活かす読書

読んだ本を、どう活かすか? セミリタイヤしたikadokuが、週に5冊、ビジネス書・自己啓発本・投資本・ベストセラーなどの本を紹介します。


2015年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年02月

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作家の収支

満足度★★★★
付箋数:23

すべてがFになる』などで知られる森博嗣さんが、
作家としての収入を公開した本。

実際、人がいくら稼いでいるのかは、
多かれ少なかれ、誰もが興味のあるところです。

公開すること自体、それほど難しいことでは
ありませんが、怖いのは人の「妬み」。

普通は、収入などについては、語らない方が、
不要な誤解を招かないので、賢いのかもしれません。

では、なぜ、森さんは作家の収入について語るのか?

  「僕自身は、金のことを書くのは恥ずかしいこと
  でも汚いことでもない、と考えている。
  しかし、どちらかといえば、格好の良いことでは
  ない。黙っている方が文化的にも美しいだろう、
  と理解している。ただ、誰も書かないのならば、
  知りたい人のために語るのは、職業作家としての
  “仕事” だと思った。 “使命” と書かないのは、
  正直だからである。」

もちろん、森さんぐらいの人気作家になれば、
一般的なサラリーマンに比べると大きな収入を
得ていますから、それを自慢と取る人も
いることでしょう。

事実、森さんは作家になって、国立大学工学部の
助教授として得ていた収入をすぐに超えています。

だから、本書に書くことは自慢ではなく、
客観的事実である点が強調されています。

  「この本に、これから客観的事実を書く。それらを
  僕自身がどう評価しているかは、なるべく書かない
  つもりだが、トータルとして、特に、それで満足
  しているわけでもなく、また不満を持っている
  のでもない。仕事として、その報酬を得たという
  だけのことである。」

本書には、森さんの作品について発行部数と、
それによって得られた収入が詳細に書かれて
いますから、作家志望の人の参考になるのは勿論、
世間一般の、「人の収入を知りたい」という好奇心を
十分に満たしてくれます。

本書によると、森さんのデビュー作である
すべてがFになる』は累計78万部で、
印税だけの収入は、6000万円以上になるそうです。

ゲラ校正を含めた執筆には60時間かかっているので、
換算すると時給100万円。

これとは別に、原稿料としては時給10万円。

ただし、印税については20年の歳月をかけて、
この域まで達したのであり、最初から時給100万円
だった訳ではありません。

また、原稿料についても、森さんは相当な速筆で、
1時間に6000文字、原稿用紙にして20枚を
書き上げるので、あくまでそれをベースにした
時給になっています。

ちなみに、小説などの印税は、1冊も売れなくても
もらえるそうです。

それは印税が発生するのが、売れた時点ではなく、
印刷した時点だからです。

もちろん、出版社は予測を立てて印刷しますし、
売れ残らないように売れてから増刷しますから、
売れた部数と印税収入は、ほぼ比例することに
なります。

印税率は、紙の本で8~14%、電子書籍は
15~30%のようです。

ただし、電子書籍は在庫を持ちませんから、
印刷ベースではなく、売れた部数ベースで印税が
支払われます。

本書は、客観的事実を知らせることを目的と
しているので、支払われる原稿料や印税について、
それが高いか低いかなどの森さんの意見は、
ほとんど述べられていません。

しかし、この電子書籍については、思い入れが
あるようで、珍しく、感想が述べられていました。

  「電子書籍の印税が15%~30%というのは、
  僕は低いと感じている。たとえば、出版社などを
  通さず、自分で直接配信すれば印税は100%だ。」

本書で公開されるのは、原稿料と印税意外にも、
ブログ収入、映像化された場合、講演会、サイン会、
取材を受けた場合から推薦文を書いた場合まで、
かなり細かな具体的な収入額が明かされています。

個人的には、本書は総発行部数1400万部で、
総収入15億円を得たという事実よりも、
どのようにして売れて、どのように収入が
増えたのか、そのドキュメンタリーとしての部分が、
非常に興味深い本でした。

本書は、2010年に刊行された『小説家という職業
の続編的な位置づけなので、併せて読むと、
よりリアルに小説家の実態について知ることが
できます。

この本から何を活かすか?

  「サイン会は、出版社の広報部(営業)と書店が
  企画するものだが、いったい誰が得をするのか
  よくわからないイベントである。
  もちろん、そこにたまたま来ることができた読者は
  得をするが、せいぜい100人だから、もし1万部
  売れる本であれば、僅か1%の客にサービスした
  ことになる。」

実に森さんらしい、非常に理系的な考えですね。

森さんは、サイン会の代わりにファンサービスと
しては、もう少し効率の良い「名刺交換会」を
行っているそうです。

Miss a meal if you have to, but don't miss a book.

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