算は、
一切出てこない、従来の数学の本の概念を
覆す本です。

本書自体も、論理的に書かれているので、
読んでいて、非常に腹落ちします。

また、無駄なコトバもないので、
スイスイ読み進めることができます。

数学コトバを使って思考すると、
ものごとの「本質」が見極められると
実感できる本だと思います。

この本から何を活かすか?

数学者はヘンタイであると深沢さんは言います。
それは、次のような考えがあるからです。

  「数学とは、実はエロティックな学問だと。
  問題の構造を把握するとは、問題を丸裸に
  していく作業です。最初は服を着ている相手の
  服を1枚ずつ脱がしていくイメージです。
  丸裸にできたということは、相手を完全に
  征服したことと同義。その快感が病みつきに
  なり、もっと別の問題も丸裸にし、
  征服したい願望にかられる。これが数学を
  好きになる人の思考回路だと思います。」

私も今度から、「数学が好き」と聞いたら、
その人をヘンタイなんだなというイメージで
見てしまいそうです。

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| 数学 | 06:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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データ分析の力 因果関係に迫る思考法

満足度★★★★
付箋数:26

あなたは、アイスクリームを売る企業の
マーケティング部に所属しています。

ある年、今まで使っていなかったWEB広告を
掲載してみると、前年に比べてアイスクリーム
の売上が40%上昇しました。

この結果から、WEB広告を出したことにより、
アイスクリームの売上が増えたと言うことが
できるでしょうか?

このように、ある要素(X)が結果(Y)に
影響を与えることを「因果関係」と言います。

ここで聞いているのは、WEB広告と売上に
因果関係があるかどうかです。

もし、WEB広告を出した年の夏が、前年に比べ
猛暑だったとしたらどうでしょうか。

WEB広告の影響ではなく、単に気温が上がった
ために売上が増えたのかもしれません。

また、前年が世界的な金融危機で消費全体が
冷え込み、WEB広告を打った年がたまたま
経済全体が回復傾向にあったとしたら、
その影響を受けているかもしれません。

本当は猛暑や経済回復の影響を大きく
受けているにも関わらず、WEB広告の効果が
あったと結論づけてしまうと、ビジネス上の
判断誤りを招く可能性があります。

因果関係を立証するのは、意外と難しいものです。

それは、他の要因が影響していたり、
逆の因果関係である可能性があるからです。

では、どうしたら因果関係があるかどうかを
見極めることができるのでしょうか?

その最良の方法は、RCT(ランダム化比較試験)
と呼ばれる方法です。

ビジネスの世界ではABテストと呼ばれています。

RCTでは、介入グループと比較グループの
2つに分けて、結果を比較します。

このとき、RCTを行う上では絶対に欠かせない
3つ条件があります。

 鉄則1. 分析で明らかにしたい因果関係を
    測定できるような適切なグループを作る。
    比較グループを設けることは不可欠。

 鉄則2. グループ分けはランダムに行う。

 鉄則3. 各グループに十分なサンプル数を充てる。

これらの鉄則を守ってRCTを実施すると、
分析や結果に透明性があり、分析者以外にも
因果関係があるかどうかについて説得力のある
説明ができるのです。

しかし、このRCTには大きな弱点があります。

それは実施にあたって費用・労力・各機関の
協力がそれなりに必要になることです。

つまり、予算に制約のある実際のビジネスでは、
RCTが実施できない場合も多いのです。

では、RCTが実施できない場合、
どのようにしたら因果関係の有無を
見極められるのでしょうか?

それは、まるで実験が起こったかのような
状況を上手く利用する、「自然実験」と
呼ばれる方法です。

本書で解説されるのは自然実験を代表する
3つの方法、「RDデザイン」、「集積分析」、
「パネル・データ分析」です。

本書では、因果関係を調べるこれらの
データ分析方法について、数式を使わず、
具体例とビジュアルな描写を用いて解説します。

著者はシカゴ大学公共政策大学院ハリススクール
助教授の伊藤公一朗さんです。

新書ながらデータ分析の入門書としては
非常に分かりやすく書かれているので
自信を持ってオススメでできる一冊です。

 第1章 なぜデータから因果関係を導くのは
    難しいのか
 第2章 現実の世界で「実際に実験をしてしまう」
    ―ランダム化比較試験(RCT)
 第3章 「境界線」を賢く使うRDデザイン
 第4章 「階段状の変化」を賢く使う集積分析
 第5章 「複数期間のデータ」を生かす
    パネル・データ分析
 第6章 実践編:データ分析をビジネスや
    政策形成に生かすためには?
 第7章 上級編:データ分析の不完全性や
    限界を知る
 第8章 さらに学びたい方のために
    :参考図書の紹介

この本から何を活かすか?

第8章で日本語の入門書として本書の次の
学習書として紹介されていたのがこの4冊です。

 ・『「原因と結果」の経済学
 ・『実証分析のための計量経済学
 ・『計量経済学の第一歩
 ・『実証分析入門

この中でも本書に一番近いレベルの本は、
「原因と結果」の経済学』のようです。

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| 数学 | 06:09 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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超能力微生物

満足度★★★
付箋数:23

  「微生物は神出鬼没の生命体である。
  とうてい考えることのできない不可思議な
  生命体である。人間界では想像できない、
  怪しいほどの生命体である。
  その大体の大きさは、1ミリメートルの
  500分の1、いやそれ以下で1000分の1、
  もっともっと小さくて1万分の1しかないのに、
  とんでもなく強かに生きていて、
  ちょっとやそっとではへこたれない。」

本書は、驚異的な微生物の能力について
解説して、その有効利用についても伝える
本です。

著者は、東京農業大学名誉教授で、
ありとあらゆる微生物および発酵食品を
研究対象とし、世界中の発酵食品を味わい
つくしている小泉武夫さん。

本書で、「超能力微生物」と呼んでいる
微生物は、オカルト的な力が宿っている
ということではありません。

人間を含めた通常の生物では到底
考えられないような、とてつもない力を
秘めている微生物をこう呼んでいます。

では、一体、微生物にはどんな力が
あるのでしょうか?

小泉さんは、本書の「はじめに」で、
その驚くべき3つの力を紹介しています。

まず第1に、気が遠くなるほど長い間、
形や性質を変えないで生き続けている
微生物がいるということ。

今から何十億年も前の地球の創世記に
生まれた古細菌は、今日まで生まれたままの
姿で生き続けています。

第2に、地球上のびっくり仰天するような
ところにまで住んでいるということ。

ジェット機が飛ぶ遥か上空に浮遊していり、
海底水深6500メートルで生息していたり、
南極の極寒でも凍らずにいたり、
ヨルダンの塩湖・死海の中でも平気で
生きていたりする微生物もいます。

第3に、逆境に耐える恐ろしいほどの底力を
持っているということ。

特にスゴいのは、人間の皮膚についたら、
たちまち重度の火傷を負うような濃硫酸の
中でも育成可能なスーパー耐性菌です。

さらには、人間が死に至る放射線の1000倍
以上の殺人光線ともいうべきガンマ線に
耐えうる菌の存在も見つかっています。

小泉さんが本書で主張したかったのは、
これだけ多くの超能力微生物が存在するので、
遺伝子組換えやゲノム編集に頼らなくても、
自然界から人類に役立つ微生物を得られる
ということです。

むしろ古典的なバイオテクノロジーの技術、
発酵や分離によって、効率よく自然由来の
微生物の性質を入手できるのです。

そして、小泉さんはIT革命ならぬ、
「FT革命」が人類を救うと言っています。

FT革命の「F」は発酵(Fermentation)の
頭文字です。

発酵が、人類が直面する「環境」「食料」
「健康」「エネルギー」の問題を解決する
鍵になるという考えです。

小泉さんは15年前からFT革命を提唱して
いますが、実際に実用化が進んでいる
研究もかなりあるようです。

また、本書では小泉さんが食べた、
発酵食品のグルメエピソードも豊富に
紹介され、読者を楽しませてくれます。

この本から何を活かすか?

この地球上で最も珍しい発酵食品は何か?

この質問に、小泉さんは迷わず答えます。

  「それは日本の石川県でつくられるフグの
  卵巣の糠漬けでしょう。世界広しといえども
  全く他に例のない驚くべきもので、
  単独で食の『世界遺産』に登録できる
  ほどのものであります。なにせ、あの猛毒が
  詰まっているフグの卵巣を食べてしまう
  民族など、発酵の知恵者である日本人以外、
  見当たりません。」

微生物の発酵の力を借りて、3〜4年もの
時間をかけて、フグの猛毒を解毒する製法は、
江戸時代から行われているようです。

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| 科学・生活 | 06:09 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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リーダーの教養書


満足度★★★
付箋数:22

なぜ、日本のエリートは、米国のエリートに
勝てないのか?

なぜ、日本のリーダーは、米国のリーダーに
勝てないのか?

NewsPicks編集長の佐々木紀彦さんは、
その理由は両者の「教養の差」にあると考えます。

それも、ちょっとの差ではなく、
量と質の両方で圧倒的な差があると。

ところで、「教養」とは、一体、何なのか?

  「そもそも、教養とは何かというと、
  私は “普遍的な知恵” のことだと思う。
  歴史の風雪や、科学の洗礼をくぐり抜けて
  きた “時代を超えた知” こそが教養と
  言えるだろ。」

一方、経営学者の楠木建さんは、
教養とは何かについて、もともとの意味から
説明します。

教養は、「リベラルアーツ」が明治期に
日本語に翻訳されて定着した日本語です。

直訳すると、「自由の技術」。

  「僕にとって一番しっくりくる教養の
  定義は、人が他者に強制されず、
  自分自身でつくりあげていく独自の
   “価値基準” を持っているということです。」

この「教養=自由の技術」という意味で
考えると「教養がない=奴隷の状態」
ということになります。

ところで、世間で「教養がある」と言うと、
テレビ番組に出ているクイズ王的な
「物知り」のイメージが広がっています。

教養は、いろいろなことを知っていて、
知識の量が人よりあるといった状態を
指すのではありません。

また、役に立つ情報を持っていること
とも違います。

教養があることのメリットはたくさん
ありますが、短期的に恩恵をもたらして
くれるものではないのです。

もっと長い、中長期において、わたしたちの
人生を豊かにしてくれるものなのです。

本書は、NewsPicksと幻冬舎のコラボで
始めた「NewsPicks Book」シリーズの
第一弾の本です。

本書は、教養人が知悉すべき分野を
11選び、それぞれの分野で精力的に
活動する識者が、その分野で読むべき
推薦本を挙げたガイドブックです。

その分野と識者は以下の通りです。

 ・歴史 出口治明さん
 ・経営と教養 楠木建さん
 ・経済学 大竹文雄さん
 ・リーダーシップ 岡島悦子さん
 ・日本近現代史 猪瀬直樹さん
 ・進化生物学 長谷川眞理子さん
 ・コンピュータサイエンス 中嶋聡さん
 ・数学 森田真生さん
 ・医学 大室正志さん
 ・哲学 岡本裕一朗さん
 ・宗教 上田紀行さん

全部で130冊が紹介されているので、
簡単に読み切れるものではありませんが、
地道にコツコツと読んで、普遍的な知恵を
身につけたいものです。

この本から何を活かすか?

私が注目したのは数学の分野で
森田真生さんが推薦した10冊です。

その中でも、次の本を読んでみたいと
思いました。

  『数学記号の誕生
  『無限小 世界を変えた数学の危険思想
  『チューリングの大聖堂
  『素数の音楽
  『岡潔 数学の詩人

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| ビジネス一般・ストーリー | 05:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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イノベーターたちの日本史

満足度★★★★★
付箋数:30

  「本書は、明治から昭和初期にかけての
  日本の近代を、 “創造的対応(creative
  response)” の視点から描こうとしたもの
  である。日本の近代は西欧先進国から
  押し寄せる津波のような外生的挑戦や刺激に、
  いかに創造的に対応していくかという
  歴史だったからである。」

日本人は、創造的(クリエイティブ)でない
と言われる昨今。

本書は日本近代史において、日本の
イノベーターたちが、いかに創造的対応を
見せたのかを検証する本です。

本書で用いられる「創造的対応」という
言葉は、「イノベーションの父」とも
呼ばれるヨゼフ・A・シュンペーターさんが
用いた概念です。

本書に登場するイノベーターは、高島秋帆さん、
大隈重信さん、笠井順八さん、益田孝さん、
三野村利左衛門さん、岩崎弥太郎さん、
高峰譲吉さん、大河内正敏さんの8名です。

彼らが近代日本で繰り広げた創造的対応は、
感心するほど独創的です。

その活躍ぶりは、躍動的で生き生きとして
本書に描かれていて、歴史で習う功績とは、
全く異なる世界が広がっています。

今回、創造的対応という視点から見ること
によって、従来の日本史ではあまり注目されて
こなかった人物も、未来を切り開いた
イノベーターとして紹介されています。

本書の著者は歴史家の米倉誠一郎さん。

本書は、米倉さんが構想40年をかけて
執筆した歴史家としての集大成です。

私が本書で注目したのは「科学者たち」の
創造的対応のパートです。

  「知識をベースに新産業を構築した新興財閥の
  形成史は、本書が考察する “時代の変化を
  機敏に感じ取り、その変化に機械的に反応
  するのではなく、新たな価値を付加する形で
  創造的反応を実現する企業家” 研究にとって、
  うってつけの事例である。なかでも、外す
  ことのできないのが高峰譲吉と大河内正敏が
  創業・発展させた理研コンツェルンである。」

理研コンツェルンは、知識を生み出すことと
それを事業化することにおいて、稀に見る
創造的な組織でした。

理化学研究所を立ち上げた高峰譲吉さんは、
タカジアスターゼとアドレナリンという
大発見をした科学者です。

更にアメリカに渡って創薬開発ベンチャーを
創業して、巨万の富を築き上げた企業家でも
あります。

高峰さんがニューヨークで亡くなった際には、
ニューヨーク大学総長のフィンレー博士が
その葬儀で、一篇の詩を贈ったそうです。

  「極東の騎士、サムライに生まれた彼は
  人類のまことの仇敵と戦うために
  大小二本の刀を科学という武器に変えた
  人生の齢を延し、苦しみを除くために」

もう一人の大河内正敏さんは、科学の研究を
事業に結びつけ、理研をコンツェルン化し、
新興財閥の一角にねじ込んだ立役者です。

組織イノベーションとして研究室制度を
採用し、「科学者の自由な楽園」を作りました。

研究員として在籍して、戦後になって
ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎さんは
理研について次のように述べています。

  「何もよりも良かったことは、そこには
  研究者の自由があったという事実である」

その自由度が科学者の創造性を刺激し、
そこで生まれた発明を理研自ら次々と事業化し、
世にいう理研コンツェルンを形成しました。

コンツェルンは戦前のピーク時には63社、
工場数121にまで達しました。

数々の事業化に成功した理研でしたが、
あくまで「基礎科学の研究が主、発明は従」
という大河内さんの方針が貫けれていました。

本書で描かれているイノベーター達は、
激動する歴史の中で、途方もない創造性を
発揮して難題を突破していきます。

そのストーリーは、私たちをわくわくさせ、
感動を呼びます。

当ブログで2017年に紹介した本は、
6月13日時点で150冊を超えますが、
本書は今年No.1のオススメ本です。

この本から何を活かすか?

理研が初の事業化にこぎつけたのが、
タラの肝油からビタミンAの抽出に成功し、
販売したことでした。

カプセルに入れたビタミンAは、当時、
肺結核の特効薬として爆発的に売れました。

ビタミンAが普及した頃に警視庁から、
「ビタミンA」は学名そのものだから
商品名とするには問題があるとクレームが
ついたそうです。

大河内さんは「それでは」と「理研ビタミン」
に改名して販売を継続しました。

するとそのネーミングがよりわかりやすく、
語呂も良かったので、売れ行きは一層加速
したといいます。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 社会・国家・国際情勢 | 06:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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外資系投資銀行がやっている 最速のExcel

満足度★★★
付箋数:21

エクセルの「速さ」には、2種類あります。

1つは、どのようにデータをまとめるかという
「設計」に関する速さです。

もう1つは、実際にデータを入力して、
表やグラフにまとめるときの「作業」の速さ、
つまり「テクニック」です。

特に、チームでデータを集めて作業する場合は、
いかに「設計」のところを詰めておくかで、
速さに大きな違いが出てきます。

  「エクセル作業に時間がかかる理由のひとつに、
  エクセルテクニックそのものの問題よりも、
  エクセルを使ってやりたいことがイメージ
  できていないままエクセル作業を始めてしまう
  ことが挙げられます。
  具体的には、上司には “なんとなく” 欲しい
  データがあるが、具体的にイメージできて
  おらず、あいまいなままむやみに部下に
  作らせるといったものです。」

そしてテクニックの部分で差が出る要素は、
どれだけマウスを使わずに、ショートカットを
使いこなせるかにあります。

  「実は、エクセルは作業スピードが速い人と
  遅い人で最も差が出るアプリケーションの
  ひとつだと私は考えています。ほとんどの
  エクセル作業はマウスを使わずにキーボード
  (ショートカット)でできるにもかかわらず、
  多くのビジネスパーソンはマウスを使って
  いるからです。」

本書の著者は、以前、外資系投資銀行にて
大型M&Aや資金調達のプロジェクトなどを
担当していた熊野整さんです。

熊野さんが執筆して、2015年に刊行された
外資系投資銀行のエクセル仕事術』は、
以前、当ブログでも紹介しました。

本書では、「設計編」と「テクニック編」の
2つのパートに分けて、エクセルの資料を
速く作る方法を解説します。

実際に熊野さんが投資銀行で使ってきた
ノウハウがすべて詰め込まれています。

「テクニック編」はショートカットの
使い方なので、ここでは「設計編」について
見ておきましょう。

  「エクセル作業をゼロから作るとき、
  スピードを上げるために最も重要なこと。
  それは、エクセルを作成する前に “設計”
  というプロセスを入れることです。」

本書のエクセル作業は、個人で簡潔するもの
ではなく、チームで共同作業することが
前提となっています。

そのため、この「設計」を3つのプロセス
に分け、チームで作成イメージを共有し、
ムダのない最短距離でエクセル作業を行います。

 1. アウトプットのイメージを作る

  エクセルで何を分析したいのかを明確にし、
  比較の対象や分解の粒度を決めます。
  アウトプットのゴールを関係者全員で共有する
  最も重要なステップです。
  このときに、言葉の定義も明確にします。

 2. インプット→アウトプットの設計図を作る

  見たいアウトプットを実現するためには、
  どのようなインプットデータが必要なのかを
  確認する設計図を作ります。
  必要なデータを洗い出し、エクセルシートの
  並び順、共有方法、頻度を明確にします。

 3. ロードマップを作る

  「誰が」「いつまでに」「何を」やればいいか
  責任の所在を明確にします。
  作成したデータは、妥当性を検証して、
  メンバーと協力して最終的な調整を行って
  エクセルを完成させます。

本書では、この3つのプロセスが
図解されてるので、どんなものを作れば
いいかが良くわかります。

個人的に、特に必要だと思ったのは、
「インプット→アウトプットの設計図」です。

これはホワイどボードに手書して、
時間をかけずに作ってもいいようです。

この本から何を活かすか?

収益計画などを作成しているときに
必要となるのが「感応度分析」です。

感応度分析をしておくと、「販売個数が、
◯個まで増えたら、利益はどれくらいまで
増えるのか?」といった質問にも、
すぐに答えられます。

エクセルでは「データ」タブの中にある
「What-If分析」を使うと、感応度分析が
すぐにできるようです。

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| ノウハウ本 | 05:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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なぜ、残業はなくならないのか

満足度★★★
付箋数:22

  「 “日本企業の残業は、なぜなくならないのか”
  あえて空気を読まずに回答しよう。
  その答えは簡単だ。

  残業は、合理的だからだ。
  残業もまた、柔軟な働き方だからだ。
  残業しなければならないように、労働社会が
  設計されているからだ。(中略)

  本書により、日本の “残業” の、憎らしい
  ほどの合理性について理解が深まることを
  期待する。 “働き方改革” なる取り組みが
  この “魔物” とどこまで真剣に向き合うのか、
  問い糾したい。」

本書の著者は、働き方評論家の常見陽平さん。

常見さんは、本書で「残業」の本質を理解し、
いかにこの問題に立ち向かうかを議論し、
政府が進める「働き方改革」の矛盾点を
指摘します。

まず、なぜ残業が「合理的」と言えるか
というと、それは日本の雇用システムや
仕事の任せ方から考えると必然的に発生する
ものだから。

仕事の任せ方は、「仕事に人をつける」方法と
「人に仕事をつける」方法の2つがありますが、
前者が欧米型で、後者が日本型です。

「仕事に人をつける」と業務内容や責任を
明確にすることができます。

仕事が定型化・標準化しやすく、
仕事の引き継ぎもしやすくなります。

一方、「人に仕事をつける」方法では、
ある人に複数の業務が紐付けられることに
なります。

複数の仕事が任せられるがゆえに、
仕事の範囲が広がっていき、仕事の終わりが
見えなくなっていきます。

勿論、この方法にもメリットがあって、
マルチタスク化や多能工化が進み、
それぞれ専任を雇わなくてすみます。

この働き方に残業を加えると、人手不足や
仕事の繁閑に柔軟に対応できるのです。

残業が日本の社会に合った合理的なものなら、
本当に「なくすべきもの」なのでしょうか?

常見さんは、本書で残業の合理性を礼賛する
つもりはなく、次の3つの観点から、
やはり「なくすべきもの」と考えています。

1. 安全衛生管理の問題

 労働時間が長くなると、各種疾病にかかり
 やすくなります。特に人命に関わる面では
 重大で、過労死や精神疾患を防ぐ意味でも
 残業は抑制しなくてはなりません。

2. 労働への参加者を制限する側面

 長時間労働ありきのために、正社員総合職に
 なるためには、それを前提とした働き方を
 しなければなりません。特に育児や介護と
 両立する人の労働への参加を制限する側面が
 あります。

3. ワーク・ライフ・バランス、

 クオリティ・オブ・ライフの問題
 人生は仕事だけではなく、仕事と生活を
 それぞれ充実させる取り組みが必要です。

こうした問題に対して政府が取り組むのが、
「働き方改革」です。

その中で労働時間と賃金を切り離す考え方が
議論され続けてているのが、
「ホワイトカラー・エグゼプション」や
「高度プロフェッショナル制度」です。

これらは「人の定額使い放題」の制度であり、
ますます労働時間の「みえる化」ならぬ、
「みえない化」が進むとも言われています。

常見さんは本書で、様々な角度から
「働き方改革」を検討し、それが茶番になる
可能性を指摘しています。

この本から何を活かすか?

では、政府の施策がダメなら、実際に残業を
減らすには、どのようにしたらいいのか?

常見さんが、働き社会への処方箋として
提案するのが、「トヨタ生産方式」の
ノウハウを働き方改革に活かすことです。

それは、まず状況を把握するために
「はかって」、そこからムリ・ムラ・ムダを
明らかにして、改善プランを考えます。

これはモノづくりの現場だけでなく、
非製造業においても可能であるとの考えを、
常見さんは本書で示しています。

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| 社会・国家・国際情勢 | 06:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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風俗嬢の見えない孤立

満足度★★★
付箋数:21

本書は、風俗嬢の本当の悩み事と
風俗業界の現状を知り、社会問題として、
その解決法を考える本です。

著者は、「夜の世界の課題解決」に取り組む
一般社団法人GrowAsPeople(以下GAP)の
代表理事の角間惇一郎さんです。

角間さんは、大手ゼネコンで建築士として
働いた後、2年間、性風俗店に勤めながら
そこで働く女性の実態調査を調査しました。

その後、GAPを立ち上げて風俗嬢の支援を
始めた方です。

GAPのアンケートによると風俗嬢の平均的な
稼働日数と収入は「12日で40万円」です。

昼の仕事をしている人から見ると、
一見、「楽に稼いでいる」と思われがち。

そんな彼女たちの最大の悩み事は、
昼の世界において、「立場を明かす」必要に
迫られた時です。

風俗で仕事をしていると知られた瞬間、
「なんでそんな仕事をしているんだ」と
非難され、白い目で見られます。

昼の世界の人の間には、「風俗店=ヤクザ」
「風俗嬢=エロい」という強烈な偏見が
あるからです。

角間さんが夜の世界で働いた経験
からすると、実際はそんな危ない世界
ではないそうです。

また、女の子も風俗を始めた理由は、
「なんとなく」が最も多く、本当にお金に
困って始めた人は意外と多くありません。

昼の世界の自分を常識人だと思っている人
からすると、「よく考えずに、そんな所で
働くほうが悪い」と思うかもしれません。

これは風俗嬢の問題を「入口」とする
考え方です。

一方、角間さんは、風俗嬢の本当の問題は
「出口」にあると考えます。

  「仮に “風俗の問題” を “女性が風俗嬢に
  なってしまうこと” そのものだとした場合、
  その対策は “女性を風俗嬢にさせない” 
  一択です。しかし、そのために何をすれば
  いいかと考えると、確実なのは
   “性にまつわるビジネスを完全に消滅
  させる” くらいでしょう。そして、
  これは極端な理想論でしかありません。
  一方、風俗の仕事の問題点を
   “40歳頃には、やめなければいけなく
  なること” であるとすれば、その対策は
  ずっと明確になります。風俗嬢が、
  セカンドキャリアをつくれるような
  仕組みを生み出せばいいのです。」

風俗嬢は一生できる仕事ではありません。

ほとんどの人は、40歳前後までに
引退を余儀なくされます。

しかし、そこで昼の世界に戻ろうとしても、
履歴書に書けるような職歴はなく、
履歴書が真っ白な30~40代の女性を
雇ってくれる職場もあまりないのです。

この「40歳の壁」を境に風俗嬢の孤立が
深まっていきす。

そのためGAPでは風俗嬢がセカンドキャリア
を作るための支援を行っています。

ここで大切なのが、風俗の仕事をすぐに
やめさせずに、時間をかけて昼の世界に
移らせることです。

風俗をすぐにやめて昼の世界に移ると、
結局、その世界に順応できず、
また夜の世界に舞い戻って来る場合が
多いようです。

それは、週に5日8時間ずつ働き、
遅刻は許されず、給料が振り込まれるのは
1ヶ月先で、その報酬は夜の仕事の
数分の一という「昼の仕事の常識」には、
簡単には馴染めないからです。

そこでGAPでは、風俗嬢に対して、
風俗を「生計を立てる手段」から、
「副業」のポジションへスライドさせ、
徐々に昼のリズムへ移行させるように
支援しているようです。

この本から何を活かすか?

風俗で働くことを「自業自得」と言って
しまえばそれまでですが、現実問題として、
風俗嬢の「出口問題」はあります。

私もこれまで風俗を色眼鏡で見ていた
ところがありますが、本書を読んで、
人を見るときに「過去を問わない」
付き合い方も必要だと感じました。

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| 社会・国家・国際情勢 | 06:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座

満足度★★★★
付箋数:25

非常にベタなタイトルですが、本当に人間の
「カラダはすごい」と思える一冊です。

  「私は現在、健診センターに非常勤で勤務する
  かたわら、医療小説を書き、三足目のワラジ
  として福祉系の大学で “医学概論” の講義を
  しています。本書は、その講義ノートの
  一部を読み物ふうにアレンジしたものです。」

本書のようなエピソードが詰め込まれている
講義なら実際に聞いてみたいと思えるほど、
魅力ある内容でした。

とにかく、久坂部羊さんの医療にかかわる
雑学がものすごい。

本職の医師なので、医療の知識が確かである
ことはもちろんですが、映画や小説、著名人
に関わる医学的エピソードの知識が豊富で
まったく飽きさせません。

  「サブタイトルを『モーツアルトとレクター
  博士の医学講座』としたのは、講義中に
  脱線する雑談の中に、モーツアルトや
  『羊たちの沈黙』でおなじみの
  ハンニバル・レクター博士などが
  よく登場するからです。」

では、本書からレクター博士のエピソードを
紹介しましょう。

レクター博士とは、1991年に公開された
アメリカの映画『羊たちの沈黙』の中で
アンソニー・ホプキンスさんが演じた
美食家の天才外科医。

原作はトマス・ハリスさんの同名小説で、
レッド・ドラゴン』、『ハンニバル
ハンニバル・ライジング』でも主人公
として描かれています。

さて、レクター博士は、憎まれ役の
司法省監察次官補をつかまえ、
生きたまま頭蓋骨を切り取り、
露出した脳をスプーンのような器具で
すくい取って食べます。

ヒロインのクラリス捜査官の前で、
次官補を椅子にくくりつけて、
意識がある状態で、脳を食べてしまうのです。

果たして、このようなことが医学的に
可能なのでしょうか?

  「脳の表面には知覚神経がないので、
  すくい取られても痛くありません。
  ですから、小説にある通り、頭蓋骨を
  切断するときだけ曲部麻酔をかけておけば、
  あとは問題なくできるでしょう。」

実際に久坂部さんは、脳外科医が
脳の前頭葉の半分ほどを切除して、
そこから腫瘍をより分けているのを
生で見たことがあるそうです。

その様子を、次のように描写していますから、
レクター博士の脳を食べるシーンも
よりリアルに感じたのだと思います。

  「それは茶碗蒸しの中からぎんなんを
  取り出しているようでした。
  脳は固めの豆腐かフグの白子のようなので、
  指で押さえれば簡単につぶれるのです。」

これはかなり特殊なエピソードですが、
本書には日常生活に関わるような
医学知識も豊富に紹介されています。

 ・アルコールを飲むとトイレに行きたくなるわけ
 ・しゃっくりの止め方
 ・慢性便秘が起こるわけ
 ・血圧が高いとなぜ悪いのか
 ・長期保証のないレーシック

本書を読むと、世間でまことしやかに
噂されている医学知識があまり根拠のない
ことがよくわかります。

また、本書の医学知識は単に雑学だけでなく、
日常生活にも生かすこともできるでしょう。

ちなみに本書は、久坂部さんが2012年に
出版した『モーツアルトとレクター博士の
医学講座』の内容を一部アップデートした
新書版です。

この本から何を活かすか?

私は、本書で久坂部さんを初めて知りましたが、
かなり面白かったので、久坂部さん医療小説も
読んでみたくなりました。

・『廃用身
・『悪医
・『神の手 上』『神の手 下
・『虚栄

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| 科学・生活 | 06:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?

満足度★★★★
付箋数:27

私は、これまで人工知能に関する本を
少なくとも20冊以上は読んできました。

本書は、その中でもトップクラスで
面白い本です。

最先端の人工知能の仕組や将来性について、
わかりやすく解説されている本は他にも
ありましたが、ここまでのリアルなドラマが
語られている本はありませんでした。

本書の著者、山本一成さんは、プロ棋士に
初めて勝利した最強の将棋プログラム
「ポナンザ」の作者です。

本書は山本さんにとって初の著書です。

今から10年前、山本さんが東大の将棋部に
在籍しているときに、ポナンザのプログラム
を作り始めました。

一番最初のポナンザはとんでもなく弱い
将棋プログラムだったようです。

それは山本さんが八枚落ちでポナンザと
戦っても、勝ってしまうほどでした。

ちなみに、山本さんはアマチュア五段なので、
アマチュアの中ではかなり強い部類の
実力を持っています。

とは言え、八枚落ちとは「玉」以外は
「歩」と「金」しか駒がない状態です。

これだけのハンデでをポナンザが
もらっても勝てないほどだったので、
ずいぶん弱い将棋プログラムだった
ことになります。

それから、ポナンザは「機械学習」を
導入して、驚くほど強くなっていきます。

機械学習とは、最初からプログラムの中に
答えを用意しておくのではなく、
コンピュータ自身が学んでいく手法です。

最近よく耳にする、ディープラーニングも、
この機械学習の中の1つの手法です。

  「ポナンザを作り始めて2年ほど経った日
  でしょうか。とうとう私は負けてしまいました。
  前述のとおり、私の将棋の強さはアマチュア
  五段です。アマチュア最強レベルとかでは
  ありませんが、相当強いです。
  その私が負けました。
  これほどくやしさ、そしてそれをはるかに
  上回る喜びを私は味わったことはありません。
  普通、人間は自分が作ったものが、
  知的な意味で自分を上回る経験はできません。
  唯一の例外があるとしたら、それは子供を
  成長させることでしょうか。ポナンザは
  私の子供で、そして私を超えたのです。」

その後もポナンザは驚くべきスピードで
強くなっていきます。

そして迎えた2013年3月30日。

この日は、現役のプロ棋士がコンピュータに
敗れるという将棋の世界、そして日本の
コンピュータ科学にとって、重要な日に
なりました。

ポナンザが電脳戦で、佐藤慎一四段(当時)
に勝利したのです。

  「対局が終わり、そのあとすぐに記者会見が
  おこなわれました。記者会見のときの雰囲気
  は正直ゾッとするようなものでした。
  異様に沈んだ雰囲気。まさにお葬式と同じ
  空気でした。それも不思議ではなく、
  その日はプロ棋士の絶対神話が死んだ日
  だったのです。」

この時の様子も、ポナンザ作者の山本さん
だからこそできる描写です。

ポナンザはその後も強化学習を繰り返し、
単に強くなっただけでなく、人間同士では
ありえないとされてきた新戦法を編み出す
ようになりました。

それは「ポナンザ流」と呼ばれプロ棋士からも
認められる指し手となります。

そして、2017年4月1日には現役の名人、
佐藤天彦九段にもポナンザは勝利します。

こうしたドラマの部分は実は本書の中では
オマケに過ぎません。

本書では、ポナンザ、そしてアルファ碁を
題材に人工知能の仕組みを解説しながら、
知性とは何か、知能とはなにかについても
考察していきます。

本書は人工知能本の中では、読んで損のない、
オススメの一冊だと思います。

この本から何を活かすか?

知性と知能の違いについて、本書での定義は
次のようになります。

 知性=目的を設計できる能力
 知能=目的に向かう道を探す能力

  「今の人工知能は、 “知能” の枠内では
  人間を超えようとしていますし、一部の
  分野では完全に超えました。
  しかし、 “そもそも、何をすべきか?” 
  という目的を設計できる能力=知性は、
  まだ持ち合わせていません。
  そうした目的は、人間が設計しなければ
  ならないのです。」

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| IT・ネット | 06:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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コスパ飯

満足度★★★
付箋数:21

日本マイクロソフトの社長だった時代から、
国内はもちろん、世界中で「うまいもの」を
食べ尽くしてきた成毛眞さん。

どこで食べたものが、一番うまかったのか?

成毛さんの答えは、国内の名店でも、
美食の都と言われるサン・セバスチャンで
ミシュランの星を獲ったレストランでも
ありません。

成毛さんが、一番うまいと感じるのは「自宅」。

お金がある成毛さんだからと言って、
必ずしも自宅で高級食材を使っている
わけではありません。

また、奥さんが凄腕の家庭料理人でも
ありません。
(ただし、奥様はかなり料理の上手な
方のようです)

なぜ、成毛家の食事がうまいのかと言うと、
その理由は、外で食べてうまかったものを
家でバージョンアップして再現しているから。

ただし、使う食材や調味料はこだわるものの
一般に手に入るものを使って再現します。

しかも、コストパフォーマンスも追求して。

だから成毛さんが外食するのは、
家で真似して作る味を探すためなのです。

  「外食は、うまいものを堪能する機会でも
  あるが、家でつくるうまいもののヒントを
  得るチャンスでもある。むしろ新メニューを
  仕入れるため、積極的に外食をしている。
  写真を撮ることがあるのは、使っている
  素材をメモする手間を省くため、盛り付けの
  アイディアを盗むためなのだ。」

本書は、このように食に関して、ちょっと
変わったこだわりのある成毛眞のエッセイ本。

巻末には「食にまつわるガイドブック」
として、10冊の食に関する本が紹介されて
います。

ひょっとすると、このパート書くために、
まるまる一冊、食の本を書いたのではないか
とも疑って見てしまいました。

本編の話は、テーマに沿っているような
沿っていないような食の話しが続きます。

ただ、どんな話になろうとも、
成毛さん独自の視点で語っていますから、
読んでいて飽きることはありません。

さて、私が本書で真似してみたいと思った
「コスパ飯」は、「マルちゃん焼きそば」
で作る「カリカリ焼きそば」です。

スーパーでよく見かけるシンプルな袋に
3人前入りで売っているあの焼きそばです。

レシピは以下の通りです。

 1. 中華鍋を熱して米油を十分に入れる。

 2. 十分に熱したら、袋から出したままの
  形状で、麺を置いて焼く。

 3. 中火で根気よく、こんがり焦げ目が
  付くように焼く。

 4. 具材は豚の切り落としとキャベツで、
  別のフライパンで調理する。

 5. キャベツはおののくほど大量を使い、
  味付けは麺に付属する粉ソースの
  3分の2をこの具材の調理で使う。

 6. 具材の隠し味には、ベル食品の
  「ジンギスカンのたれ」をからめる。

 7. 麺は裏返して裏面もしっかり焼く。
  麺は決してほぐさず、水も加えない。

 8. 焦げ目がついたところ、茶色になった
  ところ、色がかわっていないところが
  ほどよく分布したら火を止める。

 9. 最後だけわずかにほぐし、残った
  粉ソースを麺にコーティングさせる
  ように全体に振りかける。

 10. 麺はシッカリとしたまま皿に盛り付け、
  その脇に炒めた具材を配置する。

このレシピのどの部分が外食からヒントを
得たのかわかりません。

しかし、調味料も食材も我が家にあるもの
なので、チャレンジしてみたいと思います。

この本から何を活かすか?

本書で紹介されている食に関する本で、
読んでみたいと思ったのが、檀一雄さんの
美味放浪記』です。

  「女優檀ふみの父親で作家の檀一雄が、
  食をテーマとして綴った放浪記である。
  彼は高級料理を好まず、旅先でも現地の
  人で賑わう食堂や居酒屋で食事をした。
  (中略)昭和40年代に国内から海外まで
  渡り歩き、地のものを食べ尽くしたのは
  彼くらいであろう。」

文壇屈指の料理人としても名高い檀さん
ならではの視点で綴られているようです。

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| 科学・生活 | 06:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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図解 見せれば即決! 資料作成術

満足度★★★
付箋数:20

人は無意識のうちに、見た目だけで、
「良い・悪い」「好き・嫌い」を判断します。

その判断までに必要な時間はわずか「3秒」。

特に悪い・嫌いな場合は、3秒もかけずに、
直感的にその印象を決めてしまいます。

ビジネスで使う資料も、同様に3秒で
その良し悪しが判断されてしまいます。

資料の最初のページの印象が悪ければ、
その先のページをめくってもらえません。

  「本書では最初の3秒で “いい” と思って
  もらえるよう、資料の外見、特に表紙で
  相手の心を動かす手法や、 “読む” のではなく
   “見て” 直感してもらうためのテクニックを
  中心に紹介していきます。」

著者は、プレゼン・コンシェルジュの
天野暢子さんです。

これまで広告代理店や新聞社、テレビ局など
マスコミ業界で30年以上、「伝える」仕事に
携わってきた方です。

本書のゴールは「話さなくても見て分かる」
資料をつくること。

この考えが本書にも適用されていて、
本書自体も、読まなくても見て分かるように
書かれています。

見開きで1つのテーマを扱い、左ページは解説、
右ページは資料のビフォー・アフターが
掲載されている構成です。

納得して使い方は左ページを読めばいいし、
すぐに使いたい方は右ページだけ見て、
使うことができます。

本書を見ると「簡単にマネできそう」と
思えるのが最大の特徴です。

あまり高度なテクニックは紹介せず、
あくまで基本的なテクニックを徹底して
集めている印象を受けます。

本書の3大ポイント以下の通りです。

 1. マネすれば使える
  全項目ビフォー・アフターの図解と
  ダウンロードして使える即戦力テンプレート
  で、初心者の方がマネするだけでも
  資料の「決定力」が高まります。

 2. 社内用にも使える
  社外向けのプレゼン資料や提案書に限らず、
  社内向けのプレゼン資料、会議資料、
  報告書などにも幅広く活用できる
  ノウハウを紹介しています。

 3. 何度でも使える
  資料作成の基本から文章作成、編集、
  レイアウト、ビジュアル、アフターフォロー
  までを網羅しているので、何度でも
  参照しながら活用できます。

ダウンロードできる即戦力テンプレートは
全部で20パターンあります。

社外向け提案書から、社内向け広告書、
グラフや図表を使った資料、集客チラシ、
プレスリリース、プロジェクト用資料など。

実は今回、天野さんは2008年に出した本、
『図解 話さずに決める!プレゼン』を
改訂して出版することを考えていました。

しかし、いざ書き始めてみると、
この10年で資料を取り巻く環境が大きく
変わっていて、以前の内容があまり使えない
ことに気づきました。

そこで本文も図解もまったく別の
新刊として本書を執筆しました。

一方で、10年前の本と変わらない部分も
あることに気づきました。

  「不変なものとは、相手のことを思う
  気くばりでしょう。相手が求めているのは
  どんな情報か、相手がうれしのはどんな
  資料か、相手に感謝されるのはどんな
  渡し方なのか。これを考えるだけで、
  あなたが作る資料は見違えるほど変わり、
  スピーディーに決定されていくはずです。」

この本から何を活かすか?

あなたは、文章に含まれる「漢字」の割合を
気にしていますか?

  「読みやすい紙面にするために、漢字の比率を
   “3割に抑える” という目安があります。」

では、どの部分の漢字をひらがなに変えれば
良いのでしょうか?

もちろん任意で適当な漢字をひらがなに
して良いわけではありません。

変えるのは、接続詞、助動詞、補助動詞など。

共同通信社刊の『記者ハンドブック』や
朝日新聞社刊の『朝日新聞の用語の手引き』に
詳しい漢字・ひらがな・カタカナの使い分けが
書かれているそうです。

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「損」を恐れるから失敗する

満足度★★
付箋数:14

あなたは、次のような場合、どうしますか?

 A あなたは、3000円の前売り券を買って、
  劇場に来ました。ところが、鞄の中を
  探しても前売り券が見つかりません。
  前売り券をなくしてしまったようです。
  あなたは、劇場のチケット売り場で
  3000円の当日券を買いますか?

 B あなたは、前売り券を買わずに劇場に
  来ました。劇場の前で、3000円を
  なくしてしまったことに気がつきました。
  あなたは、3000円の当日券を買いますか?

これは、行動経済学の「心の会計」という
概念を示すストーリーです。

行動経済学は、人間が必ずしも合理的には
行動しないことに着目した経済学と心理学の
両方の分野にまたがる学問です。

その中でも、「心の会計」は、実際の会計と
違って、非合理な会計がなされる場合が
多いことを示したもの。

合理的に考えれば、AのケースもBのケースも
3000円を失ったという点では同じですが、
心理的には少し違った印象を受けるものです。

Aのケースでは、当日券を買わずに家に帰る
と答える人が多いのに対し、Bのケースでは、
当日券を買うと答える人が多くなります。

チケットをなくしたAのケースでは、
2回同じチケットを買うことになるので、
チケット代に6000円も払ったと思えてきて、
ものすごく損をした気分になるからです。

こうした非合理な人の行動心理を研究して、
2002年にノーベル経済学賞を受賞したのが、
米国のダニエル・カーネマンさんです。

同僚のエイモス・トベルスキーさんと共に
プロスペクト理論を提唱し、行動経済学を
発展させました。

またヒューリスティックを使うことによって
生まれる「認知バイアス」があることなども
示しました。

人は「得をしたとき」よりも、
「損をしたとき」の方が心理的インパクトが
大きいので、損を恐れる傾向がある。

これを「損失回避の法則」と呼びます。

本書は、カーネマンさんの理論を中心に
人の損失回避行動を解説する本です。

著者は、執筆する本が多いことで知られる
心理学者の和田秀樹さん。

  「損失回避の法則を知っているかいないかで、
  ビジネスも、日常生活も、経済政策も、
  大きく変わってきます。
   “損に反応する” という人間の心理特性を
  知っていれば、それに気をつけて、
  不要な失敗を避けることもできます。
  人間の心理特性を理解していると、
  仕事でも生活でも、失敗をかなり減らす
  ことができるはずです。また、それを通じて
  新たなアイディアが生み出されるかも
  しれません。」

本書は、これまで行動経済学の本や、
カーネマンさんらの理論について、
どこかで聞いたり読んだりしたことがある
人にとっては、目新しさを感じない本だと
思います。

これまで全く行動経済学に触れたことがない
人にとっては、非常に平易に書かれているので、
入門書として良いかもしれません。

個人的には、少し物足りなさを感じる本でした。

 序章 「損」を恐れて失敗してしまう人たち
 第1章 「損をしたくない」心理は人間の行動原理
 第2章 あなたは、どちらを選びますか?
 第3章 日本人もアメリカ人も基本心理は同じ!?
 第4章 「損をしたくない」気持ちを
    ビジネスに利用する
 第5章 「損をしたくない」心理を消費に
    結びつける税制はこれだ!
 第6章 「損をしたくない」気持ちを
    日常生活に生かして「得」をとる
 第7章 「損をしたくない」 心理の判断エラー
    を防ぐ奥の手

この本から何を活かすか?

  「心理学の立場から言うと、 “競馬の
  最終レースは、本命に賭けるほうが得” 
  という法則のようなものがあります。」

なぜなら、最終レースは、その日負けている
人たちが、最後で取り返そうと大穴狙いを
してくるので、本命馬のオッズが上がるから。

ただし、そもそも本気で儲けようと思うなら、
テラ銭(運営側の取り分)が25%ある競馬は
継続的にやると、トータルで勝つのが難しい
ギャンプルと言えます。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 経済・行動経済学 | 06:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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友達以上、不倫未満

満足度★★★
付箋数:18
  「友達以上、不倫未満――。
  決して男女の関係は持たない。
  法でつながり戸籍で結びついた
  配偶者とは違い、つながるのは心、
  結びつけるのは魂だけ。
  だからこその関係は極めて不確実。
  そのため配偶者よりも深い絆が紡げるという。
  そんな精神的恋愛関係にある異性の存在を
  婚外に持つ既婚者同士男女(事実婚を含む)
  が、今、増えつつある。配偶者の “次” に
  位置するこの “セカンド・パートナー” 
  という存在は、プラトニックな関係を
  保つことで不倫とは一線を画す新たなる
  恋愛の形態だ。」

セカンド・パートナー、略して「セカパ」。

基本的に体の関係はなし。

しかし、配偶者以上に精神的に結びつく
既婚者同士の婚外関係が増えているそうです。

特に都市部で暮らすアラフォーやアラフィフ
世代のうち、「ホワイト層」の間で多く
見られるようです。

これだけ世間の目が、不倫に対して厳しく
なれば、さすがにこれはマズい思い留まる
人もいるでしょう。

その不倫の代わりに増えているのが、
セカパなのかもしれません。

法律上の不貞行為、いわゆる浮気や不倫は、
「配偶者のある者が配偶者以外の異性と
自由意志で肉体関係を持つこと」
とされています。

だから、セカパのカップは体の関係を
持たないことが、「免罪符」になっている。

本書は、実際にセカパのカップルに取材し、
その実態を伝える本です。

著者は、朝日新聞のニュースサイト「dot.」や
「週刊ダイヤモンド」「週刊SPA!」などに
寄稿するジャーナリストの秋山謙一郎さん。

  「背徳とピュア――その相反する両面が
  この関係では奇妙に併存している。
  プラトニックな関係を保ち、その関係で
  カネを介在させない。求めるものは、
  ひとえに、 “愛” だけだ。そして、この愛は、
   “セカパ” の相手のみならず、その配偶者や
  家族にまで及ぶ。」

セカパは不倫ではないので、その存在を
互いの配偶者が知っているケースが多い
ようです。

セカパがいるからこそ、夫婦関係も円満に
なってカップルも少なくない。

セカパを持つ人たちは、不倫に踏み込まない
表向きには非常に高いモラルを持っている。

だから互いの婚姻関係を崩さないよう、
パートナーの配偶者への配慮も大きようです。

セカパの相手のみならず、その配偶者を含めて
愛さなければ、その関係は続かないとか。

とは言っても、そんな絵に描いたような
関係ばかりではなく、セカパで失敗した
カップルも当然ながらあります。

秋山さんが取材した中には、セカパから
不倫へ発展して破綻したケースもありました。

本書では、良くも悪くもセカパの16ケースに
インタビューした生の声を紹介しています。

残念ながら、私の周りには実際にセカパを
持つ方はいませんので、本書でリポートされて
いるようなカップルが本当に存在するとは、
簡単に信じられない部分もありました。

しかし、私のようなアラフィフ世代になると、
良好な夫婦関係を維持している方が少数派。

本当は離婚したいけどそんなエネルギーは
使いたくない方や、不倫願望があるけれども
なんとか良識で踏みとどまっている方も
一定いると思います。

そんな方々にとって、セカパは憧れの
ファンタジーなのかもしれません。

この本から何を活かすか?

セカパを持つにも、当然コストはかかります。

本書の取材では、1回あたりのデート代は
0円から5万円程度だったようです。

1杯500円のコーヒーを喜んでくれる
セカパのパートナーもいるようです。

そうすると相対的に見て、水商売や風俗の
女性にハマるよりは安上がりです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 社会・国家・国際情勢 | 06:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

満足度★★★★
付箋数:24

  「あなたには、鳥類学者の友人はおられる
  だろうか。多くの方にとって、答えは
  否だろう。原因の半分は、鳥類学者が
  シャイで友達作りが下手だからだ。
  残り半分は、人数が少ないからである。
  日本鳥学会の会員数は約1200人。
  『日本タレント名鑑』に載っている
  タレントまたはモデルの数が1万1千人。
  学会員が全員鳥類学者だとしても、
  タレントより希少なのだ。日本の人口を
  1億2千万人とすると、10万人に1人。
  つまり、10万人の友達をつくらないと
  鳥類学者と仲良くなれないのである。」

本書で、鳥類学の魅力を語るのは、
国立研究開発法人森林総合研究所
主任研究員の語る川上和人さん。

小笠原諸島を主な調査フィールとする
シャイ(?)で希少な鳥類学者です。

そんな川上さんが、あなたの友人になって、
鳥類学者の知られざる日常と鳥の生態に
ついて語ります。

  「今日から私が貴公の友人だ。
  見知らぬ中年紳士の話を聞く義理はない
  だろうが、友人の言葉に耳を傾けるのは
  紳士淑女としての礼儀である。
  束の間のあいだ鳥の話におつきあい
  いただき、共に鳥類学の世界を楽しんで
  もらえると幸いである。」

いくら川上さんが、鳥類学の面白さを
語ってくれると言っても、そもそも鳥に
あまり興味はない。

強いて言えば、フライドチキンと焼き鳥が
好きなくらいか。

実際、そんな方も多いでしょう。

でも本書は、そんな美味しくなった鶏に
しか興味のない方でも十分に楽しめます。

なぜなら、川上さんの話は脱線しまくり、
およそ3分の1はユーモアで埋め尽くされて
いるからです。

本当の鳥好きの人からすると、
「もっと鳥のことを語ってくれ」と怒られる
くらいのレベルでだと思います。

それが本書の最大の魅力であり、
敷居が高かった鳥類学の世界を
もの凄く親しみやすものにしています。

そもそも、川上さん自身も子どもの頃から
鳥が好きだったわけではありません。

  「私は鳥とは無縁の子供時代を過ごした。
  公園のハトがドバトなのかキジバトなのかも
  知らなかったし、そもそもハトに種類が
  あることも知らなかった。
  そんな私も自堕落で日和見主義的な
  大学生になり、野生動物を探求するサークル
  に入会した。自然が大好きなどという
  軽薄な理由ではない。小学生時代に
   “風の谷のナウシカ” に感動し、
  ちょっとミーハーに憧れていたのだ。
  みんな口にはしないが、私の世代には
  そういう研究者は多いと思うぞ。」

そしてかなり受動的に、川上さんは鳥類学の
研究の世界に足を踏み入れていきます。

さすがにナウシカがきっかけだっただけに、
川上さんのアニメに対する造詣は深く、
文章の所々にその片鱗が表れています。

といかく笑える本が読みたいと思ったら、
本書を是非オススメしたいですね。

腹を抱えながら読み終わったら、
知らないうちに鳥についても興味が
持てるようになっているハズです。

それぐらいの気軽さで読んで欲しい本です。

 第1章 鳥類学者には、絶海の孤島がよく似合う
 第2章 鳥類学者、絶海の孤島で死にそうになる
 第3章 鳥類学者は、偏愛する
 第4章 鳥類学者、かく考えり
 第5章 鳥類学者、何をか恐れん
 第6章 鳥類学者にだって、語りたくない夜もある

この本から何を活かすか?

キョロちゃんはどこに生息しているのか?

ご存知、森永チョコボールのキャラクター
として親しまれるキョロちゃん。

川上さんは、そのキョロちゃんの外的な
特徴から生息地を予測します。

注目しているのは、つぶらな瞳が共に
正面を向いていることです。

これはキョロちゃんの捕食者がいない証拠。

  「きっとキョロちゃんは、捕食者がおらず
  警戒を必要としない地域で、樹上の果実を
  食べて暮らしているのだろう。
  そこは、肉食哺乳のいない孤島だ。」

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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| 科学・生活 | 06:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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