活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


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人質の経済学

満足度★★★★
付箋数:26

  「これは恐ろしい本です。
  かけがえのない生命を持った人間が、
  単なる商品として取引されている実態を
  克明に描いているからです。」

これは、本書の解説者、池上彰さんの言葉。

池上さんの推薦があったので、
本書を読んでみましたが、
そこには私たちが想像もしない
ものすごい現実が描かれていました。

本当に平和ボケした日本人には、
必読の書だと思います。

海外で日本人の誘拐事件が起きると、
日本での報道は、その命が救われるか
どうかの1点に集中します。

もちろん、人命を救うのは何より優先すべき
ことですから、違和感はありません。

しかし、誘拐する側にとっては、
「人質ビジネス」、「身代金ビジネス」
であることを忘れてはなりません。

人質を確実に助けたければ、すばやく交渉
することが最大のポイントです。

なぜなら、人質を拘束しておくことは、
誘拐組織にとってもコストがかかる
ことだからです。

誘拐犯にとって、人質は拉致した瞬間から、
毎日毎日コストのかかる投資対象なのです。

彼らが望むのは、長くても数週間で
ケリをつけ、カネを手にすること。

ですから、とにかく早く交渉して、
身代金を払うことを決断すれば、
数週間のうちは、人質は数千ドルで
解放されるのです。

しかし、相手のニーズを読み違えて、
交渉が長引いたり、反応が鈍かったりすると、
人質は売られたり、交換されたりします。

最終的には、人質を長期にわたって拘束できる
規模の大きな組織の手に落ちて、
要求される身代金が莫大になるのです。

  「9・11以来、誘拐の件数は飛躍的に増え、
  身代金の要求額もうなぎ上りになっている。
  2004年には、200万ドル払えばイラクで
  誘拐された欧米人を解放することができたが、
  今日では1000万ドル以上払わされることも
  ある。(中略)
  10年前には1日1000ドルが相場だったが、
  いまや3000ドルに跳ね上がっている。
   “人質の経済学” には、通常の経済学の
  法則が当てはまらないのだろうか。」

本書は、誘拐組織が行う「人質ビジネス」を
解き明かし、そこに働くインセンティブや
経済効果をつまびらかにする本です。

著者のロレッタ・ナポリオーニさんは、
マネーロンダリングとテロ組織の
資金調達に関する研究の第一人者です。

歴史上初めてテロリストが国家をつくる
ことに成功するかもしれないと、
イスラム国に早くから注目していた方です。

とにかく取材は入念で、女性でありながら
危険な組織について、よくここまで
調べ上げたなと感心するばかりです。

日本では、ほとんど報道されることのない、
誘拐組織やテロリスト組織の裏側と、
そのビジネスの仕組みを解き明かします。

本書は、私が今年読んだ本の中では、
最も衝撃的で、人に勧めたい一冊でした。

  序章 スウェーデンの偽イラク人
  第1章 すべての始まり9・11 愛国者法
  第2章 誘拐は金になる
  第3章 人間密輸へ
  第4章 海賊に投資する人々
  第5章 密入国斡旋へ
  第6章 反政府組織という幻想
  第7章 ある誘拐交渉人の独白
  第8章 身代金の決定メカニズム
  第9章 助けたければ早く交渉しろ
  第10章 イスラム国での危険な自分探し
  第11章 人質は本当にヒーローなのか?
  第12章 メディアを黙らせろ
  第13章 助かる人質、助からない人質
  第14章 あるシリア難民の告白
  第15章 難民というビジネスチャンス
  終章 欧州崩壊のパラドクス

この本から何を活かすか?

実は、好調だった誘拐ビジネスにも、
陰りが見えてきているようです。

そこでジハーディストが目をつけたのが、
移民や難民を扱う、人間密輸のビジネスです。

人間密輸は、外国人の誘拐以上に儲けが多く、
はるかに容易なビジネスとして注目されて
いるようです。

中東とアジアからヨーロッパへの移民を
扱うビジネスは、5億~10億ドルもの売上が
あると言います。

本書を読んでから、移民問題のニュースを
聞くと、今までとは違った新しい視点で、
問題点を考えられるようになると思います。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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